築山公認会計士事務所(大阪市北区与力町1−5与力町パークビル7F)

トップページ


「よくある質問」の目次へ
パソコン会計を導入したい
(内容)2014年7月19日現在

1.パソコン会計ソフト導入のメリット

経理作業の大半は定型的な集計と転記作業です。パソコンは人間の能力とは比較にならないスピードと正確性で集計・転記処理を行います。今まで人間の能力では成し得なかったスピードと正確性を手に入れる ことがパソコン会計導入のメリットです。

2.パソコン会計ソフトで何ができますか

パソコン会計ソフトを分類すると次のとおりです。
(1)財務会計ソフト(総勘定元帳、残高試算表、決算報告書の作成)
(2)販売管理ソフト(受注、納品、請求、入金管理)
(3)在庫管理ソフト(発注、納品、支払、在庫管理)
(4)給与計算ソフト(正社員・時給社員の給与計算、社会・労働保険計算、年末調整)
各ソフトともすっかり低価格化してまいりました。しかし、どれも既製品であるためにユーザー企業によっては十分役立たないこともあります。特に、販売管理ソフト、在庫管理ソフトにおいてこの傾向は顕著です。

3.導入運用のサポートをしてくれるのはどのパソコン会計ソフトですか

財務会計ソフトに限定させていただいております。財務会計ソフトは、業種、規模を問わず共通の処理が要求されるために導入が容易で、何よりも税務申告の基礎となる当期利益の算出を目的としているからで す。

4.財務会計ソフトを導入すれば会計事務所はいらなくなる

場合によっては必要なくなります。ただし、パソコン会計ソフトがいかに集計と転記能力に優れていようとも、それに命令を与えるのは人間です。飲食店からの領収書一つとっても、交際費か会議費かを決めるのは 人間です。これらの判断は、やはり会計事務所のサポートが必要です。

5.財務会計ソフト導入後の会計事務所報酬

記帳代行料が不要となりますので一般的には報酬は少なくなります。しかし、会計事務所側としては記帳代行から開放された代わりに相談業務が増大することとなりますので(財務会計ソフト導入前はおろそかに なっていた)、報酬が不変あるいは増加することもあります。

6.財務会計ソフトを導入すれば紙の帳簿は必要なくなる

ほとんどの財務会計ソフトが「電子帳簿保存法」に対応していますので、紙の帳簿は必要ありません。しかし、中小零細企業の場合は出力した紙の帳簿は少量ですし、また金融機関へ融資の申込みをする際は紙 の帳簿の提示が必要となります。やはり、処理はパソコンで行い結果は従来どおり紙で残すのが賢明かと思います。

7.財務会計ソフトはどれにすればよいのですか

現在ユーザー数が多いのは勘定奉行、PCA会計、弥生会計、会計王あたりですが、いずれも共通した複式簿記の原則に基づき設計されており基本的構造は変わりません。ただし、操作性や画面、販売・在庫管 理ソフトとの連携、分散入力の可否、管理帳票(資金繰り表など)にかなりの違いがあります。大切なのは、会計事務所と同じ財務会計ソフトを選ぶことです。そうすれば、電子データの受け渡しにより手書きの帳簿 を渡すのと同じ効果が得られるからです。なお、当事務所では弥生株式会社の弥生会計を推奨しております。
(注)財務会計ソフトの価格は4万円から数十万円と大変幅がありますが、最低価格のものであっても財務会計ソフトとしての基本的機能に問題はありません。ただし、サポートのないフリーソフトやあまりにもユー ザー数の少ないソフトはできるかぎり避けることです。

