年末調整を受ける人へ

2016年10月22日現在

 

 

年末調整がサラリーマン(給与所得者)にとって大切な手続であることを理解できない人は多いです。しかし、給与計算担当者からの指示を「面倒!」だとか「うるさい!」と受け止めてはいけません。正確に年末調整をしていない場合の後処理は大変です。最悪の場合には、会社からも見捨てられます(事後的な修正はしてもらえません)。このページでは、年末調整についての素朴な疑問をできる限り専門用語を用いずに解説しております。サラリーマンの方は必読です!

 

給与計算担当者の方は、従業員に説明するノウハウとしてご活用ください。

 

 

《年末調整とは》

年末調整といっても、あまり実感のわかない方も多いと思いますが、「扶養控除等(異動)申告書」「生命保険料証明書」「税金の還付」などと聞いてようやく昨年を思い出すのではないでしょうか。年末調整は、給与所得者の税額を確定・精算するという、給与所得者にとっての「確定申告」であるとともに、給与所得者の「公的な所得証明」の発行手続でもあります。

年末調整は、会社などに勤務する従業員(役員・アルバイト・パートを含む。以下同じ)の年間給料・賞与総額に対しての所得税額(国税)を計算し、毎月の給料、賞与の支払時に徴収した源泉所得税の合計額(仮の税額)との精算を行う手続です。なお、年末調整の事務手続を行うのは、源泉徴収義務者として従業員から源泉所得税を徴収した会社です。また、年末調整は年内の最終給与を支払う時に行います。

 

《年末調整の対象となる人》

扶養控除等申告書を提出しており、年間給与総額が2000万円以下で、年末に在籍する従業員が対象となります。なお、年度途中で採用され年末に在籍する従業員も対象となります。(「少額な給与は年末調整しなくてよい」との迷信があるようですが、法的にそのような扱いは一切認められていません。)

 

《扶養親族がいなければ扶養控除等申告書を提出する必要がない?》

まれにある誤解ですが、扶養親族がいなくても、その会社で年末調整を受けたい場合には必ず提出しなければなりません。

 

《配偶者控除や扶養控除の対象となっているならば扶養控除等申告書を提出する必要はない?》

よくある誤解ですが、必ず扶養控除等申告書を提出してください。配偶者控除や扶養控除を受けるには、その配偶者や扶養親族の所得金額が一定金額以下である必要があります。それには、その配偶者や扶養親族の所得金額が年末調整によって確定される必要があるからです(年末調整を行う前提は扶養控除等申告書を提出することです)。

 

《未成年者に年末調整は必要か?》

未成年者が、勤務先で配布された扶養控除等申告書の書き方を親にたずねたところ、「未成年のあなたはこんなものを書いてはいけません。返してきなさい!」「そんないかがわしい所でアルバイトをするのはやめなさい!」となることがあります。所得税は年齢とは無関係に課税されますので、たとえ未成年者であっても、年末に勤務していれば末調整をしなければなりません。

 

《源泉徴収された所得税の還付》 

年末調整の結果計算された年間税額と毎月の源泉徴収税額の合計に差額がある場合には、会社は各従業員に還付(超過税額)あるいは各従業員から追加徴収(不足税額)しなければなりません。

■還付となる例

一年間を通して毎月の給料が同額で、年度途中で扶養親族が増えた場合(途中の給料まで年度末より少ない扶養親族数を前提に源泉徴収しているので)

■追加徴収となる例

一年間を通して毎月の給料が同額で、年度途中で扶養親族が減った場合(途中の給料まで年度末より多い扶養親族数を前提に源泉徴収しているので)

 

《源泉徴収票》

各従業員の一年間に「支給した給料・賞与」と「徴収した源泉所得税(年末調整後)」の結果要約表です。おなじみ、A4サイズの1/4の用紙です。ただし、平成28年分からマイナンバー制度が始まることにより様式もサイズも大幅に変わりました。年末調整が終了したならば、会社は翌年の1月末までに各従業員に交付しなければなりません。源泉徴収票は、融資や賃貸住宅への入居申込みなどの際に、必ず提出が求められます。大切に保管しておいてください。

 

