築山公認会計士事務所(大阪市北区与力町1−5与力町パークビル7F)
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不良債権処理完了の果てにあるもの
不良債権とは、貸し手にとっては回収できない貸付金、借り手にとっては返済できない借入金です。本来、不良債権問題は貸し手と借り手という当事者間の問題に過ぎません。借り手は何年かかっても返済しなけ
ればなりませんし、貸し手はありとあらゆる手段で回収しなければならないのは当然です。
今では、不良債権処理が最も重要な経済政策の課題となっています。国家を資本主義社会における「一企業」と捉えるならば、経済政策は国家としての経営戦略や経営計画と考えることができます。しかし、経営
戦略も経営計画も成功の保障など一切なく、成功するまでは「絵に描いた餅」に過ぎません。残念ながら、経済政策には国民の意思や行動までを操る力はありません。
「不良債権処理(金融機関の帳簿から不良債権が消える)」が完了したならば、「これで助かった」の一言が、貸し手と借り手の双方から聞こえてくるでしょう。しかし、それが景気回復につながるかはまったく未知数
です。景気回復には、金融機関の新規貸し出し、民間投資の双方が活発化しなければなりませんが、それらは、「それぞれの自由な意思」の結果として行われるにすぎません。
不良債権が金融機関の帳簿に残ろうが消えようが、大破した信用経済復旧の道のりはまだまだ遠いでしょう。
来年も、厳しい状況が続くと考えなければなりません・・・・・。
2002年12月3日
公認会計士 築山 哲
公認会計士制度改革
近い将来、公認会計士制度が改革される見通しです。「企業会計の監査を担う者の前提要件として、公認会計士(監査法人)の独立性強化」、「監査の社会的ニーズ拡大に応じた公認会計士数増員」の二点が制
度改革の中心となることでしょう。
現状、公認会計士の業務は次の通りです。
(1)財務書類の監査証明
企業形態、業種、規模を問わず、財務書類(決算書とその作成プロセス)の「監査」と「証明」(財務書類が適正に作成されていることの検討と結果の報告)を行います。この財務書類の監査証明業務は公認会計士
でないと行うことはできません(公認会計士の独占業務)。
(2)会計業務
財務書類の監査証明を行うことの前提として、公認会計士は会計についての高度な専門的能力を有していなければなりません。公認会計士は企業の監査証明の要否に関わらず会計業務を行えます。
(3)税務
税務申告は、上記(1)(2)の結果に基づき行わなければなりません。税務が、公認会計士業務に含まれることは当然です。(わが国には税務に限定してのみ「税理士制度」が存在しますが、公認会計士は税理士
となる資格を有します。)
(4)経営コンサルティング
公認会計士は、(1)から(3)の過程で蓄積した、会計を中心とした、あるいは会計から派生する経営ノウハウを提供します。
公認会計士の主力業務は(1)の財務書類の監査証明です。とりわけ、証券取引法監査(株式公開企業)と商法監査(一定規模以上の株式会社)は監査証明業務の多くを占めています。ここ数年の会計制度改革
は、両監査制度および公認会計士の監査証明業務を質量ともに向上させてきました。また、公認会計士が重大な責任と使命を背負う監査証明業務を行える唯一の国家資格保有者である以上、公認会計士が行う
(2)から(4)の業務は特別な意味を持たなければなりません。
現在までの公認会計士・監査制度発展の背後には、所轄官庁(主に金融庁)の絶大な影響力があったことを否定できず、公認会計士は労せずして職域の拡大や地位の向上を成し遂げることができた側面があり
ます。公認会計士は所轄官庁の「操り人形」に甘んじてはなりません。「公認」とは、「国」のみならず「広く一般から」も認められるという意味であるはずです。
2002年10月29日
公認会計士 築山 哲
公認会計士試験
本日、公認会計士第2次試験の合格発表が行われました。見事合格された方は本当におめでとうございます。また、惜しくも不合格となった方は公認会計士および会計が無限の可能性を秘めていること、経済社
会発展に必要不可欠であることを信じて、再度チャレンジしてください。
