2ヶ所以上の会社などから給料をもらっている人の年末調整
必ず、自分で確定申告しなければなりません。
問答無用です!
最近、2ヶ所以上の会社などから給料をもらっている人が増加しています。「もらう側」としての「1ヶ所からの給料では生活ができない」、「払う側」としての「正社員を採用したくない(固定費を増やしたくない)」あるいは「足りない分は深夜か土日によそで稼いでくれ」という事情が背後にあるのでしょう。
「ひとつの会社に滅私奉公!」、すっかり過去の話となってしまいました。
このような雇用形態の増加に伴い、これに応じた源泉徴収(年末調整)ができておらず、思いもよらないトラブルが「もらう側」と「払う側」の双方に生じているのが実情です。
2ヶ所以上から給料をもらっている人の場合、そのうちのひとつを「主たる給与」とし、残りは「従たる給与」としなければなりません。「この区分はどうするのか?」ということですが、一般的には「主たる給与」とはいわゆる本業の給料であり最も勤務時間が長く給料の金額も多い会社からの給料ということになります。そして、税金の手続上大切なのは、「主たる給与」をもらう会社に「扶養控除等申告書」を提出しておくということです。
「主たる給与」と「従たる給与」では税金の計算上、次のような違いが出てきます。
1 「主たる給与」の毎月の源泉徴収は源泉徴収税額表の「甲欄」で、「従たる給与」は「乙欄」で行います
源泉徴収税額表につきましては国税庁のサイトをご覧ください
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/zeigakuhyo2015/01.htm
具体例で計算して見ましょう。
●主たる給与の月額が8万円(社会保険料はなし、配偶者や扶養親族はなしとします)
甲欄ですので源泉徴収額はゼロとなります。
●従たる給与の月額8万円
乙欄ですので源泉徴収額は2,450円となります(8万円×3.063%)。
月額の給料が同じでも従たる給与のほうが税額は多くなります。この理由は次のとおりです。
わが国の所得税はある人の一年間のすべての所得を合計して課税します。ですから、上記の例の人は2ヶ所からの給与を合計して課税されることになります(これ以外に事業所得や不動産所得がある場合にはこれらも合計します)。ちなみに、この人が、8万円+8万円=16万円を1ヶ所からもらっている場合には、毎月の税額は3,340円になります(社会保険料はなし、配偶者や扶養親族はなしとします)。
源泉徴収税額表の乙欄は2ヶ所以上から給料をもらっている人の毎月の源泉徴収税額が過少にならないようにする(確定申告で多額の納税をしなくて済むようにする)ための手段にほかなりません。
2 年末調整は主たる給与についてしか行えません
説明は他のページをお読みください。
3 2ヶ所以上から給料をもらっている人は自身で確定申告をしなければなりません
要するに、主たる給与についてしか税額の精算(年末調整)ができていないので、残る分(従たる給与)を主たる給与と合計して確定申告しなければならないということです。なお、主たる給与および従たる給与について天引きされた所得税は、最終的な所得税額から差し引くことができ、確定申告ではその差額を納めます。
《年度途中で転職した人との違い》
一見、2ヶ所以上から給料をもらっている人と同じように思えるかもしれません。しかし、2ヶ所以上から給料をもらっている人が「掛け持ち」であるのに対して、転職した人は一定時点では1ヶ所でしか働いていません。ですから、転職した人の源泉徴収は「甲欄」であるとともに、年末に在籍する会社などで退職した会社などの給料も合計して年末調整をすることになります。
《年度途中で退職してから就職していない場合》
その年に在籍したすべての会社などの源泉徴収票を合計して、自身で確定申告をしなければなりません。年末調整をしていないため税額の精算ができていないからです。
《扶養控除等申告書を2ヶ所以上に提出する?》
不可能です。あさはかです。翌年には給与支払報告書によってばれてしまいます。また、給与支払報告書が提出されていなくても、税務署は税務調査の際に給与台帳(含む従業員の住所などの関連情報)をこまめに収集していますのでばれてしまいます。
《従たる給与を乙欄で源泉徴収しなかった場合》
税務署は源泉徴収漏れ(乙欄と甲欄の差額)を指摘します。納税するのは給料を支払った会社です。会社は給料を受け取った従業員に請求します。
《乙欄で源泉徴収されなかった》
確定申告をしておけば、後日会社に源泉所得税相当額を請求された場合に、会社に払った後に税務署から還付してもらえるからです。
「ありがたい会社(副収入になる)」「ありがたい人(必要なときに必要なだけ働いてくれる)」の良好な関係を継続させるためには、上記の扱いを双方が十分に理解しておく必要があります。
訳のわからないことをいうな。今までなんの問題もないぞ。
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