築山公認会計士事務所(大阪市北区与力町1−5与力町パークビル7F)

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主な帳簿の作成と試算表
(内容)2014年7月16日現在

≪帳簿体系の確立≫

帳簿を作成するに先立ち、まずは自社に適した「帳簿体系」、すなわち作成すべき帳簿の種類と内容、さらには誰に作成を任せるかを検討しなければなりません。多くの企業が長 年の試行錯誤の後に自社に最適な帳簿体系を確立していますので、あせりは禁物です。また、「骨折り損のくたびれ儲け」(余計な作業をしてしまう)とならないように気をつけなけ ればなりません。

一方、昨今では闇雲な経費削減から必要な帳簿までも作成していないケースが目立ちます。経理業務の不備はすぐさま問題化しない場合もありますが、問題化した時点では手遅 れという場合もありますので、「省力化」と「手抜き」の違いは十分認識してください。

帳簿体系の確立にあたり一般的に考慮すべきことは次のとおりです。

1.資金の流れ

企業の資金は次のとおりに流れています。
(1)資金調達→(2)財貨・用役を生み出すための資金投下(調達資金の流出)→(3)財貨・用役の販売→(4)投下資金の回収→(5)資金の再投下

帳簿には、この資金の流れを「漏れなく」「事実をありのままに」記録しなければなりません。そして、最終的な結果として「損益計算書(一定期間における(2)と(3)の関係)」と「貸借 対照表(一定時点における(1)の状態)」を作成しなければなりません。

そこで、まずは備えなければならない帳簿は、資金の流れの記録である下記の「金銭出納帳」と「預金出納帳」であることをご理解いただけるかと思います。

現行会計は、いわゆる「発生主義会計」を採用しており、費用(上記の(2))や収益(上記の(3))を入出金にかかわらず(入出金に前後して)発生の時点で計上します。そこで、費用 に関しては「買掛金」が、収益に関しては「売掛金」が発生します。これを把握するためには下記の「売掛帳」と「買掛帳」が必要です。

2.組織(管理体制)との関連

企業活動は一定の秩序や組織のもとで行われています。上記1の(1)は経営者、(2)〜(4)の概略は経営者が決め具体的な行動は社員に委譲、(5)は経営者といった具合に、 企業によって様々です。

記帳はその行動を行った者や部署が行うことが一般的です。(2)つまり買掛帳は仕入担当者、(3)と(4)つまり売掛帳は販売担当者が行うのが通常です。また、(1)〜(5)の背後 では、現金(預金)が動いています。これについては、仕入担当者や販売担当者以外の者が管理することが一般的です。なぜならば、特定の者に業務を集中させるとミスの発見が 困難であるとともに、不正(横領)が発生する可能性が高くなるからです。

3.勘定科目と仕訳

貸借対照表と損益計算書は各勘定科目から構成されます。記帳にあたっては勘定科目への分類と集計を可能にするような情報、つまり仕訳に必要な情報を記載しなければなりま せん。金銭出納帳の摘要欄に入出金の相手先や内容を記載するのは、個々の入出金を勘定科目ごとに分類集計するためです。

4.第三者の検証可能性

帳簿は、後日、第三者がその真実性や正確性を検証できるように作成しておく必要があります。これは、税務署の税務調査、公認会計士監査(公開企業の場合)などの外部者の 検証に対してだけでなく、内部管理上も必要なことです。

≪帳簿の具体的な作成方法≫

【資金の流れの把握】

1.領収書・・・

領収書は、経理業務の代名詞のように崇拝(?)されています。領収書は出金の事実や内容を証明するための書類です。しかし、領収書は出金の事実や内容を証明する唯一絶対 の手段ではなく一つの手段に過ぎません。簡単に偽造、改ざんが行えるからです。出金の事実や内容は、資金の流れ、事業内容、規模その他を多面的に検討し判断されます。「領 収書さえあれば・・・」という安易な考えは大変危険です。

2.領収書の内容

発行会社の正式な社印が押されているものから、レシート、メモ書きまでと様々です。なお、仕入代金や諸経費を銀行振込みで支払った場合は銀行が発行する振込金受領書が領 収書となります。

