年末調整=毎月の給料から天引きされている税金の精算(所得税の税率)

毎月の給料から天引きされている所得税は仮の税額です。

これを年末調整で精算しなければなりません。

 

(内容)2012年8月4日現在

 

毎月の給料から天引きされている(源泉徴収されている)所得税は「仮の税額」です。もっとも、仮の税額といっても、法律で定められた「源泉徴収税額表」に基づいて計算しています(国税庁のサイトで見ることができます)。

 

この計算は、給料をもらう人の、給料の額と所得控除の一部(基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除など)を考慮し、見込まれる年間の税額を各月の給料と賞与(ボーナス)に配分するような計算となっていますが、どうしても最終的な税額とは異なってしまいます。また、その人の年度途中の状況の変化によっては、次のとおり大幅に最終的な税額と異なる場合もあります。

 

(1)仮の税額が多い(還付となる)場合

一年間を通して毎月の給料が同額で、年度途中で扶養親族が増えた場合(途中の給料まで年度末より少ない扶養親族数を前提に源泉徴収しているので)

 

(2)仮の税額が少ない(追加徴収となる)場合

一年間を通して毎月の給料が同額で、年度途中で扶養親族が減った場合(途中の給料まで年度末より多い扶養親族数を前提に源泉徴収しているので)

 

年末調整でしか考慮しない要素もあります。その年に支払った保険料(生命保険、地震保険)、住宅ローンの残高(入居して2年目以降)です。これらのある人は、当然のこととして上記の(1)となります。

 

あなたの給与明細を確認してみてください!

 

「源泉徴収税額表」に基づいていますか?

毎月源泉徴収する所得税は、給料の総額(基本給や残業代など)から社会・労働保険料を差し引いた金額と配偶者・扶養控除の対象となる者の人数に一致する金額です。なお、通勤手当の非課税部分は給料の総額には含めません。

 

■毎月の源泉徴収と年末調整の関係

 

(A)年間の給料(含む賞与)の合計額から計算した最終的な所得税の額

(B)毎月の給料(含む賞与)から源泉徴収されてきた所得税の合計額

 

(A)を計算して(B)との差額を返金(還付)したり追加で天引きしたりする、つまり毎月の給料から源泉徴収している税額と最終的な所得税の額を精算する手続を年末調整といいます。

 

■年末調整は年内最終の給料を支払う際に行う

 

当然のこととして、このタイミングでなければ年間の給料の合計額が計算できず最終的な所得税の額も計算できないからです。

 

■医療費控除と住宅借入金等特別控除(初年度)

 

年末調整では行うことができませんので、自身で確定申告する必要があります。

 

■なぜ、源泉徴収するのか?

 

「年末調整をしなければ最終的な税額が決まらないのなら、毎月の源泉徴収をやめて個々人で確定申告すればいいのに?」と思われる方もいると思います。

 

所得税の源泉徴収(年末調整)は、税収の平準化や給与所得者の便宜のために行われるとされています。多くの給与所得者=サラリーマンは1か所からの給与所得しかなく、毎月の給料の支払いに際しての源泉徴収と年末調整で課税関係を終了させることが税務行政上も効率的であり、給与所得者にとっても自ら確定申告する手間が省けるからです。

 

■源泉徴収制度に理解のない会社や人とは関わらない!(ビジネスの鉄則です。)

 

源泉徴収は、特定の所得や特定の職業の者からのみ行うという大変腑に落ちない制度かもしれません。とくにサラリーマンにとっては納税=税負担を意識させないという弊害があります。しかし、法律ですので受け入れるしかありません。

 

正しく源泉徴収をしていなかった場合の後処理ほど大変なことはありません。「源泉徴収制度に理解のない会社や人とは関わらないこと」が「ビジネスの鉄則」であると考えておく必要があります。

 

源泉徴収制度を理解しない人(無視する人)のほとんどは、後でトラブルが起きたときに、もう、あなたの前から姿を消しているでしょう。結局、あなたが泣き寝入りすることになります。

 

≪一年間にもらった給料に対する所得税の税率≫

 

(1)「課税される所得金額」が195万円までは5%

(2)同上195万円を超え330万円までは10%(控除額97,500円)

(3)同上330万円を超え695万円までは20%(控除額427,500円)

(4)同上695万円を超え900万円までは23%(控除額636,000円)

(5)同上900万円を超え1800万円までは33%(控除額1,536,000円)

(6)同上1800万円を超えるは40%(控除額2,769,000円)

 

「課税される所得金額」(給与所得控除後の金額から配偶者控除、扶養控除などの所得控除を差し引いた金額)が高くなるに従って段階的に上昇する仕組みとなっています。これは「累進税率」といって所得が多いほど担税力があるという考えによっています。

 

【計算例】「課税される所得金額」が650万円の場合

6,500,000円×20%−427,500円=872,500円となります。

 