《クラウド会計》
クラウド会計ソフトがサービスを本格化し始めています。クラウド会計ソフトのメリットは、なんといってもデータの紛失が防止されているということでしょう。クラウド会計ソフトの場合には、データのバックアップが既定 のサービスに組み込まれています。会計ソフトは会計や税に関する法律の影響を受けることから、これらの法律の改正に応じてバージョンアップをしなければなりません。クラウド会計ソフトの場合には、ユーザー の意思とは無関係にバージョンアップが行われますので法律の改正から取り残される心配がありません。クラウド会計ソフトの最大の弱点は利用料というランニングコストが発生するということです。クラウド会計ソ フトを利用するかは利用料に見合うサービスを受けられるかということになります。ユーザーの期待は「初期設定」「仕訳」「入力」・・・「税務申告」でしょうが、この点は従来の会計ソフト同様、「仕訳は自己責任で」 「税金のことは税理士に」です。

8.財務会計ソフトの入力手順と出力帳票

メーカーにもよりますが、基本的な入力画面は振替伝票です。手書会計で振替伝票起票の基礎資料としていた、領収書、預金通帳、売掛帳などが入力原票となります。また、あまり複式簿記に詳しくない人のため に、金銭出納帳や預金通帳を入力画面としている財務会計ソフトもあります。入力原票と入力が正確であれば、後は自動的に残高試算表、総勘定元帳、決算報告書が出力されます。これらは、パソコン会計導入 以前は自社で手書で作成していたか、会計事務所に作成を依頼していたかのいずれかでしょう。なお、具体的な入力原票につきましては、「日常の経理業務はどうすればよいのか」の「主な帳簿の作成と試算表」 をご参照ください。

9.入力済みデータの訂正

訂正できます。メーカーによっては訂正の操作が相当厳格なこともあります。また、「電子帳簿保存法」では訂正について厳格な要件を求めています。入力済みデータの訂正は、手書会計では「二重線での訂正」に 相当します。厳格な要件が求められるのは当然です。
(注)紙に出力していれば、税務当局はプログラムミスでもない以上パソコンの中を見ることはありません。

10.財務会計ソフトに会計知識は必要ですか

必要です。いくらパソコンが正確でも出力帳票のチェックは欠かせません。残高試算表や総勘定元帳の正確性を確認し、意味を理解するにはそれ相応の専門知識が必要となります。さらに、入力原票(基本的に は振替伝票)の作成には会計知識が必要となりますし、何よりも基礎資料(領収書、請求書など)なくして入力原票は作成できません。

11.財務会計ソフトの保守契約は必要ですか

是非ともしてください。我々が安心してソフトを使えるのはメーカーあってのことです。違法コピーや保守契約の未締結はメーカーの経営状態を悪化させ、結果としてユーザーに跳ね返ってきます。保守契約をしてお けばメーカーのサポートが受けられますし、バージョンアップも特別料金ないし無料でできます。

12.バージョンアップは必要か

難しい問題です。簿記の原理自体は不変ですので、10年前の財務会計ソフトでも十分使えます。しかし、パソコン本体やOSは日進月歩です。そこで、毎年はともかくとしてパソコン本体やOSを入れ替えたときは バージョンアップが必要でしょう。

13.財務会計ソフトメーカーのサポート内容

「操作方法」が対象です。簿記の原理、会計処理、節税相談、ましてや税務調査の立会いはしてくれません。なお、一部のメーカーでは会計事務所を紹介していることもあります。

14.財務会計ソフトに必要なパソコン環境

高機能である必要はなく、財務会計ソフトが発売された時点で最低水準のパソコンで十分です。システムファイル、データファイルとも他のソフトに比べて容量が小さいからです。

15.財務会計ソフトに不具合がある場合

まれにあります。しかし、不具合の原因がソフトかOSかハードか、それともユーザーのパソコン環境かその立証は相当困難と覚悟しなければなりません。また、試算表や総勘定元帳の手作業による検算は怠って はいけません。

16.エクセルなどで作成している管理資料

財務会計ソフトによっては、エクセルで作成したデータをインポートできる場合がありますので、すでにエクセルで作成している売掛・買掛一覧などをそのまま利用できます。

17.電子申告(国税e−Tax、地方税eLTAX)

