築山公認会計士事務所(大阪市北区与力町1−5与力町パークビル7F)
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運用(入力)
(内容)2014年7月19日現在
≪振替伝票方式≫
財務会計ソフトは、振替伝票(含む入金・出金伝票)で入力するのが基本です。この方法は、複式簿記の知識がある、あるいは身近に複式簿記に詳しい人がいていつでも質問でき
る環境にある会社向きです。そのような状況にない場合は下記の≪出納帳方式≫で入力してください。
すでに振替伝票が起票でき、手書で総勘定元帳や残高試算表を作成している場合は、何の支障なしに財務会計ソフトを導入できます。財務会計ソフトは、手書会計をパソコンに置
き換えただけです。手書会計では人間がしていた振替伝票から総勘定元帳、試算表への転記がパソコンの中で行われます。なお、操作方法はATM並みに簡単ですので、パソコン
の初心者でも十分にできます。数あるパソコンソフト(ワープロ、表計算、データ−ベース)の中で財務会計ソフトほど操作方法が簡単なものはありません。
振替伝票の起票ができる人は、複式簿記を一通りマスターしている人であると思います。財務会計ソフトのより高度な使い方をマスターしていってください。高度な使い方の例は次
のとおりです。
(1)部門管理
(2)各種経営分析(損益分岐点分析、前期比較など)
(3)エクセル(表計算ソフト)へのエクスポート
また、この際、パソコンの設定、エクセル、インターネットなどもマスターしてください。経理担当者としての技能が大幅に向上します。
≪出納帳方式≫
1.複式簿記を知らなくても
ソフトメーカーの長年のテーマです。しかし、「複式簿記の知識不要」を売り文句にしている財務会計ソフトも背後で複式簿記が動いています。複式簿記に基づかない命令を複式簿
記に変換しているのです。導入に当たってはメーカーに十分に確認し、サポートの範囲を確認しておくことです。
当事務所では、「財務会計ソフトには複式簿記の知識が必要不可欠」と考えています。
MS−DOSの時代には、財務会計ソフトの入力画面は複式簿記の知識を必要とする「振替伝票」が主流でした。しかし、ウィンドウズ95の発売後パソコンの普及が急激に進み、各
ソフトメーカーとも競って「素人でも使える」財務会計ソフトを発売しました。入力画面に振替伝票以外を採用するようになったのです。
金銭出納帳あるいは総勘定元帳方式です。これは、従来は振替伝票の積み重ねとして作成していた帳簿を、反対に帳簿から振替伝票を作成するという方式です。複式簿記の知識
がなくとも、金銭出納帳や売掛帳などの結果はそれなりに理解できるので、素人にも馴染みやすいのです。
次に紹介する方法は、複式簿記をわかりやすくしたに過ぎません。内容は複式簿記そのもので、運用にあたっては会計事務所などの「管理人」が必要です。「会計事務所はお客さ
んに逃げられたくないから、財務会計ソフトの説明をしない」とよくいわれます。財務会計ソフトの操作方法だけでしたら短期間(数時間)で説明することができます。しかし、その前提
となる簿記会計の知識までを短時間で説明することは不可能です。
事業者の税務申告の前提となる記帳と決算が、複式簿記以外の簡易な方法にでもならない限り(そんな方法があるとは思いませんが)、代行業としての会計事務所は市場規模こ
そ縮小しても存続は可能です。なお、法律が複式簿記を採用しているのは、なにも会計事務所業界を保護するためではありません。世界標準の最も妥当な記帳方法だからです。
会社と個人事業者は複式簿記をマスターする義務があるのです。マスターできない場合は、アウトソーシングするしかありません。
2.入力原票と入力画面
(1)「手書の金銭出納帳」を財務会計ソフトの「現金出納帳」に入力
個々の入出金のある都度、相手勘定、金額、摘要をその日付で入力します。
(2)「預金通帳」を財務会計ソフトの「預金出納帳」に入力
個々の入出金のある都度、相手勘定、金額、摘要をその日付で入力します。
(3)「手書の売掛帳」を財務会計ソフトの「売掛帳(売掛帳がない場合は総勘定元帳の売掛金勘定)」に入力
各月締日の得意先別合計売上金額を売上金額欄に入力します(日付は締日)。相手勘定は、 「売上高」とします。回収については売掛帳の回収金額欄(相手勘定は現金、預金、
受取手形)、あるいは金銭出納帳、預金出納帳、総勘定元帳の受取手形勘定(いずれも相手勘定は売掛金)から行います。
(注)既に販売管理ソフトを導入している場合は、これを入力原票とします。
