利益と法人税7/11

交際費を使っても法人税は減らない?

 

築山公認会計士事務所

 

目次

 

 

≪交際費≫

 

「費用(損金)にならないなら接待などしない!!」

「費用(損金)にならなくとも・・・」

交際費については、経営者としての「哲学」が必要だと思います・・・。

 

 

1 交際費とは

 

法人税法における交際費とは、交際費・接待費・機密費その他の費用で、会社がその得意先、仕入先その他「事業に関係のある者など」に対する接待、供応、慰安、贈答その他これに類する行為のために支出するものをいいます。つまり、ひらたくいえば、会社の業務が円滑に運ぶようにするために、得意先や仕入先などのご機嫌を取りその者から見返りを期待するための支出です。その意味で、法人税法における交際費は世間一般でいわれる交際費と同様ですが、法人税法においては接待などの相手先を得意先や仕入先だけでなく、会社の役員、使用人、株主なども含めています(事業に関連ある者すべてとしています)。

 

交際費の範囲については大変見解が分かれます。そこで、国税庁は通達において交際費と「なるもの」と「ならないも」のについての具体的な例示しています。(詳細は下記3、4)

 

2 交際費についてのルールの必要性

 

交際費の支出が販売の促進や取引の円滑化という事業遂行上の理由であるならば、それが企業会計上の費用となるのは当然のことです。にもかかわらず、法人税法において交際費についてのルール(損金算入額の制限)を設けているのは主に次の理由によります。

 

「交際費の中には事業との関連性が少ないものがあること」

「交際費は会社の冗費・濫費を助長すること」

「交際費は特定の者のみが恩恵を受けること(不公平感を是正する必要がある)」

 

《交際費に含まれないもの》→税法の条文によるもの

交際費に類似する支出であっても、あえて損金算入を規制するまでもないものがあります。

●もっぱら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用

いわゆる「福利厚生費」となります。

●1人当たり5千円以下の飲食費用(役員や従業員に対するものを除く)

平成18年の改正で5千円以下という金額的な基準が条文で明文化されました。

●カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これに類する物品を贈与するために通常要する費用

 「広告宣伝費」となります。これらの物品は多数の者に配付することを目的としており、主として広告宣伝効果を意図する物品でその価額も少額であるからです。

●会議に関連して、茶菓、弁当その他これに類する飲食物を供与するために通常要する費用

「会議費」となります。

●新聞、雑誌などの出版物または放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、または放送のための取材に通常要する費用

 

3 交際費と「なるもの」についての国税庁の見解(通達による例示)

 

(1)会社の何周年記念または社屋新築記念における宴会費、交通費および記念品代ならびに新船建造または土木建築などにおける進水式、起工式、落成式などにおけるこれらの費用(これらに通常要する費用は交際費には該当しない。)

(2)下請工場、特約店、代理店などとなるため、またはするための運動費などの費用(相手方事業者に対して金銭または事業用資産を交付する場合の費用は交際費に該当しない。)

(3)得意先、仕入先など社外の者の慶弔、禍福に際して支出する金品などの費用

(4)得意先、仕入先その他事業に関係のある者などを旅行、観劇などに招待する費用

(5)製造業者または卸売業者がその製品または商品の卸売業者に対し、その卸売業者が小売業者などを旅行、観劇などに招待する費用の全部または一部を負担した場合のその負担額

(6)いわゆる総会屋対策などのために支出する費用で総会屋などに対して会費、賛助金、寄附金、広告料、購読料などの名目で支出する金品に係るもの

(7)建設業者などが高層ビル、マンションなどの建設に当たり、周辺の住民の同意を得るために、その住民またはその関係者を旅行、観劇などに招待し、またはこれらの者に酒食を提供した場合におけるこれらの行為のために要した費用(周辺の住民が受ける日照妨害、風害、電波障害などによる損害を補償するために交付する金品は交際費に該当しない)