《年末調整の市区町村へ結果報告》

年末調整はあくまでも「国税」である「所得税」についての手続です。「地方税」である「住民税」については、会社が源泉徴収票(給与支払報告書)を各従業員の住所地の市区町村に提出し、各市区町村が計算し会社あるいは各従業員にその税額を通知します。

会社が作成する源泉徴収票は、会社の「内部資料」にすぎません(都合のよいように作成できる)。源泉徴収票は、各市区町村に提出されてはじめて「公的証明力」を有することになります。(融資や賃貸住宅への入居申込みの際に、会社が作成した源泉徴収票ではなく市区町村発行の所得証明の提出を求められることがあります。)

 

《還付は誰がしてくれるのか?》

会社にとって源泉徴収税額は従業員からの「預り金」ですので、還付金は会社が用意しなければなりません(用意できるはずです)。

年末調整の結果、超過税額(還付)が生じる従業員については、会社から従業員に還付しなければなりません。毎月の源泉徴収税額が10,000円(年間で120,000円を仮の税額として徴収)、超過税額(還付)が15,000円(最終的な年税額は105,000円)とした場合、還付の方法は次のとおりです。なお、いずれの方法も結果(その従業員の最終的な税額)は同じです。 

(1)年内最終給与で徴収と還付を行う

給与明細の「控除欄」で、徴収10,000円(プラス記入。控除欄のプラス記入なので支給額からは差し引きとなる)と還付15,000円(マイナス記入。控除欄のマイナス記入なので支給額に加えることになる)の2段記入する。

(2)年内最終給与で還付のみ行う

給与明細の「控除欄」で、還付5,000円(マイナス記入。徴収10,000円から還付15,000円を差し引いた金額)を記入する。

(3)別途還付する

年内最終給与では、通常月と同様に10,000円の徴収を行い、還付15,000円は別途手渡す。(従業員にとっては、還付されたという実感が湧く方法です。年内最終出勤日や年初の出勤日に還付するのがよいかもしれません。)

 

《年末調整の期限》

実は、翌年の1月末まで猶予期間があります。かといって、年明けに年末調整することが「推奨」されているわけではありません。年末調整の諸要素(配偶者や扶養親族の所得など)によっては、年内は未確定のものもあります。そこで、年内は「暫定的数値」に基づき年末調整を行い、1月末までの修正可能期間を設けているのです(年末調整の再調整)。これでも間に合わない場合には、個々人が確定申告をします。

 

《源泉徴収票への信奉!》

源泉徴収票が「社会人としてのパスポート」であるがゆえに、人によっては源泉徴収票に異常な「信奉」を抱いていることがあります。しかし、源泉徴収票は会社が作成した内部資料に過ぎません。とくに、名もなき中小零細企業の源泉徴収票など誰も信用してくれません。

金融機関(融資の審査)、家主(賃借人の信用状況の調査)などは個人所得の正確な把握の手段として、源泉徴収票ではなく公的証明力のある「市区町村発行の所得証明」(給与支払報告書に基づいており「納税」という確かな裏づけがある)の提示を要求することがあります。

 

《扶養控除等(異動)申告書などの返却》 

これらは会社で保存しておく必要がありますので返してもらうことはできません。「確定申告で必要だから」と思うかもしれませんが、会社が確認済みの事項(源泉徴収票に記載されている事項)についての証明書類(保険料の支払証明など)は確定申告に際して改めて提出する必要はありません。これは、退職している場合も同じです。

 

《年末調整と確定申告》 

「給与所得しかない人」が「1ヶ所からのみ給与」を受け取っており、そこで年末調整をした場合には確定申告の必要はありません。しかし、次のような場合には確定申告をする必要があります。

(1)医療費、寄付金控除、住宅借入金等特別控除(初年度)を受けたい

これらを勤務先でするものと思い込んでいる人がいます。しかし、確定申告をするしかありません。

(2)年末調整が間違っていた(税額が多かった)

生命保険料、個人負担の社会保険料(特に扶養親族分)などの控除を忘れることが目立ちます。2月以降は確定申告するしかありません。

(3)年末調整が間違っていた(税額が少なかった)

控除できないのに配偶者控除や扶養控除をしている場合がこれに該当します。本来は会社が訂正すべきことです。1月末までの場合には「年末調整の再調整」、2月以降は「前年分の源泉所得税の納付漏れ」となります。なお、後者の場合は会社に不納付加算税と延滞税が課税されます。(このケースは、税務調査で指摘されるまで放置されていることが通常です。)

