扶養控除等申告書と保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書(概略)
これがないとあなたの税額は正確に計算されません。
面倒がらずに正確に記入してください!
(内容)2012年8月4日現在
★扶養控除等申告書★
正確な給料の計算をするには会社と従業員の「信頼関係」、相互の正確でタイムリーな「情報の提供」を欠かすことができません。
給料の税金に関しては、扶養控除等申告書が何よりも大切です。会社からこれを記入し提出する指示があった場合には、面倒がらずに正確に記入し期日までに必ず提出してください。これを書いて会社に提出しなければ正確な「年末調整=最終的な年間の所得税の計算」はできません(当然、住民税も正確に計算できません)。
扶養控除等申告書は、自身の配偶者や扶養親族の状況を会社に知らせ、配偶者控除や扶養控除の有無や金額を決めるために提出します。なお、「配偶者や扶養親族がいない人」は、「いないことを知らせる」ために提出します。扶養控除等申告書を提出しておけば、年末調整だけでなく、毎月の給料から所得税が源泉徴収される際もそれを考慮した税額となります。
扶養控除等申告書は、毎年その年の最初の給料をもらうときまでに会社に提出します(会社から書いて提出するように指示があります)。ただし、この用紙は毎年年末に税務署が各会社に配付していることから年末に提出していることが通常です。つまり、平成○2年分の扶養控除等申告書は平成○1年の年末(年末調整のシーズン)に提出します。なお、途中入社した人は入社してすぐに提出します。
年の途中で配偶者や扶養親族に変動があった場合、つまり、増えた(控除の対象になった)あるいは減った(控除の対象でなくなった)場合には速やかに会社に報告してください。
【扶養控除等申告書を提出していない場合】
その会社では年末調整をしてもらうことはできません。つまり、最終的な所得税の税額が確定されないということです。また、毎月の所得税の源泉徴収は、配偶者や扶養親族を考慮しない税額(源泉徴収税額表の乙欄。税額が多くなりますよ!)で行われます。そして、自身で確定申告をして最終的な税額を確定しなければなりません。
【障害者控除が受けられる人の源泉徴収】
障害者控除のことを生命保険料控除などと同じく「年末調整でしかできない控除」であると考えている人がいますが、障害者控除(含む特別障害者)を受けられる人については毎月の給料から源泉徴収する際にもこれを考慮して行うことができます。
毎月の給料からの源泉徴収は「給与所得の源泉徴収税額表」に従って「扶養親族等の数」に応じて行いますが、障害者控除が受けられる人の場合にはこの扶養親族等の数に障害者控除の対象となる人数を加算することになります。(源泉徴収税額表の欄外にそのように書かれています。)
例えば、妻が控除対象配偶者、扶養親族は子一人でその子が障害者控除の対象であるならば「扶養親族等の数」は「3人」ということになります。当然、毎月の給料から源泉徴収される税額が少なくなります。つまり、年末調整まで控除を待つ必要がないということです。ただし、このためには年初に提出する扶養控除等申告書で障害者控除の対象であることを明記しておく必要があります。
賞与の場合も同じです。
★保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書★
これは該当する控除がない場合には提出する必要はありません。
毎月の給料からの源泉徴収では考慮されていなかった、生命保険や地震保険を考慮するために提出します。また、この用紙は配偶者特別控除(配偶者の年間の所得が38万円を超えている場合の控除)をするための用紙も兼ねています。
■会社に必要以上の個人情報を知らせたくない
年末調整をするために扶養控除等申告書や保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書を会社に提出すると、会社に重大な個人情報を知られてしまうことになります。しかし、例えば、次の手続でしたら年末調整をしないで自身で確定申告することができます。
●生命・地震保険料控除
契約している保険会社などを会社に知られたくない。
●住宅借入金等特別控除
住宅の名義、住宅ローンを借りている金融機関や残高を会社に知られたくない。
ただし、これらを確定申告したこと自体は会社に知られてしまいます。なぜならば、翌年の住民税の会社への通知でこれらの内容が判明するからです。なお、配偶者や扶養親族の氏名、年齢、所得などは正直に会社に知らせるしかありません。公的健康保険や社内の家族手当の関係があるからです。
■提出後間違いに気がついた
至急、会社に連絡してください。翌年の1月末まででしたら間に合います。それを過ぎると、自身で確定申告をして誤りを訂正しなければなりません。
■なぜ、年末調整で医療費の控除はできないのか?
