即効!!消費税Q&A・厳選10
(事業者向けです。)
1−当社は何時から課税事業者となるのか?「基準期間?」「課税売上高?」「???????」
これが、消費税の複雑な部分で、このことで戸惑う事業者が少なからず存在します。
「基準期間(法人の場合にはその課税期間の前々事業年度、個人の場合には前々年)」の「課税売上高(課税資産の譲渡等の合計額=消費税を受け取る対象となる販売代金の合計)」が1000万円を超えていれば、「課税事業者」となり、「その課税期間について計算した消費税」を納付しなければなりません。(基準期間の消費税を納付するのではありません。)
【設例】(下記のいずれのケースにおいても、課税売上高は税込金額で、基準期間においては免税事業者であることを前提とします。)
(1)個人事業者で、平成21年の課税売上高が1100万円、平成23年(当年度)の課税売上高が900万円の場合
基準期間は平成21年でその課税売上高が1000万円を超えていますので、平成23年は課税事業者となります(平成25年は免税事業者となります)。
(2)事業年度=課税期間が3月1日から翌年2月末の会社で、第16期(平成21年3月1日から22年2月末とします)の課税売上高が1100万円、第18期(平成23年3月1日から24年2月末とします)=当年度の課税売上高が900万円とします。
基準期間は第16期でその課税売上高が1000万円を超えていますので、第18期は課税事業者となります(第20期は免税事業者となります)。
法人で基準期間が1年未満である場合は、12ヶ月換算した課税売上高によって判断します。また、基準期間が課税事業者であれば、基準期間の課税売上高を税抜で判断します。なお、課税売上高は損益計算書の「売上高」と等しいわけではありません。「雑収入」などに課税資産の譲渡等が含まれている、損益計算書が税込で表示されている、売上高に非課税分が含まれているなどの場合があるからです。また、「資本の額が1000万円以上の会社」は、基準期間がない第1事業年度から課税事業者となります。
【特定期間】→重要
特定期間とは、法人の場合にはその課税期間の前事業年度の上半期(最初の6か月間)、個人の場合には前年の上半期(1月から6月)のことをいいます。法人の場合には平成25年1月1日以後開始する事業年度から、個人の場合には平成25年度から、この特定期間の課税売上高が1000万円を超える場合には、基準期間の課税売上高が1000万円を超えていなくても課税事業者になってしまいます。ご注意ください!
2−どれだけの金額を納付すればよいのか?
消費税は、国内において行われる課税資産の譲渡等(資産の譲渡=卸売、小売、製造業、建設業など、資産の貸付け=貸ビル業など、役務の提供=サービス業)に課税されます。ほとんどの消費=財貨やサービスの購入に課税されるということです。事業者は、課税資産の譲渡等を行った際はその相手先から消費税を受け取り、それを税務署に納付しなければなりません。つまり、消費税は事業者が課税資産の譲渡等の相手先から「預かるという性格」であり、税の負担者と納税義務者が異なるということです(あくまでも理論上はということですが)。
なお、事業者が税務署に納付する金額は、消費税の累積を排除(最終消費者の負担を防止)するために、「受け取った消費税」から仕入などの際に「支払った消費税」を差し引いた金額となっています。
【設例】
ある会社の課税期間(一事業年度)において、課税資産の譲渡等(おおむね損益計算書の売上)の合計が1050億円(消費税を含む金額)、課税仕入れ(おおむね損益計算書の仕入高と諸経費のうち給与や支払利息など課税対象外のものは除いた部分)が840億円(消費税を含む金額)であるとします。
受け取った消費税は1050×5/105=50億円、支払った消費税は840×5/105=40億円となります。そして、事業者が税務署に納付するのは、50−40=10億円となります。
なお、消費税の申告書においては、国税部分(4%)と地方税部分(1%)を区分けして計算します。また、事業者の経理処理が税込であるか税抜であるかによって、計算のプロセスは異なってきます。
3−消費税は何時納付するのか?
消費税は、「課税資産の譲渡等が行われる都度課税」されますが、消費税を受け取った事業者は、一定期間つまり「課税期間」の消費税を「まとめて納付」します。法人事業者(会社など)の場合には「事業年度ごと」、個人事業者は「暦年ごと」に納付します。
納付の期限は、法人事業者の場合には事業年度末日の翌日から2ヶ月以内、個人事業者の場合には暦年の翌日から3ヶ月以内です。なお、納付期限までに申告書を提出しておく必要があります。一定の条件に該当する場合には事業年度や暦年の途中に納付しなければなりません(中間申告)。また、事業者の選択によって、事業年度や暦年の途中に納付することもできます(課税期間の短縮)。
4−消費税など受け取った覚えがない?
消費税を受け取ったかどうかは、請求書などで消費税の金額を明示しているかどうかではなく、その取引が課税資産の譲渡等に該当するかどうかによって決まってきます。つまり、その取引が課税資産の譲渡等に該当していれば、「消費税を受け取っている」とされるのです。
5−簡易課税を選択すべきか?
