源泉徴収票


2020/9/17

源泉徴収票とは?

源泉徴収票(げんせん、ちょうしゅう、ひょう)、「源泉」、「徴収」、「票」、こんな言葉は日常生活で使うことはほとんどありません。語源はあるのでしょうが、それよりも源泉徴収票の意味と記載内容を知ることが大切です。

会社などの雇用者が給与を支払った場合には、定められた額の所得税(国税)を源泉徴収(天引き)しなければなりません。源泉徴収は給料や賞与が支払われる都度行われますが、年末にその源泉徴収した税額合計と年末調整という手続で確定した最終的な年間の税額とを精算しなければなりません。源泉徴収票は、給与から源泉徴収された人の1年間(暦年)の税額がどのようにして計算されたかを示した結果要約表です。

年末調整の内容を確認する

源泉徴収票には、年間(暦年)の給与総額と源泉徴収された税額が記載されています。これは、その年に給料や賞与が支払われた都度発行された給与明細を合計した額に一致します。税額を計算するにあたっては、配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、地震保険料控除などの所得控除が重要な要素となります。源泉徴収票には、控除対象となった配偶者や子などの氏名が記載されています。生命保険料控除と地震保険料控除に関しては支払った保険料に応じた控除がされていることも確認できます。給与から天引きされている各種社会保険料(健康、厚生年金、雇用保険料)も社会保険料控除として記載されています。

源泉徴収票は、翌年の1月末までに各人に交付しなければなりませんが、年末調整の間違いを早期に発見するためには、できるだけ早く交付することが望まれます。給与計算ソフトで年末調整をしている場合には、年内最後の給与の計算が終われば源泉徴収票も完成しますので、年内最後の給与の給与明細と一緒に渡すことができます。

源泉徴収票の記載内容に誤りがある場合には、翌年の1月末まででしたら計算を訂正することができます(年末調整の再調整)。

市町村に住民税の計算データとして報告する(給与支払報告書)

給与をもらい所得税を源泉徴収されている人は地方税である住民税(都道府県民税と市町村民税)も納税しなければなりません。この住民税の納税は「特別徴収」という方法で行われます。住民税は給与をもらう人の住所地の市町村が税額を計算し、その税額を勤務先(所得税の源泉徴収義務者)に通知します。

年末調整は国税である所得税に関する手続ですが、この手続は地方税である住民税の特別徴収と連動しています。年末調整の結果である源泉徴収票は、「給与支払報告書」として給与をもらう人の住所地の市町村に報告されるのです。市町村はこの給与支払報告書で報告された年間給与総額などを基に住民税を計算します。

給与を受け取った人の所得の証明となる

これは源泉徴収票の派生的な役割ですが重要なことです。給与収入しかない人の場合、源泉徴収票が所得の証明となります。各種ローンの申込み、賃貸アパートの入居の際に源泉徴収票の提示を求められることがあります。しかし、源泉徴収票は改ざんや偽造が簡単にできますので信頼性が低いです。特に名もなき企業が発行した源泉徴収票はそうです。

そこで、源泉徴収票に替えて、市町村発行の所得証明が使用されることがあります。これであれば、勤務先から市町村に直接送られたデータ(給与支払報告書)に基づいて作成されていますので信頼できます。

給与明細と源泉徴収票の関係

給与明細とは、従業員に給料(毎月)や賞与(臨時)を手渡す際に一緒に渡す、給料や賞与の計算内容を示した明細書です。給与明細の様式(名称、サイズ、記載項目など)は会社によって異なります。

源泉徴収票とは、1年間(1月から12月まで)に支給した給料や賞与の合計に関する所得税の計算内容を示した書面です。この様式は法律で定められています。

給与明細と源泉徴収票は連動していますので、両者の内容に矛盾があってはいけません。1月から12月に支給された分の給与明細を全て足し算すれば源泉徴収票に一致します。しかし、その一致を確かめるには下記についての理解が必要になります。

●源泉徴収票では基本給や諸手当といった区分がない
源泉徴収票の「支払金額」では「給与所得になるもの(所得税が課税されるもの)」を一括して集計しますので、給与明細のように基本給や諸手当といった区分はされていません。当然、給料(毎月)と賞与(臨時のボーナス)という区分もありません。

●源泉徴収票には非課税の通勤手当は集計されていません
源泉徴収票では「課税の対象になるもの」のみを集計しますので、非課税となる通勤手当は集計されていません。なお、給与明細では「課税支給額」「課税対象額」などと表示されている場合もあります。

●給与所得控除や所得控除は源泉徴収票でしか表示されません
給与所得控除や所得控除は給与明細を足し算しても答えは出ません。給与所得控除や所得控除(配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除など)の額は年末調整が済まなければ確定しないからです。

●源泉徴収票では住民税は表れません
源泉徴収票の「源泉徴収税額」では国税である所得税のみを表示していますので、住民税(地方税)の計算プロセス(住民税の所得控除額)や計算結果は表れません。(住民税の計算は、源泉徴収票とほぼ同じ内容の給与支払報告書が勤務先から市町村に送付され、それを基に市町村が計算します。)

●給与明細を集計した結果は源泉徴収票に一致しましたか?
一致しない場合は、どちらかが間違っているということです。あるいは、給与明細の枚数が足りないということです。ただし、「現物給与」「過年度の源泉徴収漏れ分を今年徴収」などの複雑なケースもあります。

●給与計算ソフトを使用している場合が両者は必ず一致する
給与計算ソフトを使用して日常の給与計算から年末調整までをしている場合には、給与明細と源泉徴収票は相互に矛盾することはありません。このように給与計算ソフトは便利ですがコストが高いです。給与関連法制(社会労働保険、源泉所得税の計算方法)は毎年改正され、それに応じて給与計算ソフトも毎年バージョンアップが必要となります。そのための年間保守料が数万円となりますが、わずか数名の給与計算のためでは採算が取れません。