領収書と呼ぶからには、次の事項が記載されたものを入手したいものです。
(1)日付
(2)宛先
(3)金額
(4)領収内容
(5)発行者名とその所在地

3.領収書が無い

(1)領収書の入手を忘れた、紛失した場合
至急発行してもらってください。相手先が拒む場合があります。そのときは帳簿に出金内容を明瞭に記載し、領収書に代わる書類(請求書、納品書、注文書など)を残しておくしかあ りません。

(2)領収書が無いのが当然の場合
・電車賃
利用者と交通経路を記載した記録(金銭出納帳、旅費明細、出金伝票など)を残しておきます。
・販売機での購入(ジュースなど)
いつ、どこで、誰がという記録(金銭出納帳、出金伝票など)を残しておきます。
・香典、祝金
案内状やお礼状を残しておきます。
・預金口座振替で領収書の発行が省略されているもの(保険料、月会費など)
通帳は当然として、毎月の振替金額を取り決めたときの契約書を残しておきます。

4.領収書の区分方法

通常は月ごとに、次のいずれかの方法で区分します。
(1)現金払いと銀行振込み
(2)仕入代金と諸経費
(3)締日支払とその都度支払分

自社に一番あった方法を選択してください。なお、租税公課関係(税金、社会保険など)は、後日、金融機関や役所への提示が必要な場合がありますので区分けしておくのが賢明 です。

5.領収書の保管方法

一般的にはスクラップブックなどに貼り付けて保存します。しかし、この方法では後日取り外しの必要が出た際に不便です。

(1)紛失が防止されている
(2)後日(第三者が)再確認ができる
(3)帳簿との相互関連がたどれる

以上の条件を満たす方法ならば、どのような方法でもかまいません。

6.請求書と領収書

領収書は代金総額に対して発行されるのに対して、請求書には明細がついているのが普通です。その意味で、請求書と領収書はセットと考えるとよいと思います。

7.契約書

領収書と並び称せられる経理業務の代名詞です。契約書さえあればよいというものではありません。しかし、外部者、特に金融機関や役所は「形式」を尊重します。中小零細企業の 場合、役員やグループ会社との取引(特に不動産や金銭の貸借)の契約書が省略される傾向にあります。契約書がなくても取引上の実害はないかもしれませんが、できる限り作成 してください。

8.金銭出納帳(現金出納帳)とは

個々の現金(紙幣と硬貨)の出入りと結果としての現金残高を記載した帳簿です。これも、領収書と並び大変重要視されています。しかし、その割に中小零細企業では記帳が不正 確なことが多く、最悪の場合は全く作成されていない場合もあります。最大の理由は、「現金」という概念が希薄だからです。

小売業などを除き、会社の現金を一定の場所(金庫など)に保管していることはまれです。金銭出納帳は、その残高を実際の現金残高と照合し一致を確かめることで初めて正確な 帳簿となるのですが、これがそう簡単にはできません。

金銭(預金)出納帳の記入例(PDF)

9.金銭出納帳の記帳内容

小売業以外の場合は次の事項が一般的な記入事項となります。

(1)入金欄
・銀行預金からの引出し金額
銀行預金から現金を引出し、手持ちにした場合の金額です。特に処理が難しいのは、銀行預金から引出したその場(銀行の窓口)や帰り道に、仕入代金などを振り込んだり支払っ たりした場合です。引出し金額全てをその場で振り込んだ場合は、金銭出納帳に記入する必要はありません(仕訳で必要な相手先などは預金出納帳や振込証控で確認します)。問 題は、引出し金額の一部を振り込んで残額を手持ちとした場合です。簡単なのは引出した全額を手持ちにした「扱い」にした後に、手持ち現金から振り込んだとする方法です。振り 込んだ金額は出金欄に記帳します。
・売上代金の現金集金額
集金後直ちに預金に預けた場合は金銭出納帳の記帳は不要です。小口の経費の支払手段として手持ち現金としている場合は金銭出納帳に記帳します。
・受取った小切手
理論的には現金ですので、金銭出納帳に記入しなければなりません。しかし、速やかに銀行預金へ入金している場合は金銭出納帳への記載は省略してもかまいません(預金出納 帳に記帳します)。

