法人税


2020/8/18

会社が儲かれば、法人税(国税)、事業税(都道府県税)、都道府県民税、市町村民税が課税されます。ここでの「儲け」とは「利益」のことです。利益は「収益−費用」として計算されます。利益が多い会社のことを儲かっている会社といいます。要するに、儲かっている会社は法人税などの利益に課税される税金をたくさん納めなければならないのです。

会社は自ら利益を計算しなければなりません。この計算作業は決算と呼ばれ、事業年度という1年ごとの単位で行います。結果として法人税などを申告して納めるのも1年ごとになります(事業年度の中間で暫定的な申告納税が必要な場合もあります)。

★損益計算書における利益と法人税などの関係

損益計算書の末尾は次のように表示されます。

〇税引前利益・・・これに法人税などが課税される
〇法人税、住民税及び事業税・・・上記の税引前利益に基づいて計算した税額を計上する
〇当期純利益・・・税引前利益から上記の法人税などを差し引く

法人税などは税引前利益に応じて課税されます。「法人税、住民税及び事業税」という勘定科目に含まれるのは、その事業年度の法人税(国税)、事業税(都道府県税)、都道府県民税、市町村民税です。その事業年度の分ですので、事業年度末では納付されていないことから、貸借対照表の負債に「未払法人税等」という勘定科目が計上されます(中間申告で納付した分を除く)。

≪法人税(国税)について≫

税務署(国税)


国税である法人税の申告手続は、会社の「登記上の本店」が所在する地域を管轄する税務署で行います。登記上の本店が名目で、実際の活動拠点が別の場所であっても、あくまでも「登記上の本店」が所在する地域を管轄する税務署となります。この点に注意が必要です。

利益と所得の違い(利益×税率=税額とはならない)

「利益」とは決算書で「収益−費用」として計算される会社の経営成績です。業績とか、収益力とかはこの利益のことです。会社は事業年度ごと(通常は1年ごと)に決算をして利益を算出しなければなりません。これは法人税などを計算するためではなく、会社法という法律の定めにより株主や債権者のためにします。

法人税の課税対象は利益を基に計算される「所得」です。所得は利益に応じて決まりますが、利益の計算における収益や費用の一部は除外される場合があります。例えば、納税した法人税は、利益の計算においては「法人税、住民税及び事業税」という費用としてこれを利益から差し引きますが、所得の計算においてはこれを差し引くことができません。また、役員賞与は利益の分配であることから所得の計算においては差し引くことができません。

このように法人税の計算には利益を所得に修正するための様々なルールが存在することから、利益の計算(決算)ができたからといって直ちに法人税の計算ができるというわけではありません。なお、財務会計ソフトは利益の計算(決算)を目的としたソフトであることから、法人税の計算はすることはできません。税額計算と申告書作成を行うには、そのためのソフトを別途購入しなければなりません。

過去の赤字

法人税は事業年度の利益を基に計算した所得に課税されますが、過去に赤字(マイナスの所得)がある場合にはその赤字を所得から差し引くことができます。例えば、第1期の所得が−50、第2期の所得が90であったとしても、第2期の所得は90−50=40として計算します。このようにして過去の赤字を所得から差し引くには、過去の申告を青色申告で行っておく必要があります。なお、青色申告をするには事前の届けが必要です。

別表4(申告調整)

決算書の利益から法人税が課税される所得を計算するプロセスを記載するのが、法人税申告書の別表4です。この別表4で、利益に一定の調整をして(加算と減算をして)所得を導きます。

法人税の各申告書(別表)は相互に関連しています。別表4の最下部の「所得金額又は欠損金額」は税額を計算する別表1(1)とつながっています。さらに別表4は、利益積立金と資本金を計算する別表5(1)、租税公課の納付状況を計算する別表5(2)など多数の別表ともつながっています。

法人税の申告に必要な各申告書(別表)は一律ではありません。自社の必要に応じたものを漏れなく作成して提出しなければならないのです。

法人税率(中小会社は税率が低い)

法人税率は下記のとおり中小会社(資本金1億円以下の会社)は低くなっています(平成31年4月1日以降開始する事業年度)。

○資本金1億円超の会社・・・所得の23.2%
○資本金1億円以下の会社・・・所得800万円以下は15%、800万円超は23.2%

今から30年ほど前は上記の23.2%が42%もありました(15%部分も今とは違いました)。ここまで引き下げられた理由は、消費税の導入(直間比率の見直し)や法人税率を国際的な水準に近づける(企業の国際競争力の強化)という政策が背後にあります。今後も消費税率は上がり、法人税率は下がるということが予想されます。

法人税のほか、上記で計算した法人税額に対して10.3%(令和元年10月1日以降開始する事業年度)の「地方法人税(国税)」も課税されます(法人税と同一の申告書用紙で計算し、税務署に申告します)。

確定申告(必ずしなければならない)

すべての会社は、事業年度終了の翌日から2か月以内に法人税の確定申告書を税務署に提出する必要があります(条件を満たせば1か月延長できますが、この場合も納税は2か月以内にしなければなりません)。これは毎事業年度必ず提出しなければなりません。法人税は事業年度の利益に課税されますので、赤字の場合は法人税が課税されませんが、それでも法人税の確定申告書を提出しなければなりません(赤字でも課税される場合もあります)。

「確定申告」といえば個人の所得税の確定申告のイメージが強いかもしれませんが、会社の法人税においても、事業年度が終了してからする申告のことを確定申告、その申告書を確定申告書といいます。

中間申告(不要な場合もある)

中間申告が必要となるのは、前事業年度の法人税額の2分の1が10万円を超える場合です(前事業年度がない初年度は不要)。中間申告は事業年度開始から6か月が経過してから2か月以内に申告と納付をしなければなりません。中間申告で納付した税額は最終の申告である確定申告における税額(年間の税額)から差し引くことができます。

