年末調整の計算


2020/9/17

控除(給与所得控除、所得控除、税率、税額控除)に注意! 

年末調整で税額を計算するに当たって最初に理解しなければならないことは、年間給与収入にそのまま税率を乗じるのではないということです。給与収入からは様々な控除(こうじょ)があり、控除した(差し引いた)後の金額に税率を乗じます。

この控除の額は、「誰もが同じ」「年間給与収入が同じであれば誰もが同じ」「人によってまったく異なる」などといった具合に、非常に複雑です。また、控除には、自身で支払ったものや給与から天引きされたものもあれば、支払いや天引きが一切ないもの(計算上の概念)もあります。

なお、俗に「手取り」という言葉があります。これは給料や賞与の総額から税金と社会労働保険料などが差し引かれた「手渡し額」のことですが、年末調整での計算とは直接的には関係がありません。差し引かれたものが、控除につながることもあれば、そうでないこともあります。

給与所得控除(給与収入と給与所得の違い)

まずは給与所得控除というものを年間給与収入から控除することができます。この差し引いた額を給与所得といいます。「給与収入」と「給与所得」は違うのです。このことが非常に大切です。給与所得控除は年間給与収入の額に応じて決められています。年間給与収入の額が同じ人であれば、給与所得控除の額も同じです。

「なぜ、こんなもの(給与所得控除)を差し引くのか?」

これにはいくつかの理由があります。「サラリーマンの必要経費」「給与所得の担税力の低さ」「給与所得の把握されやすさ(他の所得との調整)」「毎月源泉徴収されていることの調整(金利相当額の調整)」などが理由ですが、「決定的な理由!」はありません。そんなことから、近年、給与所得控除が順次縮小されてきています。

年間給与収入に応じた給与所得控除の額は、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」から求めることができます。

所得控除(家族構成をはじめとした個人的事情の考慮)

次に所得控除を差し引きます。

所得控除に関しては説明が不要かもしれません。「配偶者控除」「扶養控除」「基礎控除」、それから「生命保険料控除」「地震保険料控除」など、「○○ならば税金が減る!」というやつです。毎年、年末調整の時期になると職場で話題になるあのことです。

ただし、実際に税金を減らしてもらうには、年末調整を行う勤務先に自ら報告しなければならない場合がほとんどです。黙っていたら控除してもらえないことがあります。

税率

ここまできてやっと税率です。

年間給与収入−給与所得控除−各種所得控除

これに税率をかけます。税率は下記国税庁のサイトをご覧ください。

ホーム/税の情報・手続・用紙/税について調べる/タックスアンサー(よくある税の質問)/所得税/No.2260所得税の税率

所得が増えるにつれて税率がアップします。税率を乗じた後に「控除額」を差し引くのを忘れないようにしなければなりません。

税額控除(住宅ローン控除がこれ!)

実はまだ「控除」があります。上記で計算した税額からさらに控除するのです。その例は、住宅ローン控除(正式には住宅借入金等特別控除)です。ただし、税額控除はその計算額が、上記の税額に満たない場合は税額を上限とします。また、そもそも税額がゼロの場合は税額控除もゼロです。

年末調整で還付する税金(給与明細の記載方法)

年末調整で還付する税金は次のように計算します。

A→年間の給与合計から計算した税額(最終確定税額)

B→毎月の給料や臨時の賞与から源泉徴収した税額の年間合計(仮の税額合計)

A<B、この差額を還付します。最終確定税額と仮の税額合計の差額です。

年末調整は年間給与合計の税額を計算する手続ですので、年間の給与を全て支払い終えなければ計算ができません。しかし、年間の給与合計額は年内最後に支払う給与の額が確定した時点でわかりますので、年末調整による税金の還付は年内最後の給与を支払う際にします。

年内最後の給与明細には、この年末調整で還付する税額を「年末調整還付」などと明記しなければなりません。この記載は、控除欄(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税など)で「マイナス記入」します。控除(マイナス)のマイナスですので手取りに加算するということです。

A>Bとなる人もいます。その場合は、年内最後の給与明細の控除欄で「年末調整追加徴収」などと明記して控除します。

還付金だけ返す

還付金だけを給料や賞与とは別に返金するという方法もあります。年内最後の給与の支払いが比較的早い日にち(10日とか)の場合に行われます。そのほか、翌年1月の給料で返金するという方法もあります。しかし、原則はあくまでも年内最後の給与での返金です。

還付金の財源?

税金を還付する雇用者側からすれば、還付金に充当する資金をどうやって「捻出」するかに頭を痛めます。

「余分に徴収したのだから」はわかるとしても、「すでに税務署に納付しているので」と考えてしまいます。しかし、還付した分は以後納付する分から差し引くことができますので、還付税額が雇用者側の負担になることはありません。

住民税は還付しないのか?

年末調整は国税である所得税の手続ですので、地方税である住民税(都道府県民税と市町村民税)は関係ありません。住民税は市町村が勤務先からの年末調整の結果報告を受けて税額を計算確定し、それを勤務先に通知します。勤務先はこの通知を受けて毎月の給料から天引きします。これを「特別徴収」といいます。確定した税額であることから年末調整のような精算手続も不要です。

以上のように住民税は年末調整の結果を受けることから、1年遅れて課税されます。市町村から勤務先への通知は翌年5月に行われ、その通知された分を12分割して各月の給料から徴収します(賞与からは徴収しません)。*2年の住民税は、*1年の年末調整の結果ということです。