(2)出金欄
現金で支払った仕入代金や諸経費を記入します。記帳は、領収書や振込証控の一枚単位で行います。そうでないと仕訳ができないからです。

10.金銭出納帳のチェック

とりあえず記帳して次のようになった場合は、原因を追求してください。

(1)マイナスとなる場合
まずは入金欄の記帳漏れが考えられます。銀行預金からの引出しと売上代金の現金回収を再チェックしてください。それでも、現金がマイナスとなる場合があります。「役員借入 金」です。中小零細企業では会社の資金が不足した場合、役員が会社に個人の資金を提供するのが普通です。この役員借入金の入金処理を金銭出納帳でしていない場合は、金 銭出納帳の残高がマイナスとなる場合があります。役員借入金の金額を正確に把握することはそう簡単ではありません。しかし、可能な限りの記憶と個人名義の預金通帳などをた どり社長さんが決めてください。なお、出金欄が二重記入などで過大になっている場合も要チェックであることはいうまでもありません。

(2)考えられないほどプラスとなる場合
出金欄の記帳漏れが考えられます。金銭出納帳の記帳は毎日行うのが原則です。しかし、現実には1ヶ月分程度をまとめて記帳することがあります。当然、領収書はあちこちに散 らばっていますのでくまなく集めるしかありません。なお、入金欄が二重記入などで過大になっている場合も要チェックであることはいうまでもありません。

11.金銭出納帳の日付

理論的には会社の現金が増減した日付となります。例えば、金曜日の夜に社長さんが取引先の接待費用をポケットマネーで払い、月曜日に会社の金庫から現金を引出した場合 は、月曜日の日付で記帳します。そうでないと、金曜日の最終現金残高と金銭出納帳の残高が一致しないからです(注)。しかし、現金管理が十分でない場合は、領収書の日付で 金銭出納帳を記帳しても問題ありません。費用は領収書の日付で発生しているからです。

(注)金曜日が事業年度末の場合は、接待費用は「未払金」となります。

12.金銭出納帳の摘要

入出金の相手先、内容を記入してください。

(入金の例)○○工業、5月分入金
(出金の例)レストラン○○、△△社社長と打ち合わせ

領収書やその他の帳簿との関連が明らかでその内容が説明できる場合は、摘要の記入を簡略化してもかまいません。

(例)レストラン○○

13.金銭出納帳の記帳を楽にする方法

現金払いや集金を減らすしかありません。現金払いが多い飲食代、ガソリン代などはできる限りカードやツケにすることです。また、売上代金の集金や給与・仕入代金の支払いも振 込みにするのが「近代的」ではないでしょうか。

14.預金出納帳(銀行帳)の記帳

税務署などの外部第三者は銀行預金については、絶対的な信頼を寄せます。しかし、預金通帳だけでは入出金の内容を十分に説明できない場合があります。また、通帳だけでは 仕訳を起こすことができません。

預金の出し入れを行う際には、次の情報を預金出納帳に残しておく必要があります。
(1)売上代金が振り込まれた際にこちらが負担した振込手数料(振込先名は表示されているのが通常です)
(2)振り込んだ際の相手先名(銀行によっては通帳に表示されている場合があります)
(3)入出金内容が表示されていない場合はその内容
預金取引が少ない場合は、あらたまった形式で預金出納帳を作成する必要はなく、通帳へのメモ書きで十分です。

(注)預金出納帳は、銀行別、預金種類別に作成します。

金銭(預金)出納帳の記入例(PDF)

【販売活動の把握】

1.売掛帳(売上帳)の記帳

誰に指示されることなく作成している帳簿です。これがなければ得意先への請求ができず、会社が成り立たないからです。また、無いはずがない帳簿ともいえます。記載内容は業 種にもよるでしょうが、次の事項を得意先別に記載します。