中間申告は、前事業年度の法人税額の2分の1を納付するという方法ですので、申告書の様式もシンプルで、確定申告のように決算書の添付も不要です。ただし、確定申告と同じように、決算書を作成してその利益に基づいて申告することも選択できます。

申告書と添付書類の記載事項(こんなことも税務署に知らせます)

経営者が申告書の作成や提出を経理担当者や会計事務所(税理士)に任せている場合、経営者は申告書に記載する内容をあまり知らないと思います。しかし、申告書には会社経営に関する機密事項や代表者のプライバシーに関することも記載されています。専門的な部分は経理担当者や会計事務所(税理士)に任せるとしても、専門知識が不要な部分は一通り目を通してから申告書を提出するようにしてください。

◆納税地、法人名(社名)、代表者住所、事業種目
代表者の住所変更が経理担当者や会計事務所(税理士)に伝わっていないことがあります。事業種目が実態とかけ離れている場合があります。まったく的外れの事業、すでに非主流となった事業を記載していることがあります。

◆株主の一覧
これが間違っていることが非常に多いです。死亡した人や喧嘩別れした人が記載されていることがあります。また、株数が登記されている「発行済株式の総数」と一致していないことがあります。

◆税金の納付状況
納めたつもりが、実は納めていなかったということもあります。

◆回収できなかった売上代金
気分の悪いことでしょうが・・・

◆従業員数
これも不正確なことが多いです。事業所別、月別に把握しておかなければなりません。

◆取引銀行
取引支店名、預金口座番号が間違っていることが多いです。銀行名と支店名が「旧名称」のままのことが非常に多いです。全く動きのない口座は、申告を機に解約してください。

◆得意先
名称と所在地が間違っていることが多いです。社名変更や移転を反映していないこともあります。面倒でも直近のデータと照合してください。

◆仕入先
名称と所在地が間違っていることが多いです。社名変更や移転を反映していないこともあります。面倒でも、直近の請求書や領収書と照合してください。

◆家族役員への給与の支給
これも知らせなければなりません。各家族役員の氏名と役職、事業年度における支給合計額を記載しなければなりません。

◆地代家賃
物件の所在地、貸主の氏名(名称)と住所が間違っていることが多いです。

◆固定資産(車両、備品)
すでに売却や除却したものが記載されていることがあります。

◆使用しているソフトウェア、現金管理者、締日と支払日、帳簿の種類など・・・
まあまだあります。記載しなければならないことが・・・

≪事業税(都道府県税)・都道府県民税・市町村民税(地方税)について≫

都道府県税事務所と市役所・町村役場


事業税(都道府県税)・都道府県民税は「事業所(登記の有無は問わない)」の所在地を管轄する都道府県税事務所で申告手続をします。

市町村民税は「事業所(登記の有無は問わない)」の所在地の市役所・町村役場で申告手続をします。

登記上の本店が名目で、そこには活動拠点が存在しない場合には、登記上の本店の所在地を管轄する都道府県税事務所や市役所・町村役場には申告手続をしなくてよいということです。

複数の事業所がある場合

法人税は登記上の本店所在地を管轄する税務署(1か所)で申告手続をするのに対して、地方税は「事業所の所在地」を管轄する都道府県税事務所と市役所・町村役場で申告手続をしなければなりません。ですから、本店と支店・営業所など、複数の事業所がある場合には、各事業所を管轄する都道府県税事務所と市役所・町村役場で申告手続をしなければなりません。ただし、が同一の都道府県あるいは市町村に複数の事業所がある場合には、その事業所を一括して申告手続すれば済みます。

複数の事業所が異なる都道府県や市区町村にある場合の税額は、全社合計の所得額を各事業所所在地の都道府県や市区町村の人数比で配分しそれに税率を乗じて計算します。

地方税は法人税(国税)の計算結果を受けて計算される

地方税である事業税(都道府県税)、都道府県民税、市町村民税は、法人税(国税)の計算結果を受け計算されるという仕組みになっています。地方税は法人税(国税)の額に比例するのです。地方税の申告期限は法人税と同じ事業年度終了の翌日から2か月以内です。

地方税の税率(令和元年10月1日以降開始する事業年度)

◆事業税→法人税の所得に課税される

事業税は、「付加価値割」「資本割」「所得割」に分かれていますが、資本金が1億円以下の会社は所得割のみを納税します。

資本金が1億円以下の会社の「所得割」の税率は次のとおりです。

法人税の計算における所得に対して、400万円以下の部分は3.5%、400万円超800万円以下の部分は5.3%、800万円超の部分は7.0%を乗じて計算した合計です。これは標準税率ですので、この1.2倍の範囲内で各都道府県は超過税率を採用することができます。

事業税のほか、事業税額に対して37%を乗じた「特別法人事業税」も課税されます。

◆都道府県民税→法人税額に税率を乗じる

法人税額に1.0%から2.0%を乗じた額です(税率は都道府県により異なる)。このほか利益の有無や金額にかかわらず均等割が課税されます。その額は、資本金1千万円以下の会社であれば2万円です。

◆市町村民税→法人税額に税率を乗じる

法人税額に6.0%から8.4%を乗じた額です(税率は市町村により異なる)。このほか利益の有無や金額にかかわらず均等割が課税されます。その額は、資本金1千万円以下の会社であれば5万円から6万円です。

地方税の申告書は枚数が少なく添付書類も基本的にはない

地方税は法人税の計算結果を受け計算されるという仕組みであることから、法人税と比較して申告書の枚数も少なく、法人税の申告書のように決算書などの添付書類も基本的には不要です。

中間申告

法人税で中間申告が必要な場合は地方税の中間申告も必要です。