個人の住民税と事業税(2/2)
内容2012年6月19日現在
【作成】
大阪市北区与力町1−5
≪個人事業者の事業税≫
1 事業税とは?→都道府県が課税します。
事業税は事業の所得や収入に対して都道府県が課税します。都道府県は事業者(個人事業者や会社など)に対して各種の行政サービスを提供しているので、その対価として事業税を課税するということです。
事業者が行政サービスをどの程度受けたかを測る尺度は、所得や収入以外にも資本金の額、事業所の床面積、従業員数などが考えられますが、現行の事業税は所得に対して課税されます。(ただし、資本金1億円超の会社に対しては外形標準課税といって、付加価値額と資本金額に応じて事業税を課税するという方法が加味されています。)
【事業所税】
都や政令指定都市で、都市環境の整備や改善に充てる財源のために事業所の床面積(1000平米超)や従業員数(100人超)に応じて課税されます。
2 個人の事業税の納税義務者→事務所または事業所がある都道府県で課税されます。
事業を行っている個人は、事務所または事業所所在地の都道府県で事業税の納税義務者となります。つまり、A県に住所がありB県で事業をしている場合には、B県で事業税の納税義務者になるということです。
事務所または事業所(以下、事業所とします)とは、事業の必要から設けられた人的および物的な設備で、継続して事業を行う場所ということです(その設備の所有権とは無関係です)。平たくいえば、事業をするために事務所や店舗などを構え、第三者から見て事業をしていることが明らかな場合には事務所または事業所ということです。
【複数の都道府県に事業所がある場合】
複数の都道府県で事業税の納税義務者となります。この場合には、所得を事業所のある都道府県ごとの人数比で分割して事業税を計算します。
3 個人の事業税の計算と税率
事業税は下記のとおりの算式で課税されます。
(前年の所得金額−事業主控除額290万円)×税率=事業税額
(1)事業の種類
事業税の課税にあたっては事業を下記のとおりに分類しています。
●第1種事業(37業種)
物品販売業、保険業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、電気供給業、土石採取業、電気通信事業(放送事業を含む)、運送業、運送取扱業、船舶ていけい場業、倉庫業、駐車場業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業、飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、両替業、公衆浴場業(第三種事業以外のもの)、演劇興行業、遊技場業、遊覧所業、商品取引業、不動産売買業、広告業、興信所業、案内業、冠婚葬祭業
●第2種事業(3業種)
畜産業、水産業、薪炭製造業
●第3種事業(30業種)
医業、歯科医業、薬剤師業、獣医業、弁護士業、司法書士業、行政書士業、公証人業、弁理士業、税理士業、公認会計士業、計理士業、社会保険労務士業、コンサルタント業、設計監督者業、不動産鑑定業、デザイン業、諸芸師匠業、理容業、美容業、クリーニング業、公衆浴場業(銭湯)、歯科衛生士業、歯科技工士業、測量士業、土地家屋調査士業、海事代理士業 印刷製版業、あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業
上記の業種により税率が異なります。どの業種に属するかは基本的には課税当局の判断によりますが(申告書に記載した業種などにより判断します)、その区分が間違っている場合には一定の手続により変更してもらうことができます。(事業区分がそれに属するかが不明な場合には、納得するまで課税当局に質問してください。)
【不動産貸付けの事業税】
貸付けている室数、棟数、面積などが一定の基準以上の場合にのみ課税されます。なお、共有不動産の貸付けを行っている場合は、共有者の持分ごとではなく共有不動産全体について基準が適用されます。
(2)前年の所得(所得税との違い)
所得金額の計算は、原則として所得税における事業所得および不動産所得の計算と同じです。青色事業専従者給与額または事業専従者控除額も原則として所得税の場合と同じです。ただし、所得税の青色申告特別控除額は事業税では適用がありません。
(3)事業主控除額
事業の種類や所得の額にかかわりなく一律290万円控除することができます。要するに、所得の額が290万円以下の場合には事業税は課税されないということです。
(4)税率
●第1種事業→5%
●第2種事業→4%
●第3種事業→5%(あん摩等医業に類する事業及び装蹄師業は3%)
いずれも標準税率ですので、自治体によってはこれとは異なる場合があります。
4 個人の事業税の事務を扱う役所
事業所所在地の都道府県が行います。各都道府県は都道府県内に「県税事務所」などと称した役所(お馴染みの不動産取得税や自動車税も扱っています)を複数設置しており、自身の事業所を管轄する役所に申告書の提出や税金の納付を行います。
【個人事業者の税務関連役所】
税務署(所得税=国税)、都道府県税事務所(事業税=都道府県民税、名称は自治体により異なります)、市区町村役所(住民税=都道府県民税+市町村民税)の3か所とは最低でも関わらなければならないということです。事業を始めたならば管轄の役所を調べておく必要があります。
【個人事業者の開業届】
開業届は税務署にだけ提出すればよいです。他の役所は所得税の確定申告書により事業を開始したことを把握します。税務署に開業届も提出していない、確定申告書も提出していない場合には他の役所から連絡がある場合もあります。
5 個人の事業税の申告と納付
(1)申告
毎年3月15日までに「県税事務所」などに申告書を提出しなければなりません。ただし、「所得税の確定申告書または個人住民税の申告書を提出した」、「所得金額が事業主控除の290万円以下である」場合には申告書を提出する必要がありません。前者の場合は、都道府県がこの結果に基づいて事業税を計算します。
(2)納付
「県税事務所」などから送付される納付書(税額の通知書に同封されている)により、8月と11月に納めます。(一括して納付することや預金口座からの振替で納付することもできます。)
【事業税は必要経費になります!】
事業税は都道府県から事業に関する行政サービスを受けるための対価ですから必要経費になります。所得税は国民として、住民税は住民として納税する(事業とは無関係に納税する)わけですから必要経費にはなりません。
個人事業者が廃業した年の事業税(事業税を必要経費にするタイミング)
個人事業者の事業税は前年の事業所得を基準に税額が決まります。要するに、納税者の感覚としては「今年の事業税は来年払う」ということになります。しかし、廃業した年は、廃業から1ヶ月以内に事業税の申告と納税をしなければなりません(法人成り=会社設立により個人事業者を廃業する場合も同じです)。つまり、廃業した年は、前年の事業税とその年の事業税を納税しなければならないということです。
■廃業後1ヶ月以内に事業税の申告をしなかった場合
翌年の納税になるようです。例年どおり、翌年の8月上旬に通知が来ます。
■事業税は必要経費になる
廃業した年に事業税の申告納税をしていない場合には、事業税を必要経費にするタイミングを逃すことになります。なぜならば、事業税を納税する廃業の翌年には事業を行っておらず必要経費という考えがないからです。しかし、それではあまりにも納税者に酷ですので次の処理が認められています。
【確定申告で見込額を計上する】
廃業した年の所得税の確定申告で、事業税の見込額(実際には確定額)を納税がまだであっても計上することができます。
【更正の請求をする】
所得税の確定申告で事業税の見込額を計上していなかった場合には、更正の請求により事業税相当額を必要経費に含めて所得税額を計算し直すことができます。当然、当初の申告税額よりも減額され、結果として税金が還付されます。この更正の請求は、事業税の金額が通知されてから行います。
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