(8)スーパーマーケット業、百貨店業などを営む会社が既存の商店街などに進出するに当たり、周辺の商店などの同意を得るために支出する運動費などの費用

(9)得意先、仕入先などの従業員に対して取引の謝礼などとして支出する金品の費用

(10)建設業者などが工事の入札などに際して支出するいわゆる談合金その他これに類する費用

(11)上記に掲げるもののほか、得意先、仕入先など社外の者に対する接待、きょう応に要した費用で、寄附金、値引、割戻し、広告宣伝費、福利厚生費、給与などに該当しないすべての取引

 

4 交際費と「ならないもの」についての国税庁の見解(通達による例示)

 

(1)寄附金、値引および割戻し、広告宣伝費、福利厚生費、給与などに該当するもの

(2)災害を受けた得意先などの取引先に対して行った売掛債権の全部または一部を免除した場合の損失、災害見舞金の支出または事業用資産の供与もしくは役務の提供のために要した費用

(3)販売促進の目的で、特定の地域にある事業者に対して販売報奨金などとして金銭または事業用資産を交付するための費用

(4)不動産販売業者の現地案内、新製品の展示会に得意先などを招待する場合の交通費、食費、宿泊費など販売のために直接要する費用

(5)会社の工場や工事現場などにおいて災害を受けた下請企業の従業員に対し、自社の従業員に準じて見舞金品を支出するための費用

(6)自社の業務の特定部分を継続的に請負っている企業の従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために負担した費用(通常要する金額に限ります。)

(7)自社の従業員と同等の事情にある専属下請先の従業員またはその親族などの慶弔、禍福に際して一定の基準に従って支給する金品の費用

(8)情報の提供、取引の媒介などを行った者に対して、情報提供の対価として交付した金品(交付が事前の契約に基づいており、相当な金額である必要があります。)

 

5 交際費の損金不算入額

 

(1)期末資本金が1億円超の会社

交際費の全額が損金不算入となります。

なお、平成26年4月1日以後開始する事業年度からは「接待飲食費」の50%に相当する金額は損金に算入できるようになりました。

 

(2)期末資本金が1億円以下の会社

交際費年額800万円以下の部分(事業年度が12ヶ月未満の場合には事業年度の月数÷12を乗じます)の全額が損金算入でき、800万円超の全額(事業年度が12ヶ月未満の場合には事業年度の月数÷12を乗じます)が損金不算入となります。(以前は、600万円以下の部分の10%が損金不算入で、600万円を超える部分全額が損金不算入でした。)

なお、平成26年4月1日以後開始する事業年度からはこの計算方式に変えて、上記(1)期末資本金が1億円超の会社と同じ計算方式を選択することもできます。

 

 

《交際費の実際》

 

交際費となる支出の多面性

交際費となるかどうかの判定が困難な支出の具体例は次のとおりです。

●飲食代(1人当たり5千円以下のものを除く)

●旅費(特にタクシー代や宿泊費)

●贈答品代

●会費(同業者団体など)

交際費となるかどうかは「支出の目的」によります。つまり、会社の業務が円滑に運ぶようにするために、得意先や仕入先などのご機嫌を取り、その者から見返りを期待するための支出であれば交際費となるわけです。問題はこの内容を税務署に対して、どのようにして説明するかです。特にその「もてなした相手」が誰であるかについての客観的証拠(外部者が発行した書面など)の入手は困難です。そこで、業者からの請求書や領収書の入手は当然として、会社の帳簿や伝票にもてなした相手の所属団体、役職、氏名を明記しておく必要があります。

 

交際費と寄附金などの違い

交際費は、寄附金、広告宣伝費、役員給与との区別が難しいのが現実です。しかし、中小零細企業においては、一般論として「会社に無関係な支出=社長の個人出費」と考えられることが通常です。つまり、交際費らしき支出(寄附金かもしれない)の多くは、本来は社長が個人的に負担するものでありその支出相当額が社長の給与(損金不算入でかつ社長の所得となる)となります。(税務署は解釈が困難な交際費とするよりも、社長の給与と認定し修正申告を促してくることが通常です。特にその内容を会社が説明しない場合にはこのような傾向にあります。)

 

 

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