 

《2ヶ所以上の会社などから給与をもらっている》

2ヶ所以上から給与をもらっている人の場合、そのうちのひとつを「主たる給与」とし、残りは「従たる給与」としなければなりません。「この区分はどうするのか?」ということですが、一般的には「主たる給与」とはいわゆる本業の給与であり最も勤務時間が長く金額も多い会社からの給与ということになります。そして、税金の手続上大切なのは、「主たる給与」をもらう会社に「扶養控除等申告書」を提出しておくということです。

 

《主たる給与と従たる給与の違い》

「主たる給与」の毎月の源泉徴収は源泉徴収税額表の「甲欄」で、「従たる給与」は「乙欄」で行われます。

具体例で計算して見ましょう。 

■主たる給与の月額が8万円(社会保険料はなし、配偶者や扶養親族はなしとします)

甲欄ですので源泉徴収額はゼロとなります。 

■従たる給与の月額8万円

乙欄ですので源泉徴収額は2,450円となります(8万円×3.063%)。

月額の給料が同じでも従たる給与のほうが税額は多くなります。この理由は次のとおりです。

わが国の所得税はある人の一年間のすべての所得を合計して課税します。ですから、上記の例の人は2ヶ所からの給与を合計して課税されることになります。ちなみに、この人が、8万円+8万円=16万円を1ヶ所からもらっている場合には、毎月の税額は3,340円になります(社会保険料はなし、配偶者や扶養親族はなしとします)。

源泉徴収税額表の乙欄は2ヶ所以上から給与をもらっている人の毎月の源泉徴収税額が過少にならないようにする(確定申告で多額の納税をしなくて済むようにする)ための手段にほかなりません。

 

《2ヶ所以上から給与をもらっている人は自身で確定申告をしなければならない》

要するに、主たる給与についてしか税額の精算(年末調整)ができていないことから、残る分(従たる給与)を主たる給与と合計して確定申告しなければならないということです。(会社で天引きされた所得税は、確定申告で算出された最終的な所得税額から差し引くことができます。)

 

《年度途中で転職した人》

一見、2ヶ所以上から給与をもらっている人と同じように思えるかもしれません。しかし、2ヶ所以上から給与をもらっている人が「掛け持ち」であるのに対して、転職した人は一定時点では1ヶ所でしか働いていません。ですから、転職した人の源泉徴収は「甲欄」であるとともに、年末に在籍する会社などで退職した会社などの給与も合計して年末調整をすることになります。

 

《年度途中で退職してから就職していない場合》

その年に在籍したすべての会社などの源泉徴収票を合計して、自身で確定申告しなければなりません。年末調整をしていないため税額の精算ができていないからです。

 

《扶養控除等申告書を2ヶ所以上に提出する?》

不可能です。あさはかです。翌年には給与支払報告書によってばれてしまいます。また、給与支払報告書が提出されていなくても、税務署は税務調査の際に給与台帳(含む従業員の住所などの関連情報)をこまめに収集していますのでばれてしまいます。

 

《役員、正社員、アルバイト、パート》

役員、正社員、アルバイト、パート。世間一般、社内、労働関連法規においては大変重要な区分だと思います。しかし、税(所得税)においてはすべて同じ扱いです。いずれも所得税においては「給与所得」とされます。給与所得であるがゆえに支払時には所得税の「源泉徴収」が必要となります(主たる給与の場合には年末調整が必要です)

 

《給料と賞与》

いずれも給与所得であり源泉徴収や年末調整が必要となります。

 

《派遣社員》

いわゆる「派遣社員」は派遣会社の社員(正社員、パート、アルバイトなど)であり、そこから給与を受け取っています。ですから源泉徴収や年末調整をするのは派遣会社ということになります。外形上、派遣社員はパートやアルバイトに近いかもしれませんが、派遣先の会社に雇用されているのではありません。

 

《試用期間中の給与》

源泉徴収や年末調整が必要となります。

 

《外注》

外部の独立した業者(たとえ専属であっても)であるならば給与所得ではありませんので年末調整の必要はありません。ただし、特定の職業(デザイナーやライターなど)は「報酬料金」としての源泉徴収をされ1年が終われば「支払調書」が発行されます。

