扶養控除等申告書と保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書(記入方法)
正確に書いたつもりでも間違うことはあります。
しかし、会社は書き直してはくれませんよ!
あなたにしかわからないことも多いのです。
(内容)2012年8月4日現在
記入にあたって間違いの多い例を紹介させていただきます。
「適当に書いて提出すれば、あとは会社が何とかしてくれる・・・」は甘いです!
なぜならば、記入事項の多くはプライバシーにかかわることで、会社はその内容について必要以上に踏み込めないからです。
★扶養控除等申告書★
配偶者を扶養親族の欄に記入している。
同居、老親等を丸で囲むのを忘れている。
障害者、寡婦、寡夫、勤労学生を明記していない。
所得(収入>所得)の見積額の計算を間違っている。
所得の金額が書かれていない(所得がゼロの場合には「0、ゼロ、なし」などと明記しておくことです)。
■控除対象配偶者や扶養親族の判定の時期
年末時点で行います。ですから、扶養控除等申告書を提出した後に配偶者や扶養親族に変動があった場合には、速やかに会社に連絡しなければならないということです。
配偶者や扶養親族が年の途中で死亡している場合には、その死亡の時期で判定します。つまり、配偶者や扶養親族の年の始めから死亡の時点までの合計所得金額が38万円以下であるならば、配偶者控除や扶養控除の対象とすることができるということです。
■配偶者や扶養親族の合計所得金額の計算
10種類の所得すべてを合計して計算します(所得控除を差し引く前の金額です)。ただし、一部の配当所得や譲渡所得は合計する必要はありません。
なお、所得の金額が最終的に確定するのは早くても翌年の1月以降ですので(例えば、給与所得の源泉徴収票が発行されるのは翌年の1月になる)、ここでは見積額を記入しておき最終確定額は翌年の1月以降に会社に報告してください(見積額と最終確定額のいずれによっても控除に変動がない場合には報告する必要はありません)。
■生計を一にする
「同居している」「扶養している」「姓が同じである」ということが「要件ではありません」(ただし、親族でなければなりません)。「生計を一にする」とは、平たくいえば「生活するための財布が同じ」ということです。「生計を一にする」の解釈は自己責任でしてください。会社は、あなたが用紙に記入したとおりに年末調整で所得控除(配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除など)をします。会社は、あなたのプライバシーに踏み込むことはできません。心配な場合には税務署に相談されることをおすすめいたします。
【控除対象配偶者や扶養親族の所得を証明するもの?】
年末調整で、控除対象配偶者や扶養親族の所得を証明する書類などは一切不要です。
◆ということは、ごまかせるの?
そうではありません。控除対象配偶者や扶養親族の所得は税務署に「筒抜け」なので証明書など必要ないのです。
年末調整を受ける人は、配偶者や扶養親族の所得を「税務署に報告されるとおりに」、扶養控除等申告書で報告しなければならないのです。その基データは、配偶者や扶養親族の勤務先が発行した給与明細や源泉徴収票なのです。
▼ばれなかったけど?
配偶者や扶養親族の勤務先が税務署に報告していない場合もあります。しかし、そのような企業の多くが「ブラック企業」であると考えて間違いありません。この件に関しては天国かもしれませんが、それ以外は地獄ですよ!
【夫婦いずれで子の扶養控除をするか?】
共稼ぎの夫婦に扶養控除の対象となる子がいる場合にはそのいずれで扶養控除をしてもかまいません(当然、いずれか一方でしか控除は受けられません)。いずれで扶養控除をするのが税金に関して有利になるかについては、税率の高いほうで控除をするということです。また、2人以上の子供がいる場合には双方に分けて扶養控除をすることもできます。
年度途中で扶養控除する側を変更することもできます。その場合には、双方が扶養控除等(異動)申告書を勤務先に提出し、一方では扶養親族の増加、もう一方では扶養親族の減少としておきます。なお、この場合、扶養親族が増加する側では年末調整で大幅な還付、減る側では大幅な追加徴収となることが予想されます。なぜならば、扶養親族変更前の毎月の給与では年末調整時点と異なる扶養親族数で源泉徴収をしており、それを年末調整で1年間を通して計算し直すからです。(年末調整でこの手続をしていない場合には確定申告をします。なお、確定申告をしてしまったならばもう変更はできません。)
●健康保険との関係
この件に関して問題となるのは勤務先で加入している健康保険との関係ですが、所得税における扶養控除は「生計を一にしていること」と「扶養親族の所得金額」が要件ですので、例えば、子の扶養控除は夫でしているけれども健康保険は妻側で加入していたとしても問題はないということです。
●親の扶養控除は兄弟(生計は別)の誰がするか?
この場合は二者択一という訳にはいきません。なぜならば、扶養控除の要件の一つである「生計を一にする」とは同じ家計で生活をしているということであり、属する家計は一つであるからです。ただし、親が属する家計が変更となった場合には「年度末に属する家計」で扶養控除をすることになります。また、生計の状況次第では、例えば、「父は兄」で「母は弟」で扶養控除することはできます。(介護保険制度ができるまではこの件でもめる兄弟が多かったです。要するに介護費用は兄弟が均等に負担しているのに扶養控除は兄弟の内の一人しかできなかったからです。)
【扶養控除等申告書で、「誰が」「誰に」「何を」申告するのか?】
扶養控除等(異動)申告書は、「誰が」「誰に」「何を」申告するものなのでしょうか?
