資産


2020/1/8

《資産》


【流動資産】

(現金預金)
流動資産の先頭は現金預金(現預金ともいいます)です。先頭ですので、潤沢な現金預金を保有していると胸を張って決算書を見せることができます。売上や利益も大切ですが、結果としての現金預金を積上げることが何よりも大切です。会社は株主から現金預金を集め、それを事業活動に投下して、現金預金として回収します。そして再びこの現金預金を事業活動に投下します。現金預金は資産の原形なのです。
現金預金はその金額を客観的方法で計算することができる資産です。現金は硬貨と紙幣、預金は銀行の残高(通帳など)といったように、唯一絶対的な方法で金額が決まってきます。
現金
手元にある硬貨と紙幣です。売上代金を現金で集金してきて銀行預金に預け入れる前のもの、現金での支払いに備えて用意しているものがこれです。実際にこれらを数えた金額と勘定科目の金額が一致しなければなりません。受取った小切手も含まれますが、受取り後直ちに預金へ預けている場合は現金に含めなくてもかまいません(預金に含めます)。
小口現金
現金の一部を少額な経費の支払専用に使う場合には、現金とは別にこの小口現金という勘定科目を用います。少額な経費ですので、最大でも数十万円程度で、不足すれば必要に応じて補充します(上限を設けて不足額を補充するという方法もあります)。
当座預金
当座預金の残高です。最近は手形や小切手での支払いが減っているので、当座預金を開設している企業が減っています。未落小切手(振り出したけれど銀行からは引き落とされていない小切手)は振り出した時点で当座預金を減少させますので、未落小切手相当額が銀行側残高より少なくなります。また、当座貸越契約を結んでいる場合は残高がマイナスとなることがあります。
普通預金
普通預金の通帳残高です。複数の普通預金口座がある場合にはその合計です。
定期預金
定期預金とは満期日の定めがある預金です。満期日が事業年度末の翌日から数えて1年以内の定期預金のみを流動資産とします。
定期積金
一定期間、毎月同額を積み立てる預金です。積み立てが終わると取り崩されます。

(売上債権)
現金預金の次は売上債権、売上代金の未回収額です。近いうちに現金預金になるものです。大口の得意先の回収が遅れている、小口であるけれども回収が遅れている得意先が多い場合には、売上債権の額が増えます。売上債権の額の水準は売上と比較すれば理解することができます。
売掛金
売上代金の未回収部分をいます。小売店や飲食店のように、その場で代金をもらう場合には売掛金という勘定科目は生じません。「販売→請求→集金」というプロセスがある業種でこの勘定科目は生じます。
受取手形
売掛金を手形で回収して決済期日が未到来のもの(現金化されていないもの)をいいます。手形を裏書きや割引きした部分はこの勘定科目からは除かれます。
貸倒引当金
売上債権(売掛金と受取手形)のうち回収不能になると予測される金額を見積り売掛金と受取手形の下部でマイナス表示します。あらかじめ減額しておくのです。この計算は売上債権「総額」に一定率を用いる方法と「個別(得意先ごと)」の売上債権額の回収不能額を見込むという方法があります。

(有価証券)
有価証券
一時保有(短期の売却益狙い)の株式、公社債、投資信託などをいいます。市場性があり(証券取引所などで売買ができる)、時価が判明するものは時価で評価しますが、それ以外のものは取得価額(買値)で計上します。