 

《税務署が配偶者や扶養親族の所得を把握するメカニズム》

会社は各従業員の年末調整の結果(給与の総額や所得控除など)を、翌年の1月末までに各従業員の住所地の市区町村に「給与支払報告書」を提出することにより報告しなければなりません。各市区町村が各従業員の住民税(地方税)を計算するために各会社に報告義務を課しているのです。 配偶者や扶養親族の所得が税務署に把握されてしまう原因が、この「給与支払報告書」にあることをご理解いただけるかと思います。 

世の中にはズサンな会社が存在し、上記の「給与支払報告書」を提出していないことがあります。また、明らかな給与所得を事業所得(外注費などの名目)として処理している会社もあります(事業所得の場合には本人が無申告でいればすぐさま所得は表面化しない)。配偶者や扶養親族がこのような会社に勤務している場合には、「所得ゼロ」として違法に配偶者控除や扶養控除を受けることができます。このようなことが高じて、社内に「配偶者や扶養親族の所得はごまかせる」「あの人はごまかしている」「だから、自分もそうしてほしい」との空気が蔓延する場合があります。

 

《控除対象配偶者や扶養親族の所得を証明するもの?》

年末調整で、控除対象配偶者や扶養親族の所得を証明する書類などの提出は一切不要です。

◆ということは、ごまかせるの?

そうではありません。控除対象配偶者や扶養親族の所得は税務署に「筒抜け」なので証明書など必要ないのです。年末調整を受ける人は、配偶者や扶養親族の所得を「税務署に報告されるとおりに」扶養控除等申告書で報告しなければならないのです。その基データは、配偶者や扶養親族の勤務先が発行した給与明細や源泉徴収票なのです。

▼ばれなかったけど?

配偶者や扶養親族の勤務先が税務署に報告していない場合もあります。しかし、そのような企業の多くが「ブラック企業」であると考えて間違いありません。この件に関しては天国かもしれませんが、それ以外は地獄ですよ!

 

《源泉徴収制度に理解のない会社や人とは関わらない》

源泉徴収は、特定の所得や特定の職業の者からのみ行うという大変腑に落ちない制度かもしれません。とくにサラリーマンにとっては納税=税負担を意識させないという弊害があります。しかし、法律ですので受け入れるしかありません。

正しく源泉徴収(従業員の場合には年末調整も含めて)をしていなかった場合の後処理ほど大変なことはありません。「源泉徴収制度に理解のない会社や人とは関わらないこと」が「ビジネスの鉄則」であると心得ておく必要があります。

源泉徴収制度を理解しない人(無視する人)のほとんどは、後でトラブルが起きたときに、もう、貴方の前から姿を消しているでしょう(結局、貴方が泣き寝入りすることになります)。

 

《給与所得とは?》

俸給、給料、賃金、歳費および賞与ならびにこれらの性質を有する給与による所得をいいます。年末調整は給与所得のみが対象となります。いわゆる外注費(事業所得)は給与と同じように思えるかもしれませんが(従業員も外注業者もともに労働を提供する)年末調整の対象とはなりません。しかし、現実には給与と外注費の区別が困難であるのが実情です。

 

《所得とは?》

所得税における所得とは人が得た「経済的な利得」とされています。経済的な利得とは、金銭による収入のみが所得とされるのではないということです。例えば、勤務先からの金銭以外の給付(忘年会、社員旅行など)も所得とされます。しかし、所得(経済的な利得)といっても、所得の性質や所得を得るにいたったプロセスはそれぞれ異なります。勤労による所得、事業による所得、資産の運用による所得、偶発的な所得など様々です。わが国の所得税は、所得はその内容によって計算方法や担税力が異なることから、所得を次の10種類に分類しています。給与所得はその中の一つにすぎません。

1利子所得、2配当所得、3不動産所得、4事業所得、5給与所得、6退職所得、7山林所得、8譲渡所得、9一時所得、10雑所得(雑所得は他の9種類以外の所得です)

 

《最終的に所得は合算される》

わが国の所得税はすべての種類の所得に税率を乗じて課税するという、いわゆる「総合課税」であることから(一部の所得は分離課税されます)、上記10種類の所得を最終的には合算しなければなりません。給与所得のみの人の場合にはこの合算作業は不要ですが、所得を合算してからの計算プロセス、すなわち所得控除の差し引き、それに乗じる税率などは複数の種類の所得がある場合と同じです。

