築山公認会計士事務所(大阪市北区与力町1−5与力町パークビル7F)
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決算書の概略
(内容)2014年8月1日現在
1.決算書とは
決算書とは税務申告の際に提出する次の書類です。
(1)貸借対照表
(2)損益計算書
(3)販売費及び一般管理費明細書(損益計算書の一部である場合もある)
(4)製造原価報告書(製造業の場合のみ)
(5)株主資本等変動計算書・個別注記表
しかし、これだけで企業の内容を理解するには不十分ですので、金融機関などは決算書の勘定科目ごとの詳細(預金ならば銀行別、売掛金なら得意先別)を記載した「勘定科目明
細書(内訳書)」、さらには計算された利益に従い申告納税をしているかを確認するために「法人税申告書」「消費税申告書」「地方税(道府県民税、事業税、市町村民税)申告書」の
提出を求めます。
《申告書控》
税務署へ申告書を提出する際、「提出用」と「控用」の各一部を持参します。そして、税務署は日付入りの「受付印」をそれぞれの表紙のみに押印します。当然、これは申告書を受け
取ったという意味にすぎず、内容を認めたという意味ではありません。
金融機関はこの「受付印」に大変固執します。「受付印がなければ申告書でない」との扱いをすることさえあります。会計事務所からこの受付印を押印した「申告書控」をもらわれて
いるかと思います。金融機関への提出に備えて大切に保管しておいてください。
電子申告(e−Tax、eLTAX)が普及してからは、受付印に代わって、パソコンの画面に表示される受付番号などの情報を印刷したものが申告書を提出した証拠となりました。
税務署は一度提出した書類については、返却は当然として閲覧さえそう簡単には認めてくれません。申告書と決算書は必ず二部用意し、一部を控えとして保管する習慣を身に着
けてください。金融機関などへは控の「提示」あるいは「複写を提出」します。
2.発生主義会計
大変意味不明の用語です。学問的には諸説がありますが、費用と収益を入出金にかかわらず発生時点(?)で計上するという、現行会計の根本原則です。発生主義会計は「企業
の継続」と「信用経済」を前提としており、具体的には次の処理にその特徴が表われています。
(1)企業は継続するので会計期間(事業年度)を設ける
(2)信用取引であるので入出金を待たずに収益・費用を計上する(売上債権、仕入債務)
(3)未消費の財貨・用役を翌事業年度へ繰り越す(棚卸資産、前払費用)
(4)長期間にわたって使用される資産は数期間で費用配分する(減価償却)
(5)予想される費用や損失を合理的な見積りにより計上する(引当金)
最近は、中小零細企業はおろか上場企業でさえ「企業の継続」が危ぶまれていますし、「信用経済」も一寸先は闇です。「発生」の概念を「厳しく」考えなければなりません。発生主義
会計は時代に応じて変貌しなければならない宿命にあります。なお、発生主義会計においても入出金時点で勘定科目を計上する現金主義も認められます。小売店の日々の売上、
即時現金払い仕入れなどがその例です。もっとも、現金主義は入出金=発生という前提で認められているに過ぎません。
3.会計処理の選択とは
事象によっては、会計記録を残すにあたり複数の会計処理方法の中からの選択が認められます。これは、現行会計が入出金にかかわらず記録を要する発生主義を採用している
ため、「見積り」と「仮定」が介入するからです。減価償却における定額法と定率法、在庫評価単価計算における先入先出法と移動平均法などがその典型です。しかし、どの見積り
や仮定が絶対的に正しいとはいえません。
4.会計処理を変えたい
変えることはできません。会計処理方法には「見積り」と「仮定」が介入します。会計における見積や仮定は継続してこそ意味をなすのです。決算書の数期間比較を可能にするの
は、会計処理方法の「継続性」にほかなりません。また、会計処理の変更は場合によっては恣意的な利益操作となるのです。
ただし、経理体制の向上などでより合理的な会計処理方法が選択可能となった、制度変更で新たな会計処理方法が認められるようになった場合は変更が認められます。というより
も、変更するのが当然です。より合理的な決算書が作成できるからです。また、誤った会計処理方法を正しい会計処理方法に変更するのは継続性の問題ではありません。正しい会
計処理方法への当然の修正だからです。
以上からすると、会計処理の変更は一切認められないと考えなければなりません。
5.記帳・会計は法律か
立派な法律です。会社法、法人税法を読めば企業に記帳義務があること、貸借対照表と損益計算書を「一般に公正妥当と認められる会計の慣行」に従って作成しなければならな
いのは明白です。金融機関、得意先、仕入先、税務署などと正確、明瞭、適法な帳簿や決算書を用意せず、経済的事実関係について議論しても勝ち目はありません。企業経営者
が、記帳や会計に関する法規を無視することは明らかな犯罪です。
(注)「一般に公正妥当と認められる会計の慣行」のすべてが明文化されているわけではありません。
《記帳・決算は税務署のためにする》
それは間違いです。しかし、ある意味で正しいかもしれません。わが国のすべての企業は記帳と決算を行い、その結果を税務署に報告しています。企業によっては決算書を金融機
関に提出したり、(上場企業の場合は)広く一般に決算内容を公表しています。しかし、決算書の提出先が税務署だけの企業も相当数あります。そのような企業にとって決算書は税
務署のためだけに作成するといえるかもしれません。税務署が決算書の提出を求めるのは、法人税の計算が決算書の利益をもとに行われるからです。
それならば、「法人税がなくなれば決算書はいらない」のでしょうか。答えは、「ノー」です。そもそも決算書は企業の利害関係者(株主や債権者)のために作成するのです。法人税法