公認会計士試験は数ある国家試験の中でも難関とされております。試験は第1次から第3次まで行われますが、一般に公認会計士試験といえば合計7科目を一括合格しなければならない第2次試験を意味し、事
実上これが公認会計士となるための登竜門です。第2次試験合格後は、「会計士補」として3年間の実務経験を経て第3次試験に合格したならば、晴れて公認会計士となることができます。
わが国には、公認会計士と税理士という二つの「職業会計人」が存在します。一般になじみのあるのは後者の税理士でしょう。それは、税理士資格取得方法が多様ある意味で容易であるため税理士が多数存在す
ることによります(税務署OBへの資格付与、試験が科目別合制を採用しており受験・合格しやすい、大学院修了者への試験免除)。なお、公認会計士試験については、ごく一部の極めて高度な学識経験者や資格
保有者に限定して一部科目免除があるのみです。
わが国には、「税理士は税金を安くしてくれる人」、「決算書は税務署のために作る」との考え(偏見)が根強く存在します。
諸外国には税理士制度は存在せず、職業会計人は公認会計士のみです。昨今、公認会計士試験受験者が激増しております。今後もこの傾向により一層の拍車がかかることを切望しております。
公認会計士の「はしくれ」として。
2002年10月7日
公認会計士 築山 哲
中小企業会計基準
最近、中小企業会計基準の必要性が叫ばれています。現行の会計基準で定められている会計処理方法の多くは大企業を前提に設定されており、中小零細企業独自の事象あるいは中小零細企業の事務能力に
沿った会計処理方法の指針が存在しないのが実情です。
「決算書は税務署のために作成する」と、多くの中小零細企業は考えています。まずは、この考えを改めなければなりません。確かに、全ての中小零細企業(法人)に課税される法人税は、決算書の当期利益から
一定の調整の後に算出されます。
しかし、会計の目的は「経営者の報告責任の達成」、「企業の情報開示」、「企業に関わる者の利害調整」です。そして、これらを定めている法律は、商法(全ての企業)、証券取引法(株式公開企業)です。税法は
課税所得算出の便宜上、決算書を利用しているにすぎません。
「この世から税金がなくなっても、企業が存続する以上は決算書を作成しなければならない」と、考えなければなりません。
金融機関の融資審査、取引先への業務内容説明など、会計の重要性が中小零細企業でもすでに高まってきているのは周知の通りです。厳しい不況が続いています。新たな活路を切り開くには、まずは外部者へ
の明確な説明が必要ではないでしょうか。
2002年9月18日
決算書の外(そと)にあるもの
昨今の会計不信は周知の通りです。そこで、最近よくいわれるのは「決算書の外」にあるものということです。
ある意味で決算書は一定のルールに従って作成された無味乾燥な数値の羅列にしか過ぎません。そしてなによりも、決算書は過去の数値であり瞬時に変化する諸要因によって決まる企業の将来を予測すること
はできません。やはり、決算書では判明しない「企業理念」、「組織風土」、「知的財産」などが企業の将来を左右することになるのでしょう。
ごく一部の例外を除き、大手企業は正確な決算書を作成しています。これは、企業の経理部門や担当監査法人(公認会計士)のみならず全社一丸となって築き上げた統制ある組織とたゆまぬ研鑽の結晶でありま
す(これは決して昨今の企業不祥事に対しての皮肉ではありません)。大手企業の従業員は入社以来退職するまでの長期にわたり、組織と社会一般のルールについての教育を受け続けます(縛られます)。これ
は、決算書作成の基本でもあります。
決算書の外にあるものが素晴らしい会社は、ほぼ例外なく「決算書の中(なか)」も素晴らしいです。なぜならば、このような会社は「粉飾決算」や「脱税」などの姑息な手段によらなくとも存続発展が可能であり、極め
て正確な決算書が作成されるとともに業績や財務内容も良好となるからです。しかし、決算書の中が素晴らしくても外はどうにもならないこともありえます。偶然に、あるいは違法な経営などで好業績を維持している
企業もあるからです。
ともあれ、中と外の区別さえない会社が論外であることはいうまでもありません。
次は、中小零細企業が会計をレベルアップしなければなりません。
2002年8月26日
株安
日米ともに株価が下落傾向にあります。
