税務調査
2020/9/29
個人事業者(事業所得)の税務調査
◆税務調査は断ることができるのか?
誰しも税務調査など受けたくはありませんが、調査対象に選定されてしまった以上は仕方がありません。税務署は調査対象に選定した理由を教えてはくれませんが、調査が進行すれば必ずわかります。それは、税額を過少に申告している疑いがあるからです。どの部分を疑っているかもはっきりとわかります。
調査の日時や場所については希望を聞いてもらえます。日時は平日の日中です。場所は納税者の自宅か事業所ですが、人目につく店頭、事業とは無関係な家族の部屋などは避けてもらうことができます。
◆何を調べられるのか?
事業所得が正しく計算されているかを調べられます。事業所得は「収入(売上)−必要経費(仕入と諸経費)」として計算されますが、この計算が正しいかを調べられます。これを調べるために、帳簿とその基資料(預金通帳や領収書など)を調べられます。
事業所得の計算以外では、所得控除(配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、医療費控除その他)や税額控除(住宅借入金等特別控除額その他)などが間違っていそうな場合には、これらの計算根拠を調べられます。
◆追加で納税が必要となるケース(修正申告)
調査の結果、申告した税額が少ないことが判明した場合には、修正申告で正しい税額に修正し、当初申告(確定申告)での税額との差額を納めなければなりません。この修正申告という手続に関しては調査官から詳細な説明があります。「収入(売上)が・・・円漏れています」、「経費が・・・円二重に計算されています」といった具合です。もし、調査官の指摘が間違っている(税額を過少に申告している理由には該当しない)場合には修正申告する必要はありません。
◆加算税と延滞税(税務調査のペナルティ)
税務調査で修正申告をした場合には、追加納税分に加え「加算税と延滞税」というペナルティも払わなければなりません。これは、「税額を過少に申告したこと」と「遅れて納付すること」に対するペナルティです。
◆調査が長引くケース(事実関係が明らかにならない)
税務調査が長引く場合があります。どのような場合かというと、調査すべき事項についての事実関係が明らかにならない場合です。調査すべき事項についての証拠が残っていない、調査対象者が資料の提示を拒む場合がそうです。一向に調査が進展しない場合には、税務署は別の方法を検討します。別の方法とは、調査対象者以外から証拠を入手するという方法です(反面調査など)。
◆反面調査(取引先からの信用を失うこともある)
反面調査、これも嫌です。取引先に調査官が赴いて、調査対象者の記録と照合作業をするという手法です。調査対象者の記録で「買った」とあれば、取引先の記録には「売った」とあるはずです。取引先の記録で「買った」とあれば、調査対象者の記録に「売った」となければなりません。
◆税務署独自の情報網(裏切り者?の出現!)
税務署は独自の調査網を張り巡らして、日々課税に関する情報を収集しています。この情報が絶対的に正しいとは限りませんが、相当強力な証拠であることは確かです。特に、取引先や従業員が提供した証拠はそうです。「あいつ、裏切ったな!」ということもあります。
◆推計値による決着(推計課税)
調査官が懸命に調査をした結果、必要な証拠が入手できなかったけれども、調査対象者が明らかに過少申告している場合があります。この場合、税務署としても「証拠がないから許してあげましょう」というわけにはいきません。そこで、推計値により「あるべき税額」を計算し、当初申告した税額との差額の納税を調査対象者に求めるという方法がとられます。「推計課税」という方法です。これは申告納税制度の理念には反しますが、こうしなければ国家は本来得られるべきであった税収を失うことになります。
推計値の計算方法は様々です。しかし、基本的には調査対象者と同種の納税者の平均値が採用されますので、調査対象者の個別事情はほとんど考慮されません。要するに、「真面目に帳簿をつけるよりも・・・(笑)」とはならないということです。
◆地方税(自動的に計算される)
主に税務調査を行うのは、国税に関する役所である税務署です。地方税は国税の計算結果を受けて計算されますので、税務署が発見した修正事項はそのまま地方税にも当てはまります。修正申告の内容は、当初の申告と同じように税務署から地方(都道府県と市町村)へも報告されます。
申告していないことが税務署にばれた
以下は個人(事業主および一般個人)が、申告する義務があるのに申告していなかった場合の話です。申告をしたけれども税額が不足していた場合とは違います。
◆個人事業者が申告をしていなかった場合(数年分まとめて指摘される)
○どうしてばれたのか?
原因は様々です。店舗やサイトの存在、税務署に集まってきたデータ、密告などが考えられます。収入というのはそれを「支払う相手」がいるわけですから、その相手と支払ったことを「隠すという約束」をしていない限りは必ずどこかでばれてしまいます。また、約束していても「裏切り」はあります。
○なぜ、もっと早く指摘しなかったのか?
税務署が申告漏れであることの確証を得るのに相応の歳月を要するからです。また、税務署の事務処理上、数年分まとめて指摘するほうが効率的であるからです(毎年指摘するのは件数からして不可能)。
○税務調査が行われる
個人事業者が申告をしていなかった場合には税務調査が行われ、申告に関する諸数値(収入や必要経費など)を明らかにされ、その数値で申告するように指示されます。
○無申告加算税と延滞税(申告していなかったことのペナルティ)
申告をしていなかった場合、本来の税額に加えて「無申告加算税と延滞税」というペナルティを納めなければなりません。「申告していなかったこと」と「納付が遅れたこと」に対してのペナルティです。
○途中から申告している場合
たとえば、開業5年で4年目以降から申告している場合、1年目から3年目の分を申告しなければなりません。ただし、このような場合も税務調査は1年目から5年目について行われますので、すでに申告している4・5年目に不足税額がある場合には「修正申告」をしなければなりません。
○課税されない年度の扱い
課税されない年度については申告の必要はありません。
【不動産賃貸収入を申告していない場合】
上記と同じような手順になりますが、賃貸物件の件数が少なく収入も少額な場合には、税務調査ではなく電話や書面の指摘のみで、後は自主的な申告で済む場合もあります(呼び出される場合はあります)。
◆一般個人が申告をしていなかった場合
○よくある事例
サラリーマンの副業(給与その他)、不動産譲渡、満期保険金の受取りなどがあります。
○どうしてばれたのか?
税務署に集まってきたデータ、密告などが考えられます。
○収入を得た翌年にばれることが多い
一般個人の申告漏れは、収入を得た翌年にばれてしまうことが多いです。*1年分(申告書の提出は*2年3月15日まで)の申告をしていない場合、*2年の秋ごろまでにはばれます。税務署は*2年の夏ごろまでに、*1年分の課税データの大部分は収集を終えますので、誰が何を申告していないかを把握できるのです。
○税務署に呼び出される
一般個人で税務調査が行われるのは、多額で複雑な案件に限られます。ほとんどの場合、電話あるいは書面で税務署から呼び出され、その場で申告書を作成し提出して終わりです。「貴方は・・・について申告漏れをしていますので、・・月・・日に関係資料と印鑑を持参のうえ来署して申告書を作成し提出してください」といった具合です。
○無申告加算税と延滞税(申告していなかったことのペナルティ)
必要であるのに申告をしていなかった場合、本来の税額に加えて「無申告加算税と延滞税」というペナルティを納めなければなりません。「申告していなかったこと」と「納付が遅れたこと」に対してのペナルティです。