(棚卸資産)
棚卸(たなおろし)という言葉も簿記会計ではよく使う言葉です。棚卸とは、製品・商品などを数えることです。「棚卸をする資産?」という意味かどうかはわかりませんが、下記のような資産を棚卸資産といいます。棚卸資産は、いずれ売上原価などの費用になりますが、費用になるまで貸借対照表にプールしておくのです。
商品
完成品を外部から仕入れそのまま販売する物です。主に、小売業と卸売業で用いる勘定科目です。この勘定科目の金額はいわゆる仕入値ですが、仕入値の計算方法はいくつかの方法(先入先出法、移動平均法など)が認められており、その方法によって金額が変わってきます。
製品
自社で製造し販売する物です。この金額は、材料費、労務費、その他の経費などの「製造費用」から構成され、この計算をする作業は原価計算と呼ばれています。
半製品
自社の製品で製造途上にあるけれども、そのまま販売可能な物です。
(例)パソコンメーカーが製造している部品
原材料
外部から仕入れた自社製造用材料です。
仕掛品
自社の製品で製造途上にある部分です。
貯蔵品
自社製造用の消耗品(ねじや接着剤など)ですが原材料との区分が困難な場合があります。製造業以外でも、未使用の消耗品(郵便切手、文房具、梱包資材など)をこの勘定科目にプールしておくことがあります。

(その他流動資産)
前渡金
商品や物品(備品や消耗品など)の購入代金を先払いした場合に発生します。なお、仕入代金の場合はこの勘定科目を用いずに、買掛金の減少として処理してもかまいません。この場合、買掛金勘定がマイナスとなるケースもありえます(一時的にはともかく、年度末には前渡金に振り替えなければなりません)。
立替金
役員、従業員の個人的費用や、取引先が負担する費用を立替払いした場合に発生します。なお、立替分の入金があったときにはこの勘定科目を減少させます。
前払費用
家賃、保険料などサービスに関する料金を前払し、そのうちサービスの提供を受けていない部分をいいます。サービスの提供が済んだ部分は前払費用から費用に関する勘定科目に振り替えます。上記の前渡金が商品や物品が到着した時点に全額消えるのに対して、前払費用はサービスの提供に応じて順次消えます。
未収収益
受取利息、家賃など時の経過に応じて発生する収益の未入金部分をいいます。実務では未収入金との区分が厳密にできていないことがあります。
短期貸付金
取引先や従業員に資金を貸し付けた場合に発生します。しかし、売掛金、前渡金、立替金との区分が困難な場合があります。「貸付」というからには返済期日と利息(利率)についての取り決めを契約書で明確にしておく必要があります。この勘定科目は内容が不透明になりがちですので、明確な説明ができるようにしておかなければなりません。
未収入金
本業の商品やサービスの販売代金以外の未入金額をいいます。
(例)土地売却代金、株式売却代金
仮払金
すでに出金はあるけれども内容が未確定のものをいい、出張旅費や交際費の先渡しが典型例です。この勘定科目も内容が不透明なことが多いので明確な説明ができるようにしておく必要があります。また、できるだけ早く精算するのが望ましいことはいうまでもありません。処理の先送りは許されず、出金内容が確定している場合には直ちに精算し、しかるべき勘定科目に振替えなければなりません。
仮払消費税等
消費税の仕訳処理を税抜処理している場合に、仕入代金や諸経費を支払った際の消費税の累計額です。年度末には仮受消費税(売上などで受け取った消費税)との差額を計算し、税務署へ納付する場合は未払消費税等、税務署から還付される場合は未収消費税等とします。この処理の結果、この勘定科目は消滅します。また、消費税を中間申告で納付した場合はこの勘定科目を用います。