株安が株式を保有する金融機関の自己資本比率を低下させ、結果として企業への貸し渋りが発生し、貸し渋りが企業の投資を抑制し、企業の投資抑制が家計を圧迫する悪循環はいまさらいうまでもありません。
ところで、株式市場とは何なのでしょうか。
資本主義社会においては資金提供者の存在なくして企業は成り立ちません。より多くの資金提供者を募るために株式市場の存在は必要不可欠です。しかし、資金そのものが資金を生むことはありません。資金は
実物経済に投下されて初めて増殖するのです。
これをプロ野球にたとえれば、どんなに資金力のあるオーナーが存在しても、監督や選手そしてファンをないがしろにしては、オーナーの投下資金は有意義に機能しないということになります。
かつて、「ベンチがアホやから・・・・・」(監督やコーチだけでなく野球を知らないオーナーがチームを翻弄するので)と、有名な捨てぜりふを残して引退したプロ野球選手がいました(阪神タイガース投手で引退後は野
球評論家・タレント・国会議員として活躍中)。
昨今の株式市場が実物経済に及ぼしている影響についても、同様のことがいえるのではないでしょうか。
2002年8月1日
会計不信
会計先進国の米国で、エンロン、ワールドコムと相次いで巨額粉飾決算が発覚しています。
事件を引き起こすにいたった原因は様々でしょうが、次の二点が大きな原因であることは間違いありません。
@監査制度上の不備(公認会計士の独立性)
公認会計士(監査法人)の独立性を損なう原因として、被監査企業に対する公認会計士のコンサルティング業務が指摘されています。独立性ある第三者としての会計監査と、依頼者の利得を最優先するコンサル
ティング業務を同一人が行えば弊害を生むのは当然です。
A会計の悪用
株式本位制といわれる米国では、高株価は資金調達のみならずM&A、ストックオプションなどの「錬金術」において威力を発揮します。高株価の条件は好業績であり、会計は好業績を演出するための錬金術の一
手段と化しています。
「粉飾決算は瀬戸際に追い詰められた企業が苦し紛れに行う」との考えが、世間一般の常識です。粉飾決算は形式に過ぎず多くの人は真実を知っています。その意味で、粉飾決算は「嘲笑」の対象にしか過ぎま
せん。
しかし、Aは粉飾決算の常識を覆すものです。
最近はわが国においても会計が一般化し、書店には所狭しと会計に関する書物が並んでいます。また、「間接金融から直接金融への移行」、「機動性ある株式制度と資本市場」、「会計と監査制度は資本市場のイ
ンフラ」と叫ばれています。
しかし、そろそろこの風潮に疑念を抱くことも必要かもしれません。
声高に叫んでいる人たちのすべてを、本当に信用してよいのでしょうか・・・・・。
2002年7月6日
会計事務所の存在意義
業界内の話題で申し訳ありません。
一言に会計事務所(会計専門家)といっても、次の通りに分類されるのではないでしょうか。
@監査法人(公認会計士事務所)
上場企業や一定規模以上の監査を行います。会計制度の発達はどの先進資本主義国も必要とするところであり、企業会計を担保する監査制度は必要不可欠です。その意味で、監査法人(公認会計士)は時代の
寵児です。
A一部の税務署OB
その特権(?)は周知の通りです。いつまで続くかわかりませんが当分は改革されそうにありません。
B一般の税理士事務所(町の会計事務所)
中小零細企業の記帳や決算・申告を行う業者で、会計事務所の大半を占めます。
昨今の不況で痛手を被っているのはBです。中には、倒産や廃業を余儀なくされるところもあり、その惨状は一般の企業あるいはそれ以上です。不況下では、「税務(税理士)」の「需要」が減退するのは当然です。
しかし、Bの業務は「税務」だけではなく大変広範なものです。Bは上記三分類に甘んじることなく個性を発揮していく必要があります。@やAが法律や慣習でがんじがらめなのに対して、本来Bは自由闊達な存在
なのではないでしょうか。
2002年6月24日
今年も・・・・
今年も早半年が経過しようとしています。一部の上場企業では2003年3月期は大幅増益を見込んでいます。
しかし、中小零細企業の状況はそんなに甘くありません。
@企業発展の根源である売上は減少の一途です
一部の論者は新産業創出を軽々しく口走りますが、これはそう簡単ではありません。
Aコスト削減や支払の先延ばしはもう限界です
優良仕入先は取引先を選別しています。不良仕入先は叩けば潰れる状態です。