 

《非課税となる所得もある》

本来は所得であっても、国民感情や社会政策の観点、その性質からして所得税の課税の対象とならないもの(非課税となるもの)もあります。例えば、給与所得者の通勤手当のうち一定金額、生活必需品の譲渡による収入、健康保険などの保険給付、失業等給付、損害保険金や損害賠償金で心身に加えられた損害や突発的な事故によるものは非課税となります。

 

《給与所得控除》

各人の所得金額を計算するにあたって、まず初めに行う作業が一年間に支給を受けた給料と賞与の合計金額から「給与所得控除」を差し引くということです。所得税の計算における所得(上記《所得とは?》参照)の多くが収入という成果からそれを得るための犠牲(事業所得や不動産所得の場合には必要経費)を差引くという仕組みになっており、給与所得控除はサラリーマンにとっての必要経費と呼ぶべきものであります。なお、あくまでも計算上差し引きするということであり、給与所得控除を差し引いた金額がいわゆる手取りではありません。手取りは、支給される給料や賞与から社会保険料や所得税などを差し引いた金額です。

 

《所得控除》

上記《給与所得控除》の金額は、誰であっても給与収入が同じであるならば同様の金額となります。しかし、個人が得た所得は、まずは生活(衣食住)のために消費されることから、所得税を課税するにあたっては生活をするための個人的事情(最低限の生活の保障)を考慮する必要があります。その個人的事情の課税への考慮は、下記のとおりの「所得控除」と呼ばれるものによって、所得の金額から一定額を差し引くことによって行います。(この所得控除は、収入を得るための犠牲(収入−犠牲=所得)とは性質が異なります。)

●基礎控除(誰もが認められます)

●配偶者控除(一定の所得以下の配偶者がいる場合に認められます)

●扶養控除(一定の所得以下の扶養親族がいる場合に認められます)

●障害者控除(本人やその扶養親族が一定の障害を背負う場合に認められます)

●勤労学生控除(一定の所得金額以下の勤労学生に認められます)

●雑損控除(災害、盗難などにより一定金額の損害を受けた場合に認められます)→年末調整ではなく確定申告で控除します。

●医療費控除(本人や親族の医療費の一定金額について認められます)→同上

 

《合計所得金額》

控除の対象となる配偶者や扶養親族の「合計所得金額」が、配偶者控除や扶養控除が適用できる要件となっています。なお、ここでの「合計所得金額」とは、所得税におけるすべての所得を合計した金額であり、世間一般における収入=所得ではありません。例えば、給与所得の場合には、上記《給与所得控除》のとおり収入から給与所得控除を差し引いた金額で、年間の給与収入が103万円の場合には給与所得控除の金額が65万円であることから合計所得金額は38万円ということになります(給与しか収入がない場合)。なお、合計所得金額の計算においては、上記《所得控除》は差し引きしません。

 

《課税される所得金額》

合計所得金額から所得控除を差し引いた金額となります。年末調整が終了したならば会社が交付してくれる源泉徴収票では、給与所得控除後の金額と所得控除の額の合計額が記載されています。

 

《給与所得に対する税率》

「課税される所得金額(給与所得控除後の金額から配偶者控除、扶養控除などの所得控除を差し引いた金額)」が高くなるに従って段階的に上昇する仕組みとなっています。

●195万円まで 5%

●195万円を超え330万円まで 10%(控除額97,500円)

●330万円を超え695万円まで 20%(控除額427,500円)

●695万円を超え900万円まで 23%(控除額636,000円)

●900万円を超え1800万円まで 33%(控除額1,536,000円)

●1800万円を超え4000万円まで 40%(控除額2,769,000円)

●4000万円超 45%(控除額4,796,000円)