【固定資産】

(有形固定資産)
有形固定資産とは、文字通り形のある(有形の)、目に見える資産です。形があり、形状も大きいので価値のある「資産らしい資産」といえます。有形固定資産の内容は種々雑多で、どの勘定科目に属するかの判断が困難な場合があります。そのような場合には減価償却資産の耐用年数等に関する省令の「耐用年数表」に記載された資産を参考にして決めます。
建物
建設物で屋根と壁があり、店舗、事務所、工場、倉庫などに利用されるものをいいます。
建物附属設備
上記の建物に付属して固定され、建物の使用価値を高め、維持管理上必要なものをいいます。
(例)電気設備、給排水設備、空調設備、エレベーターなど
構築物
貯蔵用タンク、広告塔、駐車場の屋根、塀など、建物や建物附属設備以外の建設物をいいます。実務上、三者の区分が困難なこともあります。
機械装置
内容は種々雑多です。機械の典型は「切る」「削る」「磨く」などして部品や製品を作る「○○機」と呼ばれる物です。装置はいわゆる製造ラインと呼ばれるものがその典型です。実務上、この機械装置と「建物附属設備」「構築物」「工具器具備品」の区分が相当難しい場合もあります。
車両運搬具
乗用車、トラック、フォークリフト、特殊自動車、バイク、自転車のことです。
工具器具備品
工具とは作業用や運搬用などの道具(レンチ、スパナ、ジャッキなど)のことをいい、器具備品とは家具、電気・ガス機器、事務機、通信機器、容器、金庫などをいいます。
減価償却累計額
土地を除く有形固定資産は、使用や時の経過によって減価、つまり価値が減少します。この価値の減少を減価償却といいます。減価償却累計額とは、保有する(勘定科目として貸借対照表に計上された)有形固定資産の減価償却相当額をマイナスするための勘定科目です。ただし、一般的には減価償却累計額をそれぞれの勘定科目から減額して表示していますので、この勘定科目は表れないことのほうが多いです。
土地
土地の購入代金(契約書に記載された)のほか、購入に要した際の諸費用(登記費用、不動産取得税、立退き費用など)を含めます。
建設仮勘定
建設中(未完成)の建物、建物附属設備、構築物、機械装置に関する支出をいいます。完成後、それぞれの勘定科目に振り替えて減価償却します。車両運搬具、工具器具備品、土地(造成不要)の購入代金を先払いした場合には建設仮勘定ではなく前渡金で処理します。

(無形固定資産)
法律上の権利(特許権、借地権、地上権、商標権、実用新案権、意匠権、鉱業権、漁業権など)、ソフトウェア、のれん(他社を買収した際の買収額と買収した企業から承継した純資産額を上回る金額)をいいます。「無形」だけに外部者への説明に苦慮します。具体的な説明ができることは当然として、取得時の契約書や領収書をすみやかに提示できるようにしておかなければなりません。無形固定資産で減価償却をするものについては、勘定科目の金額は取得代金から減価償却費相当額を差し引いた金額となります。

(投資その他の資産)
「他社の支配」「長期の資産形成」を目的に長期にわたって保有する資産、その他、流動資産、有形・無形固定資産、繰延資産以外の資産をいいます。
投資有価証券
株式、公社債などを短期の売却益の獲得が目的ではなく、他企業の支配、関係強化、長期的な資産形成を目的に購入した場合に用いる勘定科目です。
出資金
組合、信用金庫の出資金、会員権などをいいます。これらは、取引条件として、取引を有利にするため保有します。
差入保証金
営業取引、不動産の賃貸借の際に差し入れる保証金や敷金で、契約終了時に返還されるものをいいます。
長期貸付金
事業年度終了の翌日から数え1年を超えて貸付を行う場合に用います。
長期前払費用
前払費用のうち事業年度終了の翌日から数え1年を超える部分をいいます。信用保証協会へ支払う保証料(契約時に数年の保証期間分を一括払いする)はこの勘定科目で処理します。いわゆる「法人税法の繰延資産」である「建物を賃借するための権利金等」「公共的施設などの負担金」「宅地開発等に際して支出する開発負担金等」が長期前払費用で処理されていることがあります。

(繰延資産)
将来に効果が及ぶために繰り延べる費用(プールしておく費用)です。前払費用はいまだサービスの提供を受けていませんが、繰延資産はサービスの提供や物品の使用や消耗はしています。「将来の効果」は大変不透明でその判断には主観が介入しますので、多額の繰延資産を計上する場合には十分な説明ができるようにしておく必要があります。繰延資産には下記のようなものがあり、減価償却をしなければなりません。
創立費
会社設立に当っての定款作成費用、登記費用などです。
開業費
会社設立後、営業開始までに特別に要した費用のことで、調査費や広告宣伝費などです。