(1)請求金額(個々の納品別)
(2)入金金額と入金方法(振込、手形、現金、相殺など)
(3)未入金残高

売上高は発生時点で計上しなければなりません。発生とは代金の入金が確実となった時点をいいます。それは、出荷(納品)した時点でしょう。売掛帳に請求金額として記載した金 額が売上高になります。

(1)の請求金額は、注文書、納品書控、得意先の受領書などと整合していなければなりません。(2)の入金金額は、預金通帳、領収書控、金銭出納帳、受取手形記入帳などと一 致していなければなりません。

2.領収書控

税務署は領収書控の提示を要求してきます。これは現金集金の記帳漏れが多いという経験則に基づいており、それを発見するため入金内容を網羅している領収書控を一つの手 掛かりとしているのです。

「信頼関係があるので領収書は発行していない」「控は残していない」、大変不自然な答えです。数年後、再び調査があると考えてください。

3.売上高の把握

売上高は発生主義により把握しなければなりません。発生とは販売の時点です。販売の時点で収益が「実現」したと考えられるからです。しかし、販売の時点が何時であるかは、業 種、業態、取引条件などにより異なります。

企業の販売活動は頻繁に行われています。特に、多品種を多数の得意先に販売している場合は一定期間の取引は相当数になります。販売活動は次のとおり多段階のプロセスに 分解されますので、そのプロセスから個々の売上高を拾い出す作業は大変な労力を要します。

販促活動→受注(取引内容と条件の決定)→出荷(製造)手配→出荷→納品→請求→代金回収→アフターサービス

上記のプロセスには膨大な事務作業が伴います。営業管理、営業事務などと呼ばれ、経理業務(試算表作成)と並ぶ企業の一大事務作業で、さらには経理業務や購買業務との連 携も必要となります。

4.売掛金一覧表

特定月の売掛帳から得意先別の(1)請求金額、(2)入金金額、(3)未入金残高合計を書き出した売掛金一覧表を作成することが普通です。経理担当者や会計事務所はこれをも とに仕訳を起こします。

5.締日

販売業務については「締日」を設けるのが普通です。たとえば毎月末、毎月20日などの区切りで一定期間の売上高と締日時点の未入金残高(売掛金)を把握します。

6.受取手形記入帳の記帳

市販の帳簿で十分かと思います。記入は、受取日順で行います。期日決済、裏書、割引の顛末記入を忘れないでください。この帳簿は売掛帳や買掛帳、さらには預金出納帳に影 響してきます。なお、決済日順に記入する場合もありますが(ある意味で実践的)、仕訳は「受取」「裏書・割引」「決済」の順となりますので受取日順、決済日順の双方が必要です。

【購買活動の把握】

1.買掛帳(仕入帳)の記帳

記載内容は業種にもよるでしょうが、次の事項を仕入先別に記載します。
(1)請求金額(個々の納品別)
(2)支払金額と支払方法(振込、手形、現金など)
(3)未払い残高

仕入高は発生時点で計上しなければなりません。発生とは代金の支払義務が確実となった時点をいいます。それは、納品された時点でしょう。買掛帳に請求金額として記載した金 額が仕入高になります。

(1)の請求金額は、請求書、注文書控、納品書などと整合していなければなりません。(2)の支払金額は、預金通帳、領収書控、金銭出納帳、支払手形記入帳や受取手形記入帳 の裏書記録などと一致していなければなりません。

2.仕入高の把握

これも売上高同様に発生主義により把握しなければなりません。仕入高の発生とは納品の時点です。

企業の購買活動は次のプロセスに分解されます。

商品受注(見込み)→発注(取引内容と条件の決定)→納品(検品)→請求→代金支払

販売活動と同様、上記のプロセスには膨大な事務作業が伴います。購買管理、購買事務などと呼ばれ、経理業務(試算表作成)と並ぶ企業の一大事務作業で、さらには経理業務 や販売業務との連携も必要となります。

3.締日

【販売活動の把握】4.締日と同様に購買業務においても締日を設けて、一定期間の仕入高と締日時点の未払い残高を把握しなければなりません。

4.買掛金一覧表

特定月の買掛帳から仕入先別の(1)請求金額、(2)支払金額、(3)未払い残高合計を書き出した買掛金一覧表を作成することが普通です。経理担当者や会計事務所はこれをもと に仕訳を起こします。

