消費税


2020/8/18

消費税の概略

会社は消費税を納めなければなりません。会社は販売の際に消費税を受け取り、仕入や諸経費を支払う際に消費税を支払います。会社が税務署に納める消費税は、受け取った消費税から支払った消費税を差し引いた額です。なお、消費税も法人税と同様、原則として事業年度ごとに自ら計算して申告と納税を行います(事業年度の途中での申告が必要な場合もあります)。

消費税は、広く公平に一般の消費を対象に課税する「間接税」であるといわれています。間接税とは税の負担者と納税義務者が異なる税をいいます。販売する事業者は本体価格(消費税を上乗せする前の価格)と消費税を区分して代金を受け取り、消費税は客(個人あるいは事業者)の負担となっています。しかし、これは、あくまでも理論上において客への負担(転嫁)が「予定」されているにすぎず、形式上は客への負担がなされているようでも、実際は販売する事業者の負担となっていることもあります。「消費税を取るならもう少し安くしてくれ」などの会話は、このことを物語っています。これが、消費税の「納税」に苦労する会社が出る理由なのです。

消費税は税務署(国税に関する役所)で申告納税する

消費税の申告書は税務署に提出します。消費税は「課税期間」が終了した翌日から2か月以内に申告書を提出すると共に納付をしなければなりません。課税期間とは基本的には事業年度(1年間)のことですが、会社の選択によりこれを1か月単位あるいは3か月単位に短縮することができます。

消費税及び地方消費税

消費税率10%の内7.8%は国税としての「消費税」、2.2%は地方税としての「地方消費税」です。この地方消費税部分も税務署で申告納税をしますが、申告書用紙と納付書は7.8%部分と同一です。ただし、税額の計算は先に7.8%部分を計算して、2.2%部分はその計算結果を受けて計算するという様式になっています。

中間申告(不要な場合もある)

消費税も法人税と同じように中間申告をしなければならない場合があります。中間申告をする回数は、前課税期間(事業年度)の税額によって、課税期間が6か月を経過した期間の年1回、3か月経過した期間ごとの年3回、1か月ごとの年11回と、前課税期間(事業年度)の税額が多くなるに従って回数が増えます。

納付する税額は前課税期間の税額を基準に、中間申告が1回の場合は1/2、3回の場合は1/4、11回の場合は1/12です。この方法に代えて、中間申告をする期間ごとの実際の計算数値で申告することもできます。

中間申告で納付した税額は課税期間の最終の申告である確定申告における税額(年間の税額)から差し引くことができます。

消費税を納税しなくてもよい会社もある

消費税はすべての会社に納税義務があるわけではありません。基準期間といって2事業年度前の「課税売上高」というものが1000万円を超えている場合に納税義務が生じます。「2事業年度前」とありますので、設立から2事業年度は課税されないように思いますが、資本金が1000万円以上の会社、「特定期間」というものの課税売上高が1000万円を超える会社は2事業年度の経過を待たずして課税されることがあります。

「売上」が1000万円を超えているのに(超えていないのに)

消費税は基準期間(2事業年度前)の「課税売上高」が1000万円を超えれば課税事業者となり税務署に消費税を納めなければなりません。課税売上高は「勘定科目の売上」とは異なります。課税売上高とは消費税の課税対象となる売上のことです。社会保険医療や住宅賃貸は消費税が非課税ですので、それを含めた売上が1000万円を超えても課税事業者とはなりません。

「勘定科目の売上」が1000万円を超えていないのに、消費税の課税事業者となる場合があります。売上以外の勘定科目が消費税の対象になっている場合です。売上は収益ですが、収益はこれ以外にもあります。営業外収益や特別利益です。勘定科目には表れない消費税の課税対象もあります。損益計算書で収益と費用を差し引きで表示している場合です。その典型は、営業用車両の売却です。損益計算書には「売却収入」と「車両の簿価」の差額しか表示されませんが、消費税の対象は売却収入です。

消費税が還付される場合もある

会社が税務署に納める消費税は、受け取った消費税から支払った消費税を差し引いた額です。前者よりも後者が多ければ還付されます。例えば、多額の設備投資をした場合です。建物、機械、備品には消費税が課税されますが、この消費税が多額であれば還付されることもあるのです。

次に輸出をしている場合です。消費税は国内の消費に対して課税されますが、輸出した商品は国外で消費されるので消費税は課税されません(免除されます)。一方、その商品を国内で仕入れる際には消費税を支払っているのでそれが還付されるのです。

赤字でも消費税を納税しなければならないことがある

赤字、つまり決算書の利益がマイナスでも消費税を納めなければならないことがあります。利益は「収益−費用」として計算しますが、収益と消費税の受取り、費用と消費税の支払いは一致しないからです。

特に、これがよくあるのが費用についてです。人件費(給料、賞与、社会保険料)、減価償却費は消費税の支払いがない費用の典型です。これらが多額で赤字となるような場合には、赤字でも消費税を納税しなければならないことがあります。

上記のような現象は頻繁に起こります。実際、赤字でありながら消費税を納税している会社は相当あります。

消費税の集計(会計ソフトの機能)

消費税の計算は法人税のように決算書とは直結していません。しかし、消費税の計算は決算書作成と同じく日々の入出金などが根拠で、ここから消費税の受取りと支払いを抽出して行います。ですから、決算書作成の基となる仕訳の時点で消費税についての判別作業(消費税が課税されるかされないか)を行い集計すればよいことになります。

市販の会計ソフトには、消費税の計算機能が組み込まれています。取引を入力する時点で消費税についての判別をして、最終的に税務署に申告し納付する消費税の計算と申告書作成までができるようになっています。会計ソフトでは、勘定科目ごとに消費税が「課税か」「非課税か」の設定がされていますが、同一の勘定科目でも課税と非課税に分かれることから手動での設定もできるようになっています。

簡易課税(みなし計算)

会社が税務署に納める消費税は、受け取った消費税から支払った消費税を差し引いた額ですが、受け取った消費税のみを実額で計算し、支払った消費税については受け取った消費税の一定率であるとみなして計算する方法が認められています。これを簡易課税といいます。

簡易課税は事務能力の低い小規模事業者に考慮しての税額計算ですので、基準期間における課税売上高が5000万円以下でなければ認められません。また、簡易課税を適用するには、適用しようとする課税期間の前日までに税務署に届けなければなりません。

消費税の申告書(会計ソフトで作成したものをそのまま提出できる)

法人税の申告書は枚数が多く仕組みも複雑で、さらに添付書類もたくさんあります。しかし、消費税の申告書はわずか数枚で、添付書類も原則として不要です。また、会計ソフトで作成した申告書をそのまま提出することができます。