純資産?

 

 

これまで貸借対照表は、「資産の部」、「負債の部」および「資本の部」に区分されてきましたが、平成18年4月1日以降開始する事業年度からは「資本の部」は「純資産の部」として表示されるようになりました。

従来の資本の部は株主からの払込資本と創業来の累積利益からなるものでしたが、近時の会計制度の改正で従来の資本の部に対する考え方では説明のつかない諸項目(評価・換算差額等、新株予約権、少数株主持分)が資本の部に表示されるようになったことから、これらを含めた意味での純資産の部という名称が新たに採用されるようになりました。

 

1 経理実務に与える影響

 

一握りの上場企業の経理業務、それも有価証券報告書や計算書類を作成する立場にある人を除いて、「資本の部の名称が純資産の部に変わった」、「純資産とは資産から負債を差し引いたもの」という理解で十分です。

 

非公開企業の場合、古い財務会計ソフトを使い続けており、それから作成される貸借対照表が旧様式(資本の部のまま)になっていることがあります。税務申告書の作成ならばこれで十分かもしれませんが、金融機関や税務署以外の役所は新様式(純資産の部として表示される)の決算書でなければ認めないこともありますので、必ずバージョンアップしておく必要があります。

 

2 簿記の学習に与える影響(今後は「資本」という言葉は使われない?)

 

従来、簿記の教科書では必ず説明されていた「資産=負債+『資本』」という貸借対照表等式が、「資産=負債+『純資産』」に全面的に改められることはないと思います。なぜならば、純資産といってもその大部分は従来の資本(株主資本=資本金+資本剰余金+利益剰余金−自己株式)であり、「資産から負債を差し引いた資本=株主の持ち分」という考えは、今後とも重要であることに変わりはないからです。

 

自己資本、他人資本、自己資本比率、自己資本利益率(ROE)など、「資本」という言葉は、これに代わる適切な言葉が見つからない限りは使われ続けることでしょう。

 

ただし、簿記の検定試験などで「決算書の表示方法」を問う場合には、もはや「資本の部」という言葉が用いられることはありません。ですから、試験勉強をするに当たっては、必ず新しい書物を読まなければなりません。

  

≪株主資本等変動計算書≫

純資産の部の登場と共に、純資産の部の一年間の変動の内訳を示す「株主資本等変動計算書」を作成しなければならないようになりました。

 

≪利益処分計算書はなくなった≫

利益処分計算書がなくなりました。平成18年施行の新会社法では、株主総会で利益を配当などで処分することについて承認するという考えがなくなったからです。なお、上記の株主資本等変動計算書で利益の配当などによる変動状況は知ることができます。

 

≪損益計算書では当期利益までしか表示されなくなった≫

当期利益に前期繰越利益を加算した未処分利益は、上記の株主資本等変動計算書の利益剰余金の欄で知ることができるからです。 

 

 

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