【ご注意】以下では平成24年分の扶養控除等(異動)申告書を前提に説明をしております。
■所轄税務署長
所轄税務署長とは、給料を支払う会社などの勤務先を管轄する税務署の署長のことです。この記載欄があることから、扶養控除等(異動)申告書は税務署長宛てに提出するように思えますが、「○○殿」とはなっていませんので宛先は税務署長ではありません。
■給与の支払者の名称(氏名)との所在地(住所)
給料を支払う会社などの名称と所在地を記載します。これも、宛先は「○○殿」とはなっていません。
■あなたの氏名・あなたの住所又は居所
「あなた」とは給料の支払いを受ける人です。
■配偶者や扶養親族
記載欄の上に「あなたに控除対象配偶者や扶養親族がなく、かつ、あなた自身が障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生のいずれにも該当しない場合には、以下の各欄に記入する必要はありません。」との説明が書かれています。
扶養控除等申告書は給料をもらう人が書くことは明らかです。しかし、宛先は定かではありません・・・
★扶養控除等(異動)申告書は給料を支払う会社が保管しておきます
税務署には提出しませんが、税務調査の際には見せなければなりません。税務署は申告された配偶者や扶養親族に関する情報が事実どおりであり、それに基づいて年末調整がされていることを確認するのです。
★給料の支払いを受ける者は税務署に直接調べられることはありません
税務調査の対象は、給料を支払い源泉徴収と年末調整の事務作業をしている会社です。源泉徴収や年末調整に誤りのある場合の税務署に対しての責任は会社にあります。
★税額が不足する場合
扶養控除等申告書の記載事項に何らかの誤りがあり、税額が不足していることを税務調査で指摘されたとします。この場合、税務署に対して不足分を払うのは会社ですが、会社は給料の支払いを受ける従業員に不足分を請求することができます。
★保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書★
≪保険料控除申告書(左側)≫
控除額の計算(生命保険料控除、地震保険料控除)は会社に任せればいいのですので空欄にしておいてもかまいません(会社が添付の保険会社の証明書で計算します)。しかし、保険の契約者や保険金の受取人は正確に記入しておいてください(保険会社の証明書では明示されていないことが通常です)。
社会保険料は給料から天引きされている部分は記入する必要はありません(当然のこととして会社が把握しているからです)。自身で払った分(親族の分や自身が失業中に払った分)のみを記入してください。当然のこととして、会社が負担した社会保険料は控除の対象になりません。
■前の職場の社会保険料
前の職場の源泉徴収票に記載された金額となります。
■親族の社会保険料
本人(年末調整を受ける人)と生計を一にする「親族(配偶者や子)が負担することになっている」社会保険料で、本人が支払ったもの(本人の預金口座などから支払ったことが立証されなければなりません)は本人の社会保険料として控除することができます。ただし、保険料を負担すべき親族に所得がある場合には、その親族の所得から控除するほうが節税になる場合があります(家族・親族としての合計税額が少なくなる)。
【親族の給料などから天引きされている社会保険料】その親族が支払ったことになりますので控除することはできません。
≪配偶者特別控除申告書≫
収入と所得の違い(収入>所得)に注意することに尽きます。なお、この金額が見積額になるのは、上記の「★扶養控除等申告書★」の「配偶者や扶養親族の合計所得金額の計算」と同じです。
【控除額の計算は自分でしなければならないのか?】
それにしても保険料控除申告書の記入事項はあまりにも多すぎると思います。確定申告でも保険料の控除はできますが、その場合の記入事項は金額だけで、保険の具体的内容などは添付する証明書によることとなっています。保険料控除申告書はもっとシンプルにすべきであると思います。
●控除額の計算は自分でしなければならないのか?
会社によって違うと思います。
「あくまでも自己責任で計算してください(誤りがあっても会社は関知しません)」
「下手に記入されると訂正するのが面倒なので空白にしておいてください(証明書の添付だけでよいです)」
担当者におたずねになることをおすすめいたします。
●余分な証明書の扱い
控除限度額を超えて証明書を添付したとしても何の意味もありませんので(ゴミにすぎません)、余分な証明書は添付しないようにしましょう。社会人としてのマナーです!
●担当者や税理士(税理士に依頼している場合)が信用できない
年末調整作業は短期間に大量の事務作業をしなければならないことから誤った事務処理をしてしまうこともあります。また、担当者が年末調整に不慣れなこともあります。あまりにも信用ができない場合には、年末調整での保険料控除は見送り自分で確定申告をして手続をすることです。
●●詳しくは保険会社におたずねください!
それに限ります。
保険の税金(保険料控除だけでなく、満期保険金や死亡保険金などの扱い)に関しては、年末調整の担当者、税理士、税務署よりも保険会社のほうが比較にならないほど詳しいです。また、保険会社のサイトにも税金の扱いについて大変詳しく説明されています。
【まとめ】
●「会社が間違いを直してくれる」は甘い考えです(あなたにしかわからないことも多いのです)。
●配偶者や扶養親族の所得の計算には注意が必要です。
●「生計を一にする」の判断は自己責任でしてください。
徹底解説!「給料の税金」
確定申告のご依頼はこちらへ
大阪市北区与力町1−5