個人の住民税と事業税(1/2)
内容2012年6月19日現在
【作成】
大阪市北区与力町1−5
住民税(都道府県民税と市町村民税)や事業税は、知らず知らずのうちに税額が決まっていると感じる人が多いことでしょう。それは住民税や事業税(地方税)は、所得税(国税)の計算結果を受けて自治体が計算し通知をしてくるからです。実は、所得税の額を計算するための手続である「確定申告」や給与所得者の「年末調整」の結果は、自治体に密かに(?)報告されているのです。
納税者が住民税や事業税の税額を知るのは5月の下旬以降です。年末調整(12月)や確定申告(2・3月)から随分と月日が経過しています。そんなことから、その結果に愕然とする、場合によっては激怒するという人もめずらしくはありません。
特に平成19年には、「国から地方への税源移譲」が行われたことから住民税の税率が上昇し(その分所得税の税率は下がっています)多くの人の住民税が増え、役所や職場が大騒ぎになる「住民税の増税騒動」とでも呼ぶべき現象が起きました。
住民税や事業税の税額が通知される時期になって、「身に覚えがない?」「こんなにも払えない!」といってもどうにもなりません。なぜならば、その税額が決定されるプロセスに貴方自身が関わっていたからです(自らの責任で年末調整や確定申告をしていたということです)。
≪個人の住民税≫
1 住民税(都道府県民税+市町村民税)とは?
都道府県民税と市町村民税を合わせて「住民税」といいます。住民税は、地方自治体の経費をその住民やその自治体と密接な関係にある者が分担するという思想により個人や法人の所得に課税されます。
2 個人の住民税の納税義務者→その年の1月1日(賦課期日)の状況で決まります。
(1)均等割(所得にかかわりなく各人が均等に負担する部分)→自治体内に住所がない場合も負担しなければならないことがある。
自治体内に住所のある個人、住所はないけれども事務所・事業所・家屋敷のある個人に均等割が課税されます。
(2)所得割(所得に応じて負担する部分)→自治体内に住所がある場合にのみ負担する。
自治体内に住所のある個人の所得に対して課税されます。その対象となる所得の種類や内容は所得税の場合と同じであり、計算の結果、所得のある人は納税義務者となります。自治体内に住所はないけれども事務所・事業所・家屋敷があることから均等割を課税された人(上記(1))には課税されません。
【均等割が非課税となる所得の水準】
前年の合計所得金額(注意:収入から様々な控除をします)が、控除対象配偶者または扶養親族がいる場合には「35万円×(本人+控除対象配偶者+扶養親族の数)+21万円」以下、控除対象配偶者および扶養親族がいない場合には「35万円」以下であれば課税されません。
【所得割が非課税となる所得の水準】
前年の合計所得金額(注意:収入から様々な控除をします)が、控除対象配偶者または扶養親族がいる場合には「35万円×(本人+控除対象配偶者+扶養親族の数)+32万円」以下、控除対象配偶者および扶養親族がいない場合には「35万円」以下であれば課税されません。
【均等割も所得割も課税されない人】
生活扶助を受けている者、合計所得金額が125万円以下の障害者や未成年者など前年の合計所得金額が条例で定める金額以下の場合には課税されません。
【住所】
その自治体に住所や事務所などがあるかどうかは、その年の1月1日(賦課期日)現在の状況で判断されます。例えば、平成23年12月に死亡した人には平成24年度分の住民税は課税されません。また、平成24年2月にA市からB市に住所を移転した人の平成24年度分の住民税はB市で課税されるのではなく旧住所地であるA市で課税されることになります。
住民基本台帳に記録されている人は、原則としてその自治体に住所があるものとされますが、住民基本台帳に記録されていなくても現実にその自治体に住所(生活の本拠。ただし、その解釈は難しいです)があるときは住民基本台帳に記録されているものとみなして住民税が課税されます。
3 個人の住民税の計算と税率
(1)均等割
道府県→年額1,000円(標準税率、これと異なる自治体もあります)
市町村→年額3,000円(標準税率、これと異なる自治体もあります)
(2)所得(割)の計算→前年の所得に課税されます!