B相変わらず過剰な借入金の返済負担が重くのしかかっています
「返せない時の恐怖」は想像を絶するものです。
大変暗い話題で申し訳ありませんが、残念ながらこれが実情です。
よく、お客様から「よその会社はどうですか」と聞かれます。その際、嘘を答える訳には行きません。それが、会計事務所として当然ではないでしょうか。
2002年6月8日
公認会計士逮捕
先日、昨年破綻した運送会社フットワークの粉飾決算に関連して、公認会計士が逮捕されました。
「公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする。」(公認会計士法第2条1項)
「財務書類」とは、商法や証券取引法で作成公表が義務付けられている、いわゆる決算書とよばれるものです。「監査又は証明」とは、特定の業務について、その業務とは利害関係の無い第三者がその内容を確
かめそれについて結果を報告することであり、公認会計士の監査対象が会計であることはいうまでもありません。
公認会計士の監査対象となる企業は、規模が一定以上の企業(商法監査)と公開企業(証券取引法監査)です。
公認会計士は、監査の結果について意見表明を行います。これは、企業の会計が正確かつ有用であるかについての意見表明です。会計が正確かつ有用で、監査が厳格に行われていても倒産する企業はありま
す。
「会計とは企業の内容をよく見せるための技術」、「公認会計士(あるいは会計に詳しい者)に依頼すれば・・・・・」などの偏見が、世間一般に存在するのは事実です。
今回の事件の真相は未だ明らかではありませんが、年明けの「元国税局長逮捕」、米国の「エンロン事件」とならんで、会計業界が厳粛に受け止めなければならない事件であることは確かです。
2002年5月31日
会計制度
「連結決算」、「評価損」、「経常利益」、「特別損失」など、最近では会計用語もすっかり一般化してまいりました。ここ数年の会計ビックバンといわれる会計制度改革は、企業の経営内容をより一層明瞭に表示する
ことを実現し大変好ましいことです。
企業会計の本来の目的は、資本主義社会の「羅針盤」です。会社(業種)ごとの成長と衰退を判別することは、資本主義社会を健全に発展させるための重要な行動指針となります。企業業績は個別企業の単なる
「通信簿」ではありません。
「自社株取得によるROEの改善」、「不採算部門からの早期撤退」、「評価損を生む金融資産の早期処分」など、最近の上場企業は「通信簿」の「点数」を上げることに躍起です。
6月になれば、株主総会のシーズンが到来します。大赤字の企業は大荒れの総会となるでしょうが、決して目先の「通信簿」を恥じることなく、胸を張って、自社のみならず資本主義社会全体の将来像を描いて株主
総会に挑んでもらいたいものです。
それが、「エリート集団」としての使命ではないでしょうか。
もっとも、良い学校を卒業して良い会社に入社した人間に、それを期待することは無理かもしれませんが・・・・・。
2002年5月11日
決算発表
いよいよ、上場企業の決算発表シーズンです。各企業のトップは浮かぬ顔をして決算発表の席に臨んでいます。決算発表は、各株式市場で義務付けられている制度で、市場によって発表内容に違いはあります
が、過去一事業年度の業績と、翌年度の業績予想を発表しなければならないことは共通しています。
ここ数年で、ずいぶんと会計制度が変わりました。「連結財務諸表」、「キャッシュフロー計算書」、「時価会計」、「退職金債務の認識」など、まさに企業を覆っていたベールをはがすような改革でした。業績を構成す
る要素の開示が拡大され、より厳しく評価することは良いことです。詳細で正確な決算書は、ペイオフ解禁後の「自己責任社会」には必要不可欠だからです。
しかし、問題は、ペイオフという「普遍的ルール」が適用される社会において、どれだけの人が決算書の内容を正確に理解できるかではないでしょうか。決算書を正しく理解するには、それ相応の知識や経験が必要
です。残念ながら現状の決算書は、道路標識のように誰もが理解できるものではありません。
「誰もが理解可能」という新たな難題が、会計制度に求められているのではないでしょうか。これが実現しない限り、ますます「選択肢」は縮小されてしまいます。
2002年4月22日
税理士報酬の自由化