電子申告には青色申告のように税制上の特典はありません。電子申告のためには電子証明書(ICカード)とICカードリーダライタを用意しなければなりません。ですから、とよほど申告書類が膨大でない限り納税者 にとってのメリットは少ないと考えられます。現在、電子申告を利用しているのは税理士がほとんどです(納税者の申告書を代理送信している)。
(注)今後も税務関連役所は、従来どおりの持参や郵送での申告書提出を認めます(電子申告は強制ではありません)。

18.簿記はできるがパソコンはどうも

財務会計ソフトの基本的入力画面は「振替伝票」です。操作も銀行のATM並みに簡単です。パソコンには相当詳しいけれども、簿記会計を知らない人のほとんどが財務会計ソフト導入に失敗しているのが実情で す。ブラインドタッチができるからといって、財務会計ソフトが使えるわけではありません。ブラインドタッチができなくても、財務会計ソフトは使えます。

19.もう、お手上げです

よく経費削減(経理担当者給与・会計事務所報酬)と独創的経理(?)の実現を目的に、後先を考えずに財務会計ソフトを導入なさるケースがあります。そして、税務署や金融機関に厳しい対応をされて初めて相談 に来られる方がおられます。そのほとんどの場合、貸借対照表に異様な勘定科目がある、あるいは特定の貸借対照表科目の金額が異常で、説明のつかない状態です。会計の世界では過去を消せません(確定済 みの決算書)。ご相談はお早めになさるのが賢明です。

20.早く試算表が見たい

高価な財務会計ソフトを購入したからには、一日でも早く試算表を見たいお気持ちはわかります。しかし、財務会計ソフトを使いこなすには「基礎資料」の整備が必要です。特に、今まで会計事務所に全面的に依存 していた会社が財務会計ソフトを導入するには相当困難が伴います。財務会計ソフトは、会計知識や基礎資料の不足の全てを補うものではありません。会計知識(3)、基礎資料の整備(4)、入力(1)、出力帳票 の検討(2)、財務会計ソフト導入・運用に当たってのウエイトです。非常に残念ですが、メーカーも「入力の簡単さ」をアピールしすぎています。また、「正確」「明瞭」「適法」な決算数値を作成するという社長さんの意 識が大前提であることはいうまでもありません。財務会計ソフトは節税や決算対策を自動的に考えてくれるソフトではないのです。

21.財務会計ソフトを導入すべきか

今までの説明で、財務会計ソフト導入を躊躇なさる社長さんがおられると思います。財務会計ソフト導入理由の一つに、「自社の経営状態を正確にすばやく把握したい」があります。これは大変好ましいことです。し かし、これは会計事務所に記帳代行を依頼することでも実現できます。特に、小規模な会社の場合は無理に財務会計ソフトを導入しても、コスト面(金銭的、時間的な)で割に合わないことがあります。一概にはい えませんが、財務会計ソフト導入コストが吸収できるのは、従業員数が概ね10名以上の組織的経営が必要とされる会社で、さらに経理(事務)担当者を雇える会社となります。

22.財務会計ソフトによる経営管理

財務会計ソフトの宣伝文句に「経営管理」が掲げられているのが通常です。確かに財務会計ソフトには各種経営指標の算出機能があります。しかし、残念ながらそれらは販売促進を目的とした「付録」の域を脱して いません。財務会計ソフトの第一の(主要な)目的は、法律で義務付けられている決算報告書作成です。当然ながら財務会計ソフトは融通が利きません。財務会計ソフトは、企業の業種・業態・規模により大きく異 なる経営管理(企業が自社の実情に応じて自由に行う)にすぐさま役立つものではありません。財務会計ソフトが経営管理に役立つデータを提供したり、経営管理データを財務会計ソフトに転用できることはありま すが、両者には相容れない部分が存在します。市販の財務会計ソフトの「経営管理機能」に過大な期待を抱くことは禁物です。


戻る


公認会計士 築山 哲(日本公認会計士協会 登録番号10160番)


トップページ