(内容)2013年4月27日現在
源泉徴収義務(会社を設立したら逃れられない!)
法人(会社など)や個人が、従業員の給与(給料、賞与など)や税理士などに報酬を支払う場合、それらを支払う都度、支払金額に応じた所得税を差し引くことになっています。これを所得税の源泉徴収といい、所得税を差し引いて(源泉徴収して)税務署に納付する義務がある者を源泉徴収義務者といいます。
どの時点で源泉徴収義務者になり、以後どのような手続が必要かについて大変よく質問を受けます。
会社を設立すれば、設立の日に源泉徴収義務者になります。法的には源泉徴収が必要な給与や報酬を支払わない限り源泉徴収義務者にはなりません。しかし、実務上は会社設立と同時に源泉徴収義務者になったとして「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出します(法人設立届出書と一緒に提出します)。会社は必ず役員報酬という給与を支払うからです。
「当分は給与を払えない」場合であっても税務署へは「源泉徴収税額ゼロ」で報告をしなければなりません。これをしなければ税務署から連絡があります。「給与を払っているが源泉徴収する金額でない」場合も同じです。
会社を設立すれば源泉徴収(含む源泉徴収の状況を報告する義務)からは逃げられないのです!
源泉徴収をしなければならないことはわかっているけれども、どこから手を着けてよいのかさっぱりわからないという方が多いです。
■税務署へ「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する
面倒でも、どんなに忙しくても、まずは税務署に行ってこれを提出するのが源泉徴収事務のスタートです。この届けの用紙はわずか1枚で、税務署員に教えてもらえば数分で記入できます。なお、届けの用紙には押印が必要ですので代表者個人の認印でかまいませんので必ず持参してください。この届けを提出していなければ、年末調整の時期になっても年末調整(源泉徴収)に必要な資料一式が郵送されてきません。そして、「税務署から何の連絡もなかったので源泉徴収も年末調整もしなかった・・・」という見苦しい言い訳をする羽目になってしまいます。
■「源泉徴収のしかた」というパンフレットをもらう
無料です。約30ページで源泉徴収の要領が大変わかりやすく説明されています。各人から源泉徴収する税額の計算方法、納付すべき税額、年末調整などについて詳しく説明されています。源泉徴収を理解するにはまずはこれを読む必要があります。
■「源泉徴収税額表」をもらう
これも非常に大切です。各人の給料や賞与から源泉徴収すべき税額を、給料や賞与の額および扶養親族の人数から定めた表です。これがなければ源泉徴収はできません。
■「納付書(所得税徴収高計算書)」をもらう
あらゆる税は所定の納付書で納付をします。源泉所得税(給与などから源泉徴収した所得税)についても同じです。
★創業以来まったく源泉徴収をしていない
まずは給与支払事務所等の開設届出書を提出しなければなりません。「開設した年月日」は過去にさかのぼります。後は税務署の指示に従ってください
源泉徴収制度に理解のない会社や人とは関わらない!
(ビジネスの鉄則」です。)
源泉徴収は特定の所得や職業の者からのみ行うという、大変腑に落ちない制度かもしれません。とくにサラリーマンにとっては納税=税負担を意識させない、結果として国民の多くが税に無知で無関心になるという弊害があります。しかし、法律ですので受け入れるしかありません。
源泉徴収をしていなかった場合の後処理ほど大変なことはありません。源泉徴収していなかった税額は、源泉徴収義務者が税務署に納めなければならないのです。一方、源泉徴収される人(給与をもらう従業員など)は税務署という強力な国家権力から税金を取られることはありません。立替払いをした源泉徴収義務者からの請求(この権利は大変弱いです)があるだけです。この請求から逃れることは容易です。
「源泉徴収制度に理解のない会社や人とは関わらないこと」が「ビジネスの鉄則」であると考えておく必要があります。源泉徴収制度を理解しない人(無視する人)のほとんどは、後でトラブルが起きたときに、もう、貴方の前から姿を消しているでしょう。結局、貴方が「泣き寝入り」することになるのです!
年末調整とは?