(4)「手書の買掛帳」を財務会計ソフトの「買掛帳(買掛帳がない場合は総勘定元帳の買掛金勘定)」に入力
各月締日の仕入先別合計仕入金額を仕入金額欄に入力します(日付は締日)。相手勘定は、「仕入高」とします。支払いについては買掛帳の支払金額欄(相手勘定は現金、預金、
支払手形)、あるいは金銭出納帳、預金出納帳、総勘定元帳の支払手形勘定、総勘定元帳の受取手形勘定(裏書)(相手勘定はいずれも売掛金)から行います。
(注)既に在庫管理ソフトを導入している場合は、これを入力原票とします。
(5)「手書の受取手形記入帳」を財務会計ソフトの「総勘定元帳の受取手形勘定」に入力
受取った都度(日付は受取日)、各手形の金額を「借方(増加)」に記入してください。相手勘定は、「売掛金」とします。決済については総勘定元帳の貸方(減少)、あるいは預金出
納帳から行います。裏書については、各手形金額を「貸方(減少)」に入力します。相手勘定は、買掛金となります。
(6)「手書の支払手形記入帳」を財務会計ソフトの「総勘定元帳の支払手形勘定」に入力
振出した都度(日付は振出日)、各手形の金額を「貸方(増加)」に記入してください。相手勘定は、「買掛金」とします。決済については総勘定元帳の借方(減少)、あるいは預金出納
帳から行います。
(7)決算仕訳
減価償却、期末在庫、未払金計上などは、振替伝票かそれぞれの決算仕訳に該当する勘定科目の総勘定元帳から入力します。
3.二重入力の防止
次の取引は、複数の帳簿に同一の取引が記帳される代表的なケースです。どの入力原票から入力するのかあらかじめ決めておく必要があります。
(1)銀行預金から小口現金へ補充
現金出納帳、預金出納帳
(2)小口現金から銀行預金へ預け入れ
現金出納帳、預金出納帳
(3)銀行預金間の移動
預金出納帳(2口座分)
(4)売掛金の回収
金銭出納帳、預金出納帳、売掛帳、総勘定元帳(受取手形)
(5)買掛金の支払
金銭出納帳、預金出納帳、買掛帳、総勘定元帳(支払手形)
(6)手形の受取
総勘定元帳(受取手形)、売掛帳
(7)受取手形の決済
総勘定元帳(受取手形)、預金出納帳
(8)手形の裏書
総勘定元帳(受取手形)、買掛帳
(9)手形の振り出し
総勘定元帳(支払手形)、買掛帳
(10)手形の決済
総勘定元帳(支払手形)、預金出納帳
4.入力確認
日常の入力が正しいかを確認するには、次の帳簿と入力原票(基礎資料)を照合しておく必要があります。不一致がある場合、その原因が金額、勘定科目、入力原票(基礎資料)
のいずれにあるかを突き止めて修正する必要があります。
(1)手書の金銭出納帳と財務会計ソフトの現金出納帳残高の照合
(2)預金通帳と財務会計ソフトの預金出納帳の照合(銀行別、預金種類別)
(3)手書の売掛帳の個々の口座の月末残高と財務会計ソフトの補助残高一覧表(売掛金)の照合
(4)手書の買掛帳の個々の口座の月末残高と財務会計ソフトの補助残高一覧表(買掛金)の照合
(5)手書の受取手形帳の月末未決済残高と財務会計ソフトの総勘定元帳残高(受取手形)の照合
(6)手書の支払手形帳の月末未決済残高と財務会計ソフトの総勘定元帳残高(支払手形)の照合
5.複雑な取引
次の取引については、収支と損益に違いがあります。そこで、収支を一ひねりした形式にして入力する必要があります。
(1)給与の支払(現金支払)
正味支払金額(手取金額)を金銭出納帳の出金欄に、相手勘定を給与として入力してはいけません。いったん給与総額を金銭出納帳の出金欄に相手勘定を給与として入力し、直
ちに源泉所得税や社会保険料を預かったと仮定して、相手勘定を預り金として入金欄に入力します。これで、収支と損益が一致します。
(2)売上代金の銀行振込(手数料を差引かれた場合)
正味入金金額を預金出納帳の入金欄に、相手勘定を売掛金として入力してはいけません。いったん手数料を差引かれる前の金額を入金欄に相手勘定を売掛金として入力し、直ち
に振込手数料相当額を相手先に支払ったと仮定して、これを出金欄に相手勘定を支払手数料として入力します。これで、収支と損益が一致します。なお、通帳の表示と預金出納帳
の表示は一致しませんが(残高は一致しますが)それでよいのです。
(3)借入金の返済(毎月、元金の返済と利息を支払っている場合)
預金通帳には元利合計の出金と表示されています。しかし、これを元金分は借入金(負債勘定)、利息分は支払利息(費用勘定)に分ける必要があります。
以上は、収支をそのまま入力してはいけないほんの一例です。入力にあたっては、常時、収支と損益の違いを考えなければなりません。
6.期首残高の訂正(してはいけない!)