2002年4月1日から、従来は各地区税理士会で定められていた「報酬規定」が廃止されました。いわゆる「自由化」の流れによるもので、ある意味で当然と言えるでしょう。
つい、「自由化=低価格化」と考えがちですが、本当にそうなのでしょうか。
どのようなサービスや商品にも様々な構成要素があり、その構成要素に応じて価格が決ります。そして、需要者には「満足」を、供給者には「利益」をもたらさなければなりません。そうでなければ、その商品やサー
ビスは存続することはできません。もし、従来の「報酬規定」にこのメカニズムが作用していないとすれば廃止は当然です。
この不況下、「自由化になったので従来の半額にしてほしい」はもっともな考えかもしれません。しかし、多くの中小零細企業は、会計事務所(税理士)の提供するサービスの内容についてあまり知らないのが実情で
す。「報酬規定」が廃止されたのを機に、お客様と会計事務所がそのサービス内容について話し合うことが、まずは必要ではないでしょうか。
供給者のサービスや商品についての「説明」と、需要者のそれに対する「理解」。「自由化」の大前提ではないでしょうか。
2002年4月1日
リストラ費用(特別損失)
「A社リストラ費用が多額に発生し当期最終利益は大幅赤字」。
最近よく新聞やニュース番組で見かけます。大半の上場企業は3月末が決算日で今月は年度末に相当します。そろそろ各社とも一年間の業績が具体化し、以前発表した業績見通しの大幅な修正をしています。
リストラ費用の内容は、人員整理にともなう諸費用(早期割増退職金など)、在庫や設備の廃棄費用、グループ会社の整理費用などです。リストラとは事業内容の見直しです。事業内容を見直し特定分野を切り捨
てるのは、もはやその分野が収益を生まないからです。
損益計算書の表示においてリストラ費用は、特別損失として「当期に突発的に発生した損失」として扱われます。しかし、一般的にはリストラを行うにいたった原因ははるか以前から生じていることが多く、リストラ費
用は問題を先送りした結果と言えます。
4月になれば上場企業の決算発表が本格化し、多くの上場企業でリストラ費用の計上が予想されます。そもそも一年間という事業年度は、人為的に区切ったに過ぎません。業種によっては一年間の業績で、企業
内容を見極められないこともあります。しかし、多くの上場企業は一年間の業績であらゆる方針を決定します。
リストラが奏効し今後の業績が上向く、リストラは倒産の一プロセス、リストラを断行できず不採算分野を抱えたまま、様々なケースが考えられるでしょう。
何はともあれ、上場企業の決算数値は中小零細企業にも多大な影響をもたらします。多くの場合、上場企業が、元請、銀行、主要購入先であることが通常でしょうから。
決算数値に潜むものを、冷静に見極める必要があるのではないでしょうか。
2002年3月2日
デフレ対策
もはや、政府に任せておくことはできません。
デフレの元凶。それは、「過剰な借入金の返済負担」に他なりません。
返せない場合、「自宅を奪われる・・・」、「保証人に迷惑がかかる・・・・」、「もうおしまいだ」。
多くの中小零細企業が「返せない時の恐怖」に怯え、血のにじむような経費削減(生活の切り詰め)で「返済財源」を捻出しています。しかし、「返済」は一切収益を生みません。それどころか、「必要な投資や費用」さ
え切り詰めなければなりません。デフレが止まらないのは当然です。
「返せない時の恐怖」は、金融機関の「担保主義=金融機関の特権」が原因です。
「もう返さないぞ、取れるものなら取ってみろ」。
この居直りこそが、「唯一最大のデフレ対策」ではないでしょうか。
2002年3月2日
エンロン問題
米国エネルギー大手企業、エンロンの粉飾決算疑惑が話題となっています。米国は、資本主義社会のリーダーであり、同時に会計先進国でもあります。多くの国が米国の会計基準を範としており、いわば米国は
「近代会計の総本山」です。
エンロン問題の真相が明らかになるまでには、まだ月日を要することでしょう。しかし、資本主義社会の重要な羅針盤となるはずの「会計」が有効に機能していなかったことは事実です。年明けの「元国税局長税理
士事件」と同様、会計人にとって大変重大な出来事であることは間違いありません。
「失敗を笑わない風土」。