は税額計算の便宜上、決算書を利用しているにすぎないのです。
6.仕訳と借方・貸方
簿記会計を理解するにあたって、必ず突き当たる問題です。しかし、簿記会計の理解が進めばどうでもよいことに気づきます。左(借方)、右(貸方)と考えてください。左は貸借対照
表の「資産勘定」と損益計算書の「費用勘定」の増加を集計し、右は貸借対照表の「負債勘定」「純資産(資本)勘定」と損益計算書の「収益勘定」の増加を集計します。減少の場合
は反対側に記入します。借方と貸方の意味について、実務家(公認会計士、税務署員、経理マン)にたずねても明確な答えは返ってこないと思います。「余計なことにこだわるな、慣
れればわかる」が大半の返事でしょう。
どうしても意味がお知りになりたい場合、簿記の発生起源(中世ヨーロッパ)までさかのぼらないとなりません。なお、日本で初めて簿記を紹介したのは福沢諭吉です。
7.簿記と会計理論
簿記は特定の事象を各勘定科目に分類、記録、集計し、最終的に貸借対照表と損益計算書という様式を作成する技術で、各勘定科目金額の真実性・妥当性や記録時点を問題と
しません。簿記の原理は、会計が貸借対照表と損益計算書の作成を最終的目的としている限り不変です。
一方、会計理論は特定の事象をどの勘定科目で、どのような金額で、何時記録すべきかについての理論です。企業社会の発展や経済情勢によって変化していきます。いわば、会
計理論が経理部長(あるいは経営陣)とすれば、簿記は新入経理社員なのです。「現行会計なんて欠陥だらけなのでもう帳簿などつける必要はないな」と、おっしゃる社長さんがお
られます。会計理論は不備もあるでしょうが、簿記は完成された世界共通の技術です。お考えをあらためてください。
最近、財務会計ソフトが普及してきました。財務会計ソフトは「簿記ソフト」、それをインストールしたパソコンは「簿記機能つき電卓」と呼ぶのが正しいと思います。
8.損益計算書と貸借対照表の関係
一事業年度(あるいは一定期間)で次の関係が成り立ちます。
●損益計算書(一事業年度という期間)
当期収益−当期費用=当期利益
●貸借対照表(一事業年度末という時点)
期末資産=期末負債+期首純資産(資本)+当期利益
又は期末資産−期末負債=期首純資産(資本)+当期利益
又は期末純資産(資本)=期首純資産(資本)+当期利益
一事業年度の企業活動の結果、利益が発生し資産と負債が増減します。そして、その差額は期首純資産(資本)に当期利益を加算した金額となります。
《両者の利益はなぜ一致する?》
誰もが抱く疑問です。これを理解するポイントは純資産(資本)という概念にあります。会計における純資産(資本)とは一定時点の正味の財産です。それは資産−負債、つまりプラ
スの資産(預貯金、売掛金、不動産など)からマイナスの資産である負債(借入金、買掛金など)を差し引いたものです。一方、利益は一定期間の収益−費用です。これは誰しも理
解できることです。
ところで、利益の計算方法はほかにないでしょうか。利益を得たというからには財産の増加が必要です。一定期間の利益は、期間の終わりの財産から期間の初めの財産を差し引く
ことによって計算できます。つまり、期末純資産(資本)から期首純資産(資本)を差し引くことにより利益を計算することができるのです。
複式簿記では、損益計算書の構成要素である収益と費用、貸借対照表の構成要素である資産、負債、純資産(資本)の個々の増減を記録していきます。その結果、作成される損
益計算書(収益と費用の累計の差し引き)と貸借対照表(資産と負債の残高とその差し引きとしての純資産(資本))とにおいては両者の利益が一致するという上記の関係が成り立
ちます。
ここまでの説明でしたら比較的容易に理解できます。しかし、いざ決算書、特に貸借対照表を見てみると、常識では考えられない項目が資産や負債に並んでいます。これが発生主
義会計の特徴なのです。
昨今では記帳処理をコンピューターで行うことが一般的です。どのソフトでも、そして誰が入力しても損益計算書と貸借対照表の利益は一致します。不可解かもしれませんが、ここ
はとりあえず両者が一致するのが常識と考えてください。
どうしても理解したい場合は複式簿記をマスターするしかありません。複式簿記の概略については、当ホームページ「ノウハウ集」の「試算表(その仕組み)」をご参照ください。
9.数期間の決算書比較
税務署、金融機関などは決算書を数期間分比較しながら企業内容を検討します。会計は企業活動の継続性を前提としています。会計期間(事業年度)はその継続的な企業活動を
人為的に区切ったに過ぎません。最低3年の決算数値を比較しない限り企業の収益性や資産内容を理解することはできません。収益性の低下、売上債権の回収遅延、仕入債務
の支払遅延。徐々に顕在化してくるのが通常だからです。
10.決算対策
よく上場企業の決算において「決算対策」という言葉を聞きます。この言葉はあたかも決算数値が政策的に作成される印象を与えるかもしれません。しかし、決算対策はルール無
用に自社にとって都合のよい処理をするという意味ではありません。決算対策の類型としては次の二通りがあります。
(1)自社に有利な会計処理方法を選択する
新規事象と合理的な範囲内の変更に限ることはいうまでもありません。
(2)自社の決算数値が向上するような企業活動を事業年度末までに終了させる
利益をもたらす商談の確定、費用削減など。
11.勘定科目
「日常の経理業務はどうすればよいのか」の「勘定科目一覧」をご参照ください。
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公認会計士 築山 哲(日本公認会計士協会 登録番号10160番)
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