(内容)2013年4月27日現在
株式会社が有限責任であることの意味
株式会社(ここでは有限会社も含めます)は有限責任であるといわれますが、この有限責任であることの意味は次のとおりです。
■株主は出資した金額以上の責任(損失)は負わない(株主の責任は決められた額を出資することだけ!)
会社は株主からの出資がなければ成立しません。株主が設立に際して出資した金額は資本金と呼ばれます(設立後に増資した分も同じです)。
株主が設立の際に1000万円出資したとします。この1000万円は会社の活動に必要な支出(仕入代金、事務所家賃、人件費など)に使われます。会社はこれらの支出を販売により回収しなければなりません。「回収>支出」であれば、株主が設立に際して出資した1000万円は増えます。反対に「回収<支出」ならば減ります。
株主が出資した1000万円が底をついた場合には借金をしなければなりません。借金を1000万円して、これを事業の支出に使いましたが、販売不振で回収ができなければ借金だけが残ります。当然、会社は倒産します。
ところで、この借金1000万円は誰が返すのでしょうか?
株主?
株主の出資した1000万円は、とっくに使い果たしていますので会社にはお金がありません。借金は返せないのです。返さなくてもよいのです。
結局、株主の損失は1000万円です。株主はこれ以上の損失を被ることはありません。1000万円の借金を返すために追加で出資する責任はないのです。これが、株式会社(株主)は有限責任であるといわれる理由です。
■株主であることの価値=株式
株主は株式を保有することになります。この株式は、株主総会で議決権を行使する、配当をもらう、他人に譲渡する(出資した資金の回収手段)などの価値(権利)を持ちます。
設立当初の株式の価値は1000万円ですが倒産後はゼロです。もはや、配当もなく、譲渡もできないからです。
■大株主であり代表取締役でもある(中小零細企業の実情)
中小零細企業の場合には、代表取締役(会社の代表者)が全額出資をしていることがほとんどです。このような場合も、株主としての責任は上記と同じです。ですから、株主としての損失は1000万円が上限です。
しかし、借金1000万円は代表取締役が個人として返済しなければならないケースがほとんどです。借入金をする際に金融機関は代表取締役の個人での保証(会社が借金を返せない場合に肩代わりをすること)を求めるからです。この保証は株主としての責任である1000万円とは無関係です。
★会社が破産すれば代表取締役も破産する
中小零細企業の場合、会社が破産すれば代表取締役個人でも破産するケースがほとんどです。これは、会社が破産すれば、会社の借金を代表取締役が肩代わりしなければならないからです。要するに、中小零細企業の場合、有限責任は「名ばかり」だということです。
★仕入代金などの未払い
仕入代金などは金融機関からの借入のように代表取締役個人が保証しないことほとんどです。ですから、未払いのまま倒産しても代表取締役個人が肩代わりする必要はありません。そんなことから、仕入業者などは常日頃から取引条件には厳格なのです。
支払いの優先順位(従業員・仕入先・銀行・税務署いずれから・・・)
事業を行う者は、事業に関するいかなる支払いであっても支払期日に遅れてはいけません。支払期日を守れない者とは安心して取引ができないからです。事業を継続するには、期日どおりの支払いを積み重ねることによって「信用」を築かなければならないのです。
しかし、どうしても資金のめどが立たず、支払いの一部を延期しなければならないこともあります。そのような場合、支払いの「優先順位」に悩みます。
■従業員・仕入先・銀行を優先する(税務署は後回し)
従業員の給料を優先するのは当然です。銀行からの借入金を期日どおりに返済しない場合には以後の新規融資は受けられません。仕入先(外注先、賃貸事務所の家主など含む)の支払いを延期すると以後の取引がストップになり、事業に重大な支障が生じてしまいます。また、零細な仕入先は支払延期が生活の破綻に直結することから、計り知れない恨みを買ってしまいます。
■銀行からこれ以上は借りない場合
この場合には銀行からの借入金の返済も後回しにしてもよいでしょう。ただし、第三者に保証人になってもらっている場合には、銀行からその人に連絡がありますので注意が必要です。
■なぜ、税務署は後回しなのか?
会計事務所(税理士)がこのようなことをいうのは不謹慎かもしれません。ただし、「税金を払うな」といっているのではありません。遅れた場合の「ルール」に則って払えといっているのです。
税金の支払いが遅れても「直ちに!」事業に支障が生じるわけではありません。税務署も納付期日の翌日に督促してくるわけではないからです(納付期日から数か月後に督促してきます)。ただし、遅れた場合の金銭的なペナルティ(延滞税、不納付加算税)は相当きついです。
なお、税務署は後回しにするといっても無制限に後回しにできるわけではありません。税務署からの督促を無視し続ける、延期後の期日を守らない場合には、税務署も預金の差押えなどの強行手段に出てきますので注意が必要です。
「会社をつぶすような取立てはしないけれど、棒引きにはしない」、これが税務署の姿勢です。
取引先(金融機関は除く)にだけは迷惑をかけたくない・・・
「もはや倒産確実」という状況でこのような本音を語る人がいます。
■その真意(金融機関は除く理由)は?
金融機関とは絶縁になっても再起はできるからです。というよりも、ひとたび会社を倒産させると金融機関から融資など受けることはできず、以後は金融機関と無縁の人生となります。
また、こんなことをいうと金融機関の方々からお叱りを受けるでしょうが、倒産する側にすれば「貴方(金融機関の担当者)から直接借りたのではない」「貴方達(金融機関)も公的資金で救われたではないか」「どうせ国のお金だから(公的融資や保証を受けている場合)」が本音であり、融資の返済ができなくても「どうせ誰も困らない」と考えるのです。
■仕入先や外注先とは今後も付き合いが続く
一方、仕入先や外注先の中には代金を踏み倒されると共倒れになってしまうところもあります。また、再起の際には協力をしてもらう必要もあります。
そんなことから、「取引先(金融機関は除く)にだけは迷惑をかけたくない」となるのです。
★こんなことができるのか?(資産隠しでは?)
そのとおりです。「資産隠し」に該当するかもしれません。
このようなことを可能にするには、仕入先や外注先への支払いは徐々に現金払い(借りを作らない)に切り替え、金融機関への返済も倒産の直前まで約定どおり行い、倒産に際しての負債は金融機関からの借入だけという状態にしておく必要があります。
★弁護士にご相談を!
破産などの法的手続を行う場合、管財人(弁護士)は悪質な資産隠しの有無を確認するために、破産前一年程度の資金の動きを詳細に調べなければならないようです。
「倒産!」を意識し始めたらできるだけ早く弁護士に相談し、「倒産と再起の方法」についての自身の希望を伝えておく必要があると思います。
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