源泉徴収に関して忘れてはならないのは「年末調整」という手続です。この手続をするのは源泉徴収義務者です。
年末調整は、給与所得者(サラリーマン)の1年間の税額を確定・精算するという、給与所得者にとっての「確定申告」であるとともに、給与所得者の「公的な所得証明」の発行手続でもあります。給与所得者は1ヶ所からの給与所得しかなく、ほかに所得がない場合には年末調整だけで税額が確定することから自ら確定申告をする必要はありません。
毎月の給与から天引きされている(源泉徴収されている)所得税は「仮の税額」です。仮の税額といっても法律で定められた「源泉徴収税額表」(国税庁のサイトをご覧ください)という一定のルールで計算しています。しかし、「源泉徴収税額表」(毎月の給与から源泉徴収すべき税額)は一定の前提条件による計算となっていることから、どうしても最終的な税額とは異なってしまいます。そんなことから給与所得者の税額は毎月の給与からの源泉徴収で済ますことはできず、年末調整という精算手続が必要となるのです。
ずさんな給与計算は従業員の経営者に対する不信感につながります!
当然のことです。従業員にすれば大変不安です。「いつ税金を取られるのだろう?」「公的な所得証明がないので住宅ローンも組めない」「そんなに会社は苦しいのだろうか?(事務作業にコストをかけられない)」など、不安な毎日を過ごすことになります。そして、優秀な従業員に限って退職してゆきます。
サラリーマン(会社の役員含む)と確定申告
多くの場合、給与所得者=サラリーマンは1ヶ所からの給与所得しかなく、勤務先で行われる月ごとなどの給与支払時の「所得税の源泉徴収(天引き)」と「年末調整」で課税関係が終了し、自らは確定申告を行う必要はありません。
しかし、年末調整は「給与所得についてのみ」、さらには「給与所得者が選択した1ヶ所からの給与」についてしか行うことができません。ですから、他の所得(事業所得や不動産所得など)がある人、あるいは複数から給与をもらっている人は、給与と他の所得、複数からの給与を合算して改めて確定申告をしなければなりません。年末調整では、選択した1ヶ所からの給与がすべての所得であるとの前提で所得税を計算するので、その人のすべての所得についての所得税を計算できないのです。このように所得を合算すれば、年末調整の際よりも税額が増加することが通常です。なお、すでに源泉徴収されている所得税は、確定申告によって計算した税額(その人の最終的なすべて所得についての所得税額)から差し引くことができます。要するに、二重に課税されることはないということです。
なぜ、このようになるかというと、わが国の所得税は、1年間の「すべての所得に対して課税すること」になっているからです。要するに、給与所得以外に所得(不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得など)がある人、複数から給与をもらっている人にとって年末調整は一部分の所得についての仮の税額計算にすぎないのです。
源泉徴収される収入(デザイナー、講師など)
職業(サラリーマン以外)によっては、その報酬が支払われる際に一定割合を源泉徴収されることがあります。源泉徴収された税金は「仮の税額」にすぎません。「支払いの時に税金を引かれているので確定申告は不要」と考えがちですが、「多くの場合」還付でしょうから(注)、権利としての(還付を受ける)確定申告を必ずしておく必要があります。
(注)「多くの」場合、還付となる理由
ほとんどの場合は、源泉徴収されるのは「収入(受け取る額)の10%」です(1回の支払が100万円以上の場合は、100万円を超える部分は20%となります)。所得は収入から必要経費を差し引いたものであり、さらにそこから所得控除を差し引けますので、累進税率が10%(国民の多くがこの税率でしょう)とすれば当然還付となります。しかし、源泉徴収される職業(収入)によっては(プロスポーツ選手やフリーの芸能人などの高額所得者)普段源泉徴収され、確定申告の際にさらに納税しなければならないこともあります。(平成25年からはこの10%あるいは20%に2.1%上乗せして復興特別所得税が徴収されるようになりましたので、10.21%あるいは20.42%源泉徴収されるということです。)
どうせ確定申告をするんだから
大変危険な考えですので、今すぐその考えは捨ててください。源泉徴収義務は「支払った時」に生じるのです。支払いを受けた者がその後確定申告をするかとは無関係です。なお、支払いの相手先は源泉徴収されることを拒めません。「源泉徴収をする」「源泉徴収をされる」ともに法律上の義務であり、たとえ当事者の同意があっても省略はできないのです。
しつこいぞ!
今まで執拗な説明に、「憤慨している方」「嘲笑している方(源泉徴収していない場合を知っている)」もおられると思います。しかし、源泉徴収をしていなかったことが原因で後日税務署から多額の納税を迫られ、資金繰りが圧迫し、最悪の場合は倒産や廃業を余儀なくされている創業後日の浅い会社が大変多いので、しつこいといわれるのを承知で説明しているのです。
「源泉徴収するのは会社の義務」「(会計事務所は源泉徴収が必要な給与や報酬を)支払うその場にいないので」などといって、源泉徴収に関しての説明をほとんどしない会計事務所もあります。ご注意ください!
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