期首残高は、各勘定科目(損益勘定科目を除く)の前期末残高であります。財務会計ソフト導入時には、導入年度の前年末の貸借対照表からその金額を登録します。また、導入2
年目以降は、繰越処理をすることにより前期末残高が自動的に当期首残高となります。
期首残高を訂正してはいけないのは当然です。なぜならば、期首残高=前期末の貸借対照表は、会社がその意思によって確定させているとともに、外部(税務署や金融機関など)
に公表しているからです。しかし、期首残高が「誤り」であることが後日判明することもあります。そのような場合は次のとおりの処理をしてください。
(1)当年度中の任意の日付で修正仕訳を起こす
(例1)前年度に売上が二重計上されており、売掛金が過大である
売上高(前期損益修正) ○○ 売掛金 ○○
(例2)前年度に仕入高の計上漏れがあり、買掛金が過少である
仕入高(前期損益修正) ○○ 買掛金 ○○
(2)税務署に、修正申告書の提出(前期の利益が増加する場合)あるいは更正の請求(前期の利益が減少する場合)をする
ほとんどの財務会計ソフトにおいて、期首残高を容易に訂正することができます。「できること」と「してよいこと」の違いを十分認識してください。
7.異常な結果
一般に仕訳や入力の誤りは貸借対照表に表われ、次のような場合はかなり重大な「ミス」や「勘違い」、場合によっては「意図的歪曲」があると考えてください。
(1)現金残高が異常に多い
社長さんが何気なく行った個人出費が、未処理(未入力)となっていることがよくあります。当然、実際に現金は出て行っているのに財務会計ソフトで出金処理をしていないので「財
務会計ソフトの現金残高」は「実際の残高」より多くなります。また、クループ企業への資金融通を未処理としている場合も同様の現象が起こります。異常な現金残高が出金の未処
理という単純なミスであれば、すかさず修正すればよいのですが、不都合な出金を意図的に除外している場合は大変です。税務署や金融機関の外部者は、「違法な政治献金して
いる」「暴力団に揺すられている」「社長が個人的に投資で失敗し会社の資金で穴埋めしている」など様々な憶測をします。
(2)現金残高がマイナス
(1)の反対で、入金の未処理が原因です。なお、(1)同様に単純ミスならばすかさず修正すればよいのですが、不都合な入金を除外している場合は大変です。「高利で資金調達し
ている」「売上を除外している」など、外部者は憶測します。
(3)売掛金が異常
・多い場合
売掛金の入金時に売掛金の減少ではなく、誤って売上高としている可能性があります(売上の二重=過大計上)。
・少ない場合
売掛金に計上していない売上高(店売上など)を、誤って売掛金の減少としている可能性があります(売上の過少計上)。
(4)買掛金が異常
・多い場合
買掛金の支払時に買掛金の減少ではなく、誤って仕入高としている可能性があります(仕入の二重=過大計上)。
・少ない場合
買掛金に計上していない仕入高(即時現金払い仕入)を、誤って買掛金の減少としている可能性があります(仕入の過少計上)。
上記の状態が一向に解決しない場合は、早急に会計事務所や複式簿記に詳しい人に相談し てください。この状態で決算申告をすることは大変危険です。後日、金銭的打撃を受け
るおそれが大いにあります(税務調査で追徴課税される、融資が受けられない)。さらに、金銭的打撃の結果は社内の人間関係悪化を招きます(社長さんと経理担当者の衝突に端
を発する)。
≪損益勘定科目のみ入力する方式≫
「損益計算書さえできれば」いうことでよく行われている方式です(特に個人事業者で)。総勘定元帳の各損益勘定科目に相手勘定科目を現金として直接入力します。しかし、これで
はどうにもなりません。取引の漏れや重複を防止することができないからです。早急に改善する必要があります。
なお、この方式で決算申告を行った結果蒙った損害?(追徴課税や融資を受けられない)についてはメーカーに何の責任もないのは当然です。自動車を無謀運転したのと同じだか
らです。
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公認会計士 築山 哲(日本公認会計士協会 登録番号10160番)
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