所得が増えるにしたがって税率が高くなっていますが、これは「累進税率」といって所得が多いほど担税力があるという考えによっています。

【計算例】課税される所得金額が650万円の場合

6,500,000円×20%−427,500円=872,500円

【控除額】

上記の税率において10%以上からは、課税される所得金額に税率を乗じた金額から一定金額を控除する(差し引くことができる)こととなっています。これは、同じ税率の水準(10、20、23、33、40%のそれぞれの税率となる所得の範囲)であっても、実質的な税率(税額÷課税される所得金額)に差をつけるためです。所得350万円の場合の税額は272,500円(350万円×20%−427,500円)で実質的な税率は7.78%(272,500円÷350万円)、所得500万円の場合の税額は572,500円(500万円×20%−427,500円)で実質的な税率は11.45%(572,500円÷500万円)となります。(所得が多いほど担税力があるという所得税の趣旨にかないます。)このように、所得の金額が区分した税率を超過するにしたがって順次、実質的な税率が上昇する構造を「超過累進税率」と呼んでいます。

 

《復興特別所得税》

所得税額の2.1%です。給与所得者は所得税額に2.1%上乗せした額を源泉徴収されます。なお、年末調整で算出された所得税額の2.1%が最終的な復興特別所得税の額です。

 

《なぜ、源泉徴収するのか?》

所得税の源泉徴収(年末調整)は、税収の平準化や給与所得者の便宜のために行われるとされています。多くの給与所得者=サラリーマンは1ヶ所からの給与所得しかなく、毎月の給料、賞与の支払いに際しての源泉徴収と年末調整で課税関係を終了させることが税務行政上も効率的であり、給与所得者にとっても自ら確定申告する手間が省けるからです。

 

《確定申告が必要なサラリーマン》

年末調整は給与所得についてのみ、さらには、給与所得者が選択した1ヶ所からの給与についてしか行うことができません。つまり、選択した1ヶ所からの給与がすべての所得であるとの前提で所得税を計算することから、その人のすべての所得についての所得税を計算できないということです。ですから、複数から給与をもらっている人、あるいは他の所得(事業所得や不動産所得など)がある人は、複数からの給与、給与と他の所得を合算してあらためて確定申告をしなければなりません。このように所得を合算すれば、年末調整の際よりも税額が増加することが通常です。しかし、給与所得以外の所得がマイナスの場合には減少します。なお、すでに源泉徴収されている所得税は、確定申告によって計算した税額(その人の最終的なすべて所得についての所得税額)から差し引くことができますので、二重に課税されることはありません。

なぜ、このようになるかというと、わが国の所得税は、1年間の「すべての所得に対して課税すること」になっているからです(総合課税)。つまり、複数から給与をもらっている人、給与所得以外に所得がある人にとって年末調整は一部分の所得についての「仮の税額計算」にすぎないということです。

「それならば、年末調整はしない」とおっしゃるかもしれません。しかし、年末調整をしない場合(勤務先に扶養控除等申告書を提出しない場合)には、毎月の源泉徴収税額が源泉徴収税額表の「乙欄」という高い税率で行われますので毎月の手取りが減ります(結果的には確定申告で精算されます)。

【確定申告が必要となる具体例】

●複数から給与所得がある場合

●年度途中で転職し、年末に在籍する会社で前職分の給与を加算せずに年末調整している場合

●年末調整時には未確定であった事項(配偶者や扶養親族の所得など)が確定した場合

●年末調整が間違っていた場合

●医療費控除、住宅借入金等特別控除(初年度のみ)など確定申告でしか認められない控除がある場合

●年度の途中で退職しその後就職していない(年末調整が済んでいない)場合

 

《住民税は所得税の計算に当たって差し引けるのか?》

差し引くことはできません。所得税も住民税も所得に対して課税されますので、所得に対して課税される税金をその計算の対象(税率をかける対象)から差し引くことはできません。日頃の給与明細には住民税の金額が記載され差し引かれているのに、なんだか腑に落ちないでしょうが仕方のないことです。

 

《なぜ、年末調整で医療費の控除はできないのか?》

なぜでしょうね?しかし、なんらかの理由はあると思います。

推測するには、医療費の内容は種々雑多で専門的な判断を要するので、それが控除の対象になるかを各源泉徴収義務者(会社など)に任せることができないからでしょう。また、年末調整の時点では医療費の総額が計算できないこと、源泉徴収義務者の事務負担が過重となることも理由ではないかと思います。(医療費控除のほか、初年度の住宅借入金等特別控除、雑損控除、寄附金控除も年末調整では行えません。)

 

 

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