なぜでしょうね?しかし、なんらかの理由はあると思います。
推測するには、医療費の内容は種々雑多で専門的な判断を要することから、それが控除の対象になるかを各源泉徴収義務者(会社など)に任せることができないからでしょう。また、年末調整の時点では医療費の総額が計算できないこと、源泉徴収義務者の事務負担が過重となることも理由ではないかと思います。(医療費控除のほか、初年度の住宅借入金等特別控除、雑損控除、寄附金控除も年末調整では行えません。)
年末調整でウソをついた・・・
ウソは必ずばれます。
ウソがばれても誰も助けてくれません(助けることができません)。
ウソをつく人の周りにはウソをつく人が集まります(類は友を呼ぶ)。
ウソをつくことによってあなたは信用を失います。
従業員、パート、アルバイトなど、年末調整を受ける立場の人が年末調整に関する事項について「ウソをついた」、つまり、自身の税額が少なくなるようなウソの情報を会社に伝えた場合には、次のようなプロセスで正しい税額との差額をあなたが負担しなければなりません。
【1】税務署から会社に連絡がある
年末調整は源泉徴収義務者である会社が行うことから、税務署は年末調整の内容に誤りがある場合には会社に連絡をします。要するに、年末調整でついたウソの内容は会社にも知られるのです。
税務署はどうやって誤りを見つけるのか?
「会社への税務調査」「税務署が独自に入手した情報」などから発見します。
【2】会社が不足分の税金を税務署に納付する
給料から源泉徴収しその税金を納付する義務があるのは会社ですから当然のことです。税務署は不足する税額の納付を、従業員、パート、アルバイトなどに直接要求することはできません。
【3】会社は不足分の税金をあなたの給料から強制的に天引きする
これは合法的な行為ですので拒むことはできません。会社は給料に対する正しい税額を源泉徴収する義務があるのです。
★勤務先が事前に間違いに気がつくべきでは?
そうかもしれません。しかし、年末調整に関する情報の中には、会社ではその真偽を確かめることができないものもあります。当然、会社は可能な限り間違いを発見すべきですが、すべての間違いを発見できないのです。
配偶者控除(扶養控除)の対象者であるからこそ扶養控除等申告書の提出が必要なのです!
「私は配偶者控除(扶養控除)の対象となっている者なので(課税されない所得水準なので)扶養控除等申告書を提出する必要はない」
よくある誤解ですが、必ず扶養控除等申告書を提出してください。配偶者控除や扶養控除を受けるには、その配偶者や扶養親族の所得金額が一定額以下である必要があります。それには、その配偶者や扶養親族の所得金額が年末調整によって確定されなければなりません。年末調整を行う前提は扶養控除等申告書を提出することなのです。
★控除対象配偶者や扶養親族の所得の証明
配偶者控除や扶養控除を受ける者は、「配偶者や扶養親族の『所得に関する証明書』の提出が必要なのか?」との質問を大変よく受けます。「証明書」の提出は必要ありませんが、後日、税務署は配偶者や扶養親族の所得を調査して控除対象の要件である所得の範囲内であるかを確認します。当然、限度オーバーであれば配偶者控除や扶養控除は取り消されます。
税務署が配偶者や扶養親族の所得を把握するメカニズム
会社は各従業員の年末調整の結果(給与の総額や所得控除など)を、翌年の1月末までに各従業員の住所地の市区町村に「給与支払報告書」を提出することにより報告しなければなりません。各市区町村が各従業員の住民税(地方税)を計算するために各会社に報告義務を課しているのです。配偶者や扶養親族の所得が税務署に把握されてしまう原因が、この「給与支払報告書」にあることをご理解いただけるかと思います。
世の中にはズサンな会社が存在し、「給与支払報告書」を提出していないことがあります。また、明らかな給与所得を事業所得(外注費などの名目)として処理している会社もあります(事業所得の場合には本人が無申告でいればすぐさま所得は表面化しない)。配偶者や扶養親族がこのような会社に勤務している場合には、「所得ゼロ」として違法に配偶者控除や扶養控除を受けることができます。
このようなことが高じて、社内に「配偶者や扶養親族の所得はごまかせる」「あの人はごまかしている」「だから、自分もそうしてほしい」との空気が蔓延する場合があります。
もし、会社が給与支払報告書を提出しなかった場合、配偶者や扶養親族が確定申告していない場合、配偶者や扶養親族の所得が把握されてしまうきっかけは次のとおりです。
・配偶者や扶養親族の勤務する会社に税務調査が行われ源泉徴収漏れ(年末調整の誤り)や無申告の所得が発見される。
・税務署あるいは市区町村役場が配偶者や扶養親族に所得がないのを不自然と判断し(当然確かな裏づけを入手します)、配偶者や扶養親族を呼び出す。
【まとめ】
●正確な扶養控除等申告書は正確な給料の計算の第一歩です。
●配偶者や扶養親族の有無にかかわらず扶養控除等申告書は提出しなければなりません。
●扶養控除等申告書を提出していない場合には乙欄という高い税率で源泉徴収され、さらに自身で確定申告をしなければなりません。
●会社に必要以上の個人情報を知られずにすむ方法もあります。
●年末調整でウソをついてもばれます。
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