ベンチャーブームの際、斬新なビジネスモデルを積極果敢に発表し、投資家から資金を集め、猛然と努力した結果の失敗であるならば、失敗した者を責めてはいけないということがよく言われました。資本主義経
済においては、企業こそが最大の活力源であり、企業を興し、発展させることを奮起させる風土を作ることは大変重要なことです。
しかし、企業に永続の保障など全くないことを忘れてはいけません。企業に倒産はつきものです。そして、企業にとって倒産は最大の失敗であります。さらに、企業の倒産は多くの利害関係者に不測の損害を与えま
す。
経営者は、企業に倒産の危険性が生じたならば、いち早く公表し回避策を講じなければなりません。
「失敗した者は、素直に失敗を認める風土」も、「失敗を笑わない風土」同様に必要ではないでしょうか。
2002年2月15日
元国税局長逮捕
去る1月上旬、元国税局長の税理士が自らの所得税を脱税したとして逮捕されました。これは、決してその人個人の問題ではなく、業界関係者、さらには税務・会計・経理に携わる人、すなわち「会計人」全員の問
題であると考えなければなりません。
会計人は、この事件に対する世間の批判を厳粛に受けとめ、問題点を早急に改善し、信頼を回復する他ありません。
言うまでもなく、税務・会計・経理の職務を全うするには、高度な専門知識と技能が必要です。また、職務の過程で様々な秘密や裏事情を知ることが通常です。残念なことに、時として会計人は、専門的知識や技能
のみならず、業務上知りえた秘密や裏事情を周囲に誇示してしまうことがあります。
誰しも、自身の職務の重要性や影響力を周囲に認めてもらいたいのは当然のことです。しかし、税務・会計・経理の職務には、「適法」、「公正」な観点から多くの利害を調整するという機能が求められます。周囲に
「我田引水」を期待させる言動は慎まなければなりません。
もちろん、会計人に「我田引水」を期待する周囲の人々にも問題はありますが、それ以上に問題なのは、会計人の「志の低さ」と「気概のなさ」ではないでしょうか。
経済のグローバル化、ソフト化にともない、会計数値の重要性は増すばかりです。当然、会計数値は適正でなければなりません。特定の人々にとって都合の良い会計数値ではどうにもなりません。
会計人は、「節税請負人」、「銀行対策担当者」から脱却しなければなりません。
2002年1月31日
ブロードバンドとデジタルデバイド
高速通信回線。この言葉を聞かない日はないくらいです。
ADSL、CATV、FTTHなど、高速通信回線の利用料金もすっかり低価格化し、また、かなりの地域で利用可能となりました。ブロードバンドは、動画、音声を多用する、映画、音楽の配信など、主に個人用途で本領
を発揮します。
なお、企業でもすっかり普及した、ホームページ閲覧やメール送受信は、ブロードバンドでなくとも十分利用可能ですが、ブロードバンドを利用すればよりスピーディに動作します。また、ブロードバンドは毎月定額で
すので、企業にとっては一石二鳥です。
この不況下、ITバブル崩壊と叫ばれつつも、情報通信技術は着々と進化し、それが企業にもたらす恩恵は計り知れないものがあります。遠隔地取引、コミュニケーションの迅速化、円滑化などはITの賜物です。
しかし、その背後で新たな問題が生じてきました。デジタルデバイドです。場合によっては、デジタルデバイドは、今までの恩恵を帳消しにしてしまうおそれさえあります。
中小零細企業にとっても、デジタルデバイドは決して無視できず、真っ向から克服していかなければならない問題ではないでしょうか。
2002年1月31日
生き残る企業
ここ数年で、従来は一流と呼ばれてきた企業が多数倒産しました。
また、現在も大半の企業が減収減益で、特に中小零細企業は資金繰りに窮しています。「先が見えない」が正直な心境でしょう。今後も、企業倒産は続くと考えなければなりません。
倒産にはいくつもの原因があります。
@過去の過剰投資(過剰債務)
A販売不振(企業投資、個人消費の冷え込み)
B衰退産業(取扱商品の陳腐化、海外生産の増加)
C放漫経営
Cは論外として、ここ数年では@〜Bの倒産が目立ちます。「万策尽き果てて」、生命を絶たれていく企業が数多くあります。
この不況を、「根拠のない精神論」や「机上の経営理論」だけで乗り切れるとは夢にも思いません。また、唯一の望みである政府経済政策の内容もいまだ不明瞭です。しかし、確かなことは全ての企業が倒産する