所得(割)額=(所得金額−所得控除額)×所得割の税率−調整控除額−税額控除額−配当割・株式等譲渡所得割の税額控除額
所得税(国税)の場合と所得の種類(事業所得や給与所得など10種類)やそれぞれの内容は同じですが、いわゆる所得控除は下記のとおり所得税の場合よりも低くなっているものがあります。
●雑損控除・医療費控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除→同じ
●生命保険料控除・地震保険料控除→異なる(詳細は省略)
●寄附金控除→異なる(詳細は省略)
●配偶者・配偶者特別控除→異なる(例えば一般の配偶者の場合、所得税38万円に対して住民税では33万円)
●扶養控除→異なる(例えば一般の扶養親族の場合、所得税38万円に対して住民税では33万円)
●基礎控除→異なる(所得税38万円に対して住民税では33万円)
●障害者控除・寡婦(夫)控除・勤労学生控除→異なる(詳細は省略)
これは所得税と同じ課税最低限を採用すると自治体の総人口に対する納税者の割合が著しく低くなり、自治体の経費を住民で分担するという住民税の趣旨に合わないという結果になるからです。
(3)所得割の税率→平成19年から所得にかかわりなく一定の税率となりました。
総所得(給与所得、事業所得、不動産所得など総合課税される所得)、退職所得、山林所得の税率は下記のとおりです。(利子や配当、株式や土地の譲渡益の税率はこれとは異なります。)
道府県→年額4%(標準税率、これと異なる自治体もあります)
市町村→年額6%(標準税率、これと異なる自治体もあります)
平成18年までは所得の額が増えるに従って税率が高くなるようになっていました(都道府県民税は2%と3%、市町村民税は3%と8%と10%)。なお、現在のような一律の税率になったことにより所得税と住民税を合計した税負担が増えないような配慮が「調整控除」という名目(下記参照)でなされています。(住民税の税率が引き上げられたのは国から地方への税源の移譲によるものであり、単なる地方の増税ではありません。)
【調整控除額】→平成19年からの国から地方への税源移譲による税率改正の調整
所得税と住民税では人的控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除など)に差があるため、国から地方への税源移譲による税率改正によって税額が増加する場合があります。そのため、一定の計算式により人的控除の差から生じる税額を求め、住民税の所得割額から調整控除として差し引くことによって税額が増えないようにしています。
【税額控除額】
配当控除額、住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)、寄附金税額控除です。これらは所得税においても認められていますが、所得税とは計算方法が異なっています。
【利子・配当などに課税される住民税】
金融機関からの利子、特定の上場企業からの配当、特定の上場株式の売却益にはそれぞれ5%(配当と株の売却益については現在3%)の都道府県民税と市町村民税(上場企業からの配当については都道府県のみ)が課税されます。これは、支払う者が天引き=徴収するという方法で課税します。なお、配当や売却益に課税された分については、所得税の確定申告書や住民税の申告書にこれらに関する事項を記載した場合には最終的な税額から控除することができます。
【土地建物等の譲渡所得に課税される住民税】→他の所得とは分離して課税されます。
他の所得と分離して課税することになっています。税率は、短期譲渡所得(所有期間5年以下)は9%(3.6+5.4)、長期譲渡所得(所有期間5年超)は5%(2+3)です(所有期間は譲渡した年の1月1日において判定します)。(税率の括弧内の数字は都道府県と市町村の税率です。)
【退職所得に課税される住民税】→他の所得とは分離して課税されます。
退職所得に対する所得割については、会社などが退職金を支払う際に他の所得と分離して計算し、退職金からその税金を差し引いて納めることになっています。税率は給与や事業所得と同じ10%(道府県4%+市町村6%)ですが、さらにこの税率を乗じた額から10%が控除されます(ただし、平成25年以降に支払われる分からはこの10%控除は廃止されます)。
【住民税からの住宅ローン控除】
所得税から控除しきれない部分については住民税から控除することができます。
【所得税は課税されないのに住民税は課税される】
上記の説明でこのようなこともあることをご理解いただけると思います。よく世間でいわれる「年間の給与が103万円以下ならば・・・」は所得税についてのことです。
4 個人の住民税の事務を扱う役所→市町村が一括して扱います。
都道府県民税も市町村民税も、市町村(都の23区については特別区)が一括して扱います。要するに、住民税の申告書は住所地の市町村のみに提出すればよいということです。ただし、実際には所得税の確定申告や年末調整などをした場合(国税を確定する手続をした場合)には、それらの結果が市町村へ報告されそれを基に住民税の計算がされることから(詳細は下記5)、多くの場合には市町村に申告書さえ提出する必要がなく、市町村から税額が通知されて納付するだけということになります。