事業者が税務署に納付する金額は、「受け取った消費税」から、仕入などの際に、「実際に」「支払った消費税」を差し引いた金額となっています。これが原則的な計算です。(上記「2−どれだけの金額を納付すればよいのか?」参照。)
簡易課税は、この「支払った消費税」を「受け取った消費税」を基に「みなし計算」するという方法です(受け取った消費税に対する比率として「みなし仕入率」が業種ごとに定められています)。当然、このみなし計算である簡易課税が有利であるならばこれを選択すべきです。ただし、簡易課税を選択できるのは、その「課税期間」の「基準期間」における「課税売上高」が5000万円以下の事業者に限られます。
さらに厄介なのは、簡易課税を選択するには、その課税期間開始の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出しなければならないということです。つまり、事後的計算により、確かな有利・不利を計算してからの選択ができないのです。また、一度、簡易課税を選択すれば2課税期間は簡易課税を選択しなければなりません。
【簡易課税が有利となる例】
(1)自宅の一室で、しかも一人で、課税仕入れがほとんど無い事業(設計、デザインなど)をしている場合
設計やデザインのみなし仕入率は50%(第5種サービス業)です。
(2)はるか以前に購入したビルを賃貸している場合
出費そのものがほとんどないのに、支払った消費税が認められます。
【簡易課税が不利となる例】
(1)多額の設備投資をすることが確実である場合
設備投資の際には、多額の消費税を支払う必要があります。みなし仕入率で計算した金額以上になることも多々あるでしょう。
(2)設計やデザインで作業を外注主体にしている場合
設計やデザインのみなし仕入率は、全業種の中で最も低い50%です。従業員数が少なく(給与は消費税の課税対象外)、外注主体(消費税の課税対象)であるならば、実際に支払った消費税がこれを超えることもありうるでしょう。
6−記帳はどうするのか?
基本的には免税事業者のときと同じでかまいません。消費税は個々の取引に課税されますが、納税にあたっての計算は一課税期間合計を損益計算書などから算出します。
受け取った消費税の合計は、損益計算書の売上高などから計算します。(税込処理している場合には、売上高などの5/105となります。) 支払った消費税の金額は、損益計算書などから消費税の課税対象となる費用などを抽出し、それを合計したものから計算します。(税込処理をしている場合には、仕入高、販売費及び一般管理費から給与や社会保険料の会社負担額を差し引いた金額などの合計の5/105となります。)
ただし、特定の勘定科目によっては、消費税の課税対象となる取引と非課税となる取引が混在していることがあります。そのような場合には、科目の分割や補助科目の設定などが必要となります。
7−消費税を節税できないか?
消費税は、細かな個々の取引に反復継続して課税され、その計算は大変緻密さが要求されます。つまり、仕訳処理する際の注意力が決め手となります。誤った処理を長期間続け、余分な消費税を納付していることが少なからずあります。例をあげれば次のとおりです。
(1)通勤手当を非課税としている(支払った消費税の集計漏れ)
給与が課税対象とならないことから、従業員に支給する通勤手当も課税対象としていないことがあります。通勤手当は課税対象であり、消費税を支払っているわけですから、当然、受け取った消費税から差し引いて納税することができます。
(2)非課税のものと同時購入した(請求書や領収書が同じ)課税対象のものを非課税としている(支払った消費税の集計漏れ)
たとえば、郵便局で印紙と切手を同時に購入した場合、印紙が非課税であることから、その領収書全体(課税対象となる切手も含めて)を非課税としていることがあります。
(3)財務会計ソフトの設定と操作ミス
ほとんどの財務会計ソフトには消費税の納付税額を計算する機能があり、納付税額の計算はこの機能を用いるのが実際的です。財務会計ソフトの初期設定や入力時のミスがあれば、正確な計算ができないのは当然です。
(4)諸届の提出忘れ
上記「5−簡易課税を選択すべきか?」の簡易課税の届けなど、消費税に関しては多数の届けが必要です。その多くは、課税期間開始前の提出が必要ですので、つい忘れがちです。
8−消費税が還付される???(その1・多額の設備投資をした場合)
事業者が税務署に納付する金額は、「受け取った消費税」から仕入などの際に「支払った消費税」を差し引いた金額となっています。次のような場合は、「支払った消費税」が「受け取った消費税」を上回ることもあります。当然、還付してもらえます。
(1)多額の設備投資
(2)業績不振(粗利段階での赤字など)
なお、基準期間の課税売上高が1000万円以下であっても、課税事業者と「なることができます」。消費税が還付となりそうな場合には、「自主的に課税事業者となる」こともできますので、これも一法です。
9−消費税が還付される???(その2・輸出業)
輸出業の場合には、課税資産の譲渡等にあたって消費税を受け取っていません(輸出免税)。しかし、仕入れる際には消費税を支払っていますので、その分の消費税は差し引けます。当然、消費税が還付されます。(事業の一部分が輸出であっても同じですが、輸出の割合によっては還付とはなりません。)
10−事業内容が非課税となる資産の譲渡等(住宅の貸付など)なので、消費税は関係ないのでは?
事業のすべてが非課税となる資産の譲渡等に該当する場合には、消費税を受け取っていませんので、課税事業者とはなりません。ただし、上記の輸出業のように消費税を差し引くことはできません。(事業の一部分が非課税資産の譲渡等であっても同じです。この場合は、支払った消費税のうち課税資産の譲渡等に対応する部分のみしか差し引くことができません。)