5.支払手形記入帳の記帳

市販の帳簿で十分かと思います。記入は、振出日順で行います。この帳簿は買掛帳や預金出納帳に影響してきます。なお、決済日順に記入する場合(ある意味で実践的な方法) もありますが、仕訳は「振出」「決済」の順となりますので、振出日順、決済日順の双方が必要です。

6.商品受払簿

個々の商品の仕入と出荷(売上)の数量と単価を記帳し、その残高(数量×単価)を記載した帳簿です。年度末数量については実地棚卸(実際に商品を数えること)を行い、その結 果を帳簿と突合せ帳簿の残高を実地棚卸の残高に修正しなければなりません。中小零細企業で商品受払簿が完備されていることはごくまれです。そんなことから、期末棚卸数量 や金額を帳簿記録で把握することはできず、実地棚卸によっているのが実情です。正確(誠実)な実地棚卸を心がけてください。

【その他別途把握すべき活動】

1.給与台帳の記帳

市販の台帳で十分かと思います。従業員ごとに支給総額(基本給や交通費などの諸手当を含む)、控除項目(源泉所得税、住民税特別徴収、社会保険料・雇用保険料の従業員負 担部分など)を記入します。全従業員分を月単位で集計したものが仕訳の基礎資料となります。また、各従業員分を年度集計したもの(1から12月)が年末調整の基礎資料となり ます。(役員について給与台帳が作成されていないことがありますが、必ず作成してください。)

給与台帳は、従業員の実在性や勤務条件を示すための重要書類です。給与支給明細(給与を渡すときに同封する明細)の控では、全従業員分の支払状況と金銭出納帳や預金通 帳との関連が十分確認できませんので、おっくうがらずに作成してください。なお、中小零細企業の場合、給与の支給が現金払いのことが多いと思います。給与の受領簿を作成し ておいてください(給与台帳の受領印欄でも可)。また、従業員数が多い場合(特に毎月の給与が変動するパートやアルバイトが多い場合)は給与計算ソフトの導入を検討してくださ い。大変便利です。

2.固定資産(減価償却)台帳の記帳

決算のためには、個々の資産ごとに次の情報が必要です。
(1)資産名
(2)取得年月日
(3)取得価額(購入価額)
(4)耐用年数
(5)減価償却方法

製造業以外はめぼしい固定資産はないかと思いますので、あらたまった形式の固定資産台帳は不要かと思います。しかし、製造業の場合、設備状況や能力が会社の重要な評価 の尺度となります。税務署や取引先などを工場に案内し、固定資産台帳を提示して説明しなければならないこともありますので正確に作成してください。

【記帳の共通ルール】

1.帳簿の訂正と行の追加・削除

記帳に不慣れな場合、帳簿の訂正が頻発します。その際、一から帳簿を書き直す必要はありません。訂正箇所を二重線で消し訂正印を押印し、正しい金額をその上部に記入してく ださい。また、残高部分も自動的に訂正となります。不慣れなうちは、数行程度で残高を算出し検算をしてください。

一定期間分を記帳後、行の追加が必要となることがあります。この場合は、最終行に追加するしかありません。帳簿の行は日付順ですので、大変奇妙な帳簿となってしまいます。 徐々に精度を向上させてください。なお、行削除の場合は最終行にマイナス記入することです。

(注)月ごとの帳簿締切りの際に発見された訂正や追加・削除は上記の処理でかまいません。しかし、数ヵ月後発見された場合は、発見した月の帳簿で訂正(当初記入分をマイナス 記入後正しい金額を記入)や追加をするしかありません。

2.表計算ソフト(エクセルなど)の利用

金銭出納帳や預金出納帳は、表計算ソフト(エクセルなど)で簡単にその様式が作成できます。是非とも活用してください。そうすれば、訂正や追加が簡単にできます。ただし、表計 算ソフトで作成した帳簿は、「電子帳簿保存法」に対応していない限り紙に出力しておく必要があります。