わけではないということです。
この不況でも着実に業績を伸ばしている企業を見習うとともに、惜しくも倒産していった企業を反面教師とする必要があるのではないでしょうか。
2002年1月9日
コンピューターウイルス
昨年後半から猛威を振るっています。パソコンの素人ユーザーはただ怯えるばかりです。残念ながら、当事務所のお客様でもウイルス感染に遭いました。そこで感じましたのは、あまりにも多くのパソコンユーザー
が無防備ということです。
パソコンを購入したならば、直ちに結果を求めたくなります。WEB閲覧、メールの送受信、文書作成などは、パソコンに詳しくなくとも(パソコンに潜む危険性を知らないまま)行えます。
ITバブル崩壊が叫ばれていますが、今後、パソコンやインターネットは益々社会に根付いていくでしょう。
コンピューターウイルスの「制作者」はプロですが、パソコンユーザーの大半は「素人」です。素人なりの防御策で身を守るしかありません。
2002年1月9日
財務会計ソフト
ITバブル崩壊が叫ばれて久しいですが、つい先日、マイクロソフト社のウィンドウズXPが発売され、パソコンの進化はとどまることを知りません。
当事務所のお客様も、大半がパソコンをお持ちになられています。そこで、いつも話題になるのが財務会計ソフトです。「もうこれで、会計事務所業界もおしまいですね」と言われることもあります。確かにその通りか
もしれません。
会社によっては、完璧に基礎資料が作成できており、直ちに財務会計ソフトを導入できる状態の場合もあるからです。このような会社にとっては、会計事務所報酬の大半が「入力代行料+帳票出力料=コンピュー
ター利用料」です。コンピューターが高価な時代は、これでも会計事務所は成り立ちました。しかし、パソコンが低価格化した現在では、この方法は明らかに時代遅れです。
問題は、基礎資料も不十分で、会計知識もあまりない会社です。
CAD(設計ソフト)は設計の知識と技能、デザインソフトはデザインのセンス、ホームページ作成ソフトはHTMLの知識をそれぞれ必要とします。それと同じように、財務会計ソフトは簿記会計の知識を前提としてい
ます。
「会計事務所はお客さんに逃げられたくないから、財務会計ソフトの説明をしない」とよく言われます。財務会計ソフトの操作方法だけでしたら短期間(数時間)で説明することができます。しかし、その前提となる簿
記会計の知識までを短時間で説明することは容易ではありません。
事業者の税務申告の前提となる記帳と決算が、複式簿記以外の簡易な方法にでもならない限り(そんな方法があるとは思いませんが)、代行業としての会計事務所は市場規模こそ縮小しても存続は可能です。
なお、法律が複式簿記を採用しているのは、なにも会計事務所業界を保護するためではありません。世界標準の最も妥当な記帳方法だからです。商人(会社と個人事業者)は複式簿記をマスターする義務がある
のです。マスターできない場合は、アウトソーシングするしかありません。
2001年12月13日
会社から個人事業者に変更したい
最近、熊に襲われそうになった時に「死んだ振り」をするのと同じようによく聞く言葉です。
これは会計事務所にとって大変残念なことです。会計事務所というのは、お客様が起業し、成長していくのが何よりの楽しみです。しかし、この不況下、ローコストな個人事業者を選択するのはある意味で合理的な
ことです。
まず、「個人成り」にあたって、「個人事業者は楽」との「固定観念」は抱かない方が良いと思います。確かに、個人事業者の大半が会計事務所も関与しておらず、登記も不要、場合によっては社会保険も加入する
必要がありません。
「これだけでも軽く年間100万円はコスト削減になる」と考え、個人成りに飛びつく社長さんがおられます。しかし、取引先からの信用低下、各種契約・資産の名義変更に関する支出、法人を清算するための登記費
用など、有形無形のコストがかかることを忘れてはなりません。
個人成りにはいくつかの手順が必要です。
また、個人成りは、あくまでも「事業縮小→廃業のための一つのプロセス」と考えるべきです。さらに、個人成りを選ばすとも法人事業者(会社)のままでローコスト経営が可能な方法もあります。
衝動的に個人成りをする前に、会計事務所に相談なさることをお勧めします。そして、将来に「汚点」を残さない方法を選択することです。