上記の税率において10%以上からは、課税される所得金額に税率を乗じた金額から一定の控除額(差し引くことができる金額)があります。

これは、同じ税率の水準(10、20、23、33、40%のそれぞれの税率となる所得の範囲)であっても、実質的な税率(税額÷課税される所得金額)に差をつけるためです。所得350万円の場合の税額は272,500円(350万円×20%−427,500円)で実質的な税率は7.78%(272,500円÷350万円)、所得500万円の場合の税額は572,500円(500万円×20%−427,500円)で実質的な税率は11.45%(572,500円÷500万円)となります。(所得が多いほど担税力があるという所得税の趣旨にかないます。)

このように、所得の金額が区分した税率を超過するにしたがって順次、実質的な税率が上昇する構造を「超過累進税率」と呼んでいます。

 

≪年末調整の対象になる人とならない人≫

 

給料や賞与をもらっている人の全員が年末調整の対象となるのではありません。年末調整の対象とならない人は自身で確定申告をしなければならないのです(しなくても済む場合もあります)。

 

1 年末調整の対象となる人(基本的には年末に勤務している人が対象)

 

年末に勤務している「1年を通じて勤務している人」「年の中途で就職し年末まで勤務している人」が対象ですが、年末に勤務していない「死亡により退職した人」「著しい心身の障害により退職しその後再就職していない人」「12月の給与(年内最後の給与)の支払を受けた後に退職した人」「退職し再就職していない人で本年中の給与の総額が103万円以下である人」「1年以上の予定で海外の支店に転勤し非居住者になった人」も対象となります。

 

★給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していますか?

年末調整の対象になる人であってもこれを勤務先に提出していなければ年末調整の対象にはなりません。

 

2 年末調整の対象とならない人(多くの場合は確定申告が必要)

 

「上記の1に該当するけれどもその年の給与の収入金額が2000万円を超える人」「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の規定により源泉所得税の徴収猶予または還付を受けた人」「2か所以上から給与の支払いを受けておりもう一方で年末調整を受ける人」「年の途中で退職した人(上記の1以外)」「非居住者に該当する人」「継続して同一の雇用主に雇用されないいわゆる日雇労働者など(日額表の丙欄適用者)に該当する人」です。

 

≪年末調整での還付が多い人と少ない人の違い≫

 

扶養親族が増えた(減った)、住宅ローン控除があるなどの「決定的理由」がないにもかかわらず、還付される額が異常な(還付どころか追加で徴収される)場合にはスッキリとした気持ちで年を越せません。

 

■還付が多くなる例

 

年度途中で就職した場合には、年度の途中からの毎月の給料に対して、その給料の金額を1年間もらうことを前提に源泉徴収をしていますので年末調整で精算すれば還付が増えます。

 

一番わかりやすい例は、10月に就職して(それまでは無職であった)月給が30万円である場合です。10月と11月の給料についてはよほど扶養親族が多くない限り源泉徴収されるでしょう。しかし、年間の給料総額は90万円(103万円以下は課税されない)ですので年間の税額はゼロになります。それまでに源泉徴収された分が年末調整で全額還付されるということです。

 

これは大変嫌なお話になりますが、業績不振から「賃下げ」となった場合にも還付が多くなります。賃下げになる前の高い給料については、それを1年間もらい続けることを前提に源泉徴収していたからです。

 

■還付が少なくなる(場合によっては追加で徴収される)例

 

年度途中で大幅に昇給した場合にはこのようなことが起こります。今時、「昇給!」なんて考えられませんが、パートやアルバイトの人でこのようなことが起こります。厳密にいえば昇給というよりも「勤務時間の増加」です。

 

例えば、年度の前半は毎月の給料で源泉徴収されない金額以内であったけれども、後半から勤務時間が増えて毎月の給料でも課税されるようになる場合です。年末調整では、年度前半の毎月の給料としては課税されていなかった部分についても精算されることになります。

 

★毎月の給料から源泉徴収する額は給料の額が1年を通して毎月一定していることを前提としています

昨今のように就退職を繰り返す人や勤務時間の変動が激しい人が増えてくると、年末調整で計算した結果と毎月の給料から源泉徴収された税額の合計とに多額の差が出るというケースが多発します。

★年末調整の還付額と人事評価は無関係です!

還付が少ないから(場合によっては追加徴収)といって決して悲観してはいけません。

★計算間違いかもしれません(笑)!

来年の1月末まででしたら年末調整の再調整をしてもらえます。計算が間違っている場合には、遠慮なく会社に再度計算をしてもらってください。

 

 【まとめ】

 

●毎月源泉徴収されている所得税は仮の税額にすぎません。

 

●最終的な税額と仮の税額を精算する手続を「年末調整」といいます。

 

●所得税は「給料の総額−給与所得控除−所得控除」に税率を乗じて計算します。

 

●「源泉徴収制度に理解のない会社や人とは関わらないこと」が「ビジネスの鉄則」であると考えておく必要があります。源泉徴収制度を理解しない人(無視する人)のほとんどは、後でトラブルが起きたときに、もう、あなたの前から姿を消しているでしょう。結局、あなたが泣き寝入りすることになります。

 

 

徹底解説!「給料の税金」

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