3.会計事務所に渡す帳簿

以上の帳簿が必要です。いずれも簿記会計の知識は不要です。また、以上が揃っていれば、簿記会計の知識が乏しくても会計事務所のサポートがあればなんとか財務会計ソフト の導入が可能です。

どうしても揃わない場合は、極めて不正確な決算しかできません。「調査での追徴ゼロ」「節税」「銀行対策」「融資申込みに当っての試算表の緊急作成」を会計事務所に期待しては いけません。

4.名義

領収書、請求書、契約書、預金口座などの名義は、会社名義でなければなりません。しかし、名義さえ会社であればよいというものでもありません。また、例え代表者などの個人名 義であっても、それが実質的には会社の行為であると認められる場合はそれでもかまいません。だだし、できる限り名義と実質は一致させておかなければなりません。「会社名義だ から大丈夫」「個人名義だからだめ」は安易な考えです。

(1)会社名義でなくとも問題がない場合
個人から法人成りした会社の電話や事務所の賃貸借契約が個人名義のままでも、それらを会社が使用し代金を会社が支払っている
(2)会社名義でも問題がある場合
会社名義で役員が家族旅行をした

5.振替伝票

仕訳を記入する用紙です。簿記では仕訳を最小の単位として、勘定科目別に分類集計していきます。集計プロセスが総勘定元帳で集計結果が試算表です。現金取引の入出金に 特化した伝票を「入金伝票」「出金伝票」といいますが、「振替伝票」でも同様の機能は果たせます。会計事務所はお客様に中途半端な振替伝票を記入されると大変困ります。あえ て書けるようになる必要はありません。

≪試算表≫

1.月次決算とその必要性(月次試算表の作成)

法的(税法、会社法)には、決算数値(貸借対照表と損益計算書)は年に一度算出すればよいことになっています。しかし、実務上は月次決算を行い、年に一度作成する貸借対照 表や損益計算書とほぼ同等の数値を算出します。なお、形式的には月次決算は「試算表」により行います。

月次決算の機能とその必要性は次のとおりです。
(1)月次で経営数値を把握できる
経営数値には鮮度が必要です。月次で経営数値を把握するのは当然のことです。
(2)年度数値の予測が立つ
一事業年度が終了すれば、納税や配当を行わなければなりません。それへの資金準備は早期に行っておく必要があります。年度予測は、経過した月次の実績値と以後の予測の 上に成り立ちます。
(3)経理処理の誤りを早期に発見できる
年度決算の基となる個々の取引は膨大な分量となり、その作業の過程でミスは不可避的に発生します。少しでもミスを防止するためには業務を平準化しておく必要があります。

2.月次決算の方法と実際

基本的には、年度決算と同様に行わなければなりません。しかし、実務上は次の項目については簡略化した方法で行われています。

(1)在庫の把握
棚卸を全く行わない、あるいは推定値で行う。
(2)減価償却
減価償却は行わない、あるいは年度予想額の1/12を計上する。
(3)締日以降月末までの売上と仕入の計上
省略する。

3.月次決算の確定

遅くとも翌月10日には完成していなければなりません。しかし、多くの中小零細企業は月次決算が遅延しており、最悪の場合は全く行われていないこともあります。なお、金融機関 は月次決算を重視します。年度決算は「過去の情報」にすぎず、タイムリーな月次決算を要求してきます。特に、前事業年度から半年以上経過している場合は、必ず月次決算数値 の提出を求めてきます。

≪まとめ≫

帳簿体系は必要十分性を備えていなければなりません。 

企業は生き物です。帳簿体系は企業を取り巻く環境の変化に応じて変化してゆきます。帳簿の不備、不足、余分、重複などを常にチェックしておく必要があります。

帳簿体系は、諸法規(会社法、法人税法など)に従う必要があります。「当社の論理と方針」のみではどうにもならないことがあります。やはり、会計事務所という専門業者の活用も 必要ではないでしょうか。


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公認会計士 築山 哲(日本公認会計士協会 登録番号10160番)


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