2001年12月13日
何時になったら景気は回復するか・・・
最近、多くの社長さんから嫌というほど聞かれます。
「景気回復策は何か」、「景気回復時期は何時か」そんなことはそう簡単にはわかりません。
しかし、気になることがあります。それは、自社の状況を把握されていない社長さんがまれにおられるということです。資金が枯渇すれば企業の生命はつきます。資金を枯渇させないためには、自社の必要売上高
(粗利)、固定費構造を常時検討していかなければなりません。
「経理は担当者と会計事務所に任せてあるから」と、他人事のようにつぶやく社長さんがおられます。
これは自信を持って言えることですが、経理がしっかりしている会社は環境変化への対応がすばやいということです。このような会社は、現状で売上増が見込めないと判断すれば、早々に新規取引先・商品開拓、
費用の見直し、金融機関への融資申込みなどをしています。また、外部第三者の意見にも耳を傾け、取捨選択の後実行に移しています。
振替伝票が分からなくても、毎月の粗利(売上−仕入)、そこから人件費、家賃、交際費などの諸経費、融資の返済額を差引いた収支ならば簡単に計算できます。何が収支を圧迫しているのか。特定の販売先か
商品か、費用か。徐々に見えてくると思いますが。
ただ、漠然とした不安を抱いていても解決策は見出せないのではないでしょうか。
2001年11月20日
廃業という選択肢
先日、某有名中小零細企業向け経営情報誌の特集として取り上げられていました。
雑誌社にとっては読者の減少につながる、いわば自殺行為的な記事です。
大変な不況、しかもデフレが続いています。負債はバブル期のままあるいはそれ以上ですので、事業が継続不能な中小零細企業が出るのは当然です。
資本主義経済は全てが「市場=相場」で決定されます。しかし、時には相場はクレイジーな現象を引き起こします。十数年程前のバブル、二年程前のITバブル。いずれもクレイジーそのものでした。誰もが、今のよ
うな叩き合いをしていても先が見えないことはわかっています。しかし、どうにもならないのが相場ではないでしょうか。
株式投資の格言に、「休むも相場なり」という言葉があります。所詮、相場の動きなど予測もつかないので、どうしてよいかわからない時は休めと言う意味です。
しかし、そうは簡単に廃業するわけにいかないのが通常でしょう。そこで、一旦、「むきになる」のはやめて休んでみてはどうでしょう。この時代、無理な営業をしても成果は上がらないでしょうから。当然、会社を維持
するための最低限の仕事はしなければなりません。
中小零細企業の社長さんの大半が、一芸でもって起業した人です。いわば、節穴だらけです。
この際、会計、法律、経営などのあまり得意でない分野を補強することも良いかもしれません。
当事務所のお客様で、暇を幸いに苦手であった簿記会計をマスターし、見事に財務会計ソフトの導入に成功なさった社長さんがいらっしゃいます。
2001年11月20日
自前かアウトソーシングか
自前は、既存の人員や設備を利用することが多く出費が少なくて済みますが、成果が現れるのに時間を要します。さらに、トップの独断が成果の芽を摘み取ってしまったり、社内の担当者が素人の場合取り返しの
つかない失敗をしてしまうことがあります。また、計画が中止された場合も直ちに固定費がなくなりません。
一方、アウトソーシングは出費はかさみますが、外部の完成された技術やノウハウをいち早く導入することができます。しかし、主体性のないアウトソーシングは成果が上がらないばかりか、最悪の場合相手に社内
を牛耳られてしまうおそれがあります。業者と十分な事前検討を行うこと、一方的に営業を仕掛けてくる業者は避けることが必要となります。
不況の最中、資源の有効活用か(自前)、即効性か(アウトソーシング)悩むところですが、安易な選択は避けたいものです。
「安いので自前」、「知らないからアウトソーシング」、良くない考えだと思いますが・・・。
2001年11月20日
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公認会計士 築山 哲(日本公認会計士協会 登録番号10160番)
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