5 個人の住民税の申告と納付
住民税は前年の所得を対象として課税されることから、前年の所得税(国税)の計算結果に基づいて計算されます。
(1)所得税の確定申告をした人
各市町村は前年の所得金額を税務署からの報告により把握します。(確定申告の詳細については「所得税確定申告情報」をご覧ください。)
市町村からの税額の通知は5月下旬にされ、納付は「普通徴収」という方法により、各人が市町村所定の納付書で6・8・10・翌年1月に分割して行います。(本人の希望により一括して納付することや預金口座からの振替で納付することもできます。)
(2)給与所得者で年末調整をした人
毎年年末に勤務先で行う年末調整の結果が「給与支払報告書」として、勤務先から市町村へ報告されます。(年末調整の詳細については「年末調整情報」をご覧ください。)
市町村からの税額の通知は5月下旬に勤務先にされ、納付は「特別徴収」という勤務先が毎月の給料から天引きするという方法により行います(6月から翌年5月までに分割して徴収します)。(特別徴収の詳細についてはこちらをご覧ください。)
【サラリーマンの副業の住民税】
副業の収入が給与所得以外の場合には、副業部分の住民税については自身で納付することができます(会社に副業をしていることがばれません)。ただし、それには確定申告を行い、申告書に自分で納付することを明記しておく必要があります。
【新社会人】
前年の所得がないことから住民税は課税されません。つまり、給与明細の住民税の欄(控除欄)はゼロになります。2年目からは住民税も給料から天引きされます。ですから、場合によっては2年目からは手取額が減ることもあります(先輩に聞いてください。あたなよりも手取りが少ないかもしれません)。
【給料から住民税が天引きされていない】
勤務先が給与支払報告書を市町村に提出していない場合(ズサンです!)、提出していても普通徴収にしている場合(特別徴収が煩わしい)にはこのようなことになります。前年に年末調整をしていない場合にもこのようになります(この場合には自身で確定申告をしなければなりません)。年度途中に転職し、所定の手続をしていない場合にもこのようになりますので、住民税を自身で納付することになります。
【市町村から住民税の申告書の用紙が送られてきた!?】
所得があるのに所得税の確定申告もしていない、年末調整もしていない場合にはこのようになります。まずは、所得税の確定申告をすることです。所得税も住民税も課税されない場合には住民税の申告書を提出する必要はありません。住民税のみが課税される場合(実際にこのようなこともあり得ます)には住民税の申告書を提出します(通常は所得税の確定申告や年末調整を税額ゼロでしておきます。)。
6 住民税の減免
住民税は前年の所得に対して課税されます。そんなことから、翌年になって所得が激減した場合には住民税を納付することができなくなる場合があります。そんな事態に陥った人には住民税が減免される場合があります。
以下は「大阪市」における減免の条件です(大阪市のサイトより抜粋)。
失業し、雇用保険の給付を受けている場合で、次の条件を満たす方のうち個人市・府民税の全額納付が困難と認められる方については、その失業期間中に納期限が到来する部分の税額に限り、減額・免除を受けることができます。
・転職、結婚または家事従事などを目的とした自己の意志による退職でないこと
・前年中に資産所得や事業所得など継続性のある所得がある場合は、これらの所得の合計額が給与所得を上回っていないこと
・退職後、恩給・年金などを受けていないこと
・前年の合計所得金額が条例で定める金額(平成24年度は、所得が給与所得だけで、夫婦と子ども2人の標準世帯の場合、前年の給与収入金額が664万4,445円)以下であること
・申請期限(あなたの場合は、10月31日)までに減免申請書を提出していただくこと
※緊急経済対策の一環として、平成21〜24年度の個人市・府民税に限り、雇用保険の受給資格を有する派遣労働者等で、契約期間満了によって退職された失業中の方についても減額・免除の対象とする特例措置を行うこととしました。
なお、失業の場合のほかに、納税者の方が災害にあわれたり、生活保護を受けている場合や、前年の合計所得金額が条例で定める金額以下の方で、所得が前年の6割以下に減少すると見込まれる場合、前年の合計所得金額が条例で定める金額以下の方で、障害者・未成年者・寡婦・寡夫または学生などに該当する場合についても、個人市・府民税の全額を納付することが困難と認められる場合は、個人市・府民税を減額・免除する制度があります。
詳しくはお住まいの区を担当する市税事務所(個人市民税担当)までお問い合わせください。
申請は、申請期限までに行ってください。
なお、すでに納付されている個人市・府民税の税額については、減額・免除することができません。
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