役員、正社員、アルバイト、パート
税金の扱いにおいては、みんな「給与所得者」です!
同じなのです。だから、源泉徴収も年末調整も必要なのです。
●役員
●正社員(管理職も含みます)
●アルバイト
●パート
世間一般、社内、労働関連法規においては大変重要な区分だと思います。処遇に相当違いがあるからです。しかし、税(所得税)においてはすべて同じ扱いです。いずれも所得税においては「給与所得」とされます。給与所得であるがゆえに支払時には所得税の「源泉徴収」が必要となります。また、主たる給与の場合には年末調整が必要です。
《勘定科目との関連》
勘定科目においては次のように区分して処理するのが一般的ですが、税(所得税)における扱いは同じとなります。
◆役員→役員報酬、役員賞与
◆正社員→給料手当、賞与
◆アルバイト・パート→給料手当、賞与
【雑給は源泉徴収が不要?】
アルバイトやパートの給与を「雑給」という勘定科目で処理しておけば源泉徴収は不要という考えがありますが、上記の説明で間違いであることをご理解いただけると思います。給与所得である以上は、勘定科目がどうであれ源泉徴収(年末調整)は必要です。
《毎月の給料と臨時の賞与》
いずれも給与所得であり源泉徴収や年末調整が必要となります。
《派遣社員》
派遣会社から派遣を受けている場合には事情が変わってきます。いわゆる「派遣社員」は派遣会社の社員(正社員、パート、アルバイトなど)であり、そこから給与を受け取っています。ですから源泉徴収や年末調整をするのは派遣会社ということになります。外形上、派遣社員はパートやアルバイトに近いかもしれませんが、派遣先の会社に雇用されているのではありません。
《外注》
外部の独立した業者(たとえ専属であっても)であるならば給与所得ではありませんので年末調整の必要はありません。ただし、特定の職業(デザイナーやライターなど)は「報酬料金」としての源泉徴収をして「支払調書」を発行しなければなりません。
《試用期間中の給料》
源泉徴収や年末調整が必要となります。あくまでも給与所得であるからです。
【事業所得か?給与所得か?】
年末調整が着々と進んでいるのに、いまだに「どの所得になるか」さえ決まっていない人が少なからずいます。所得税の計算では所得を10種類に区分して各所得ごとに異なる計算方法をすることから「どの所得になるか」は大変重要です。
よく問題となるのは事業所得と給与所得の区分です。
■事業所得とは?
【所得税法第27条 第1項】
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
所得税法の条文では、事業所得についてその種類が例示されているだけで事業そのものの意味については述べられていませんが、事業と呼ぶからには次のような要件を満たしていなければならないと考えられています。
●自己責任で行われていること
●営利性があること
●反復継続していること
●以上について客観的にも認められること
■給与所得とは?
【所得税法第28条第1項】
給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
事業所得同様、給与そのものの意味については述べられていません。しかし、下記の要件を満たしている場合にはそれによって得る所得は給与所得であるとされています。
●雇用契約が存在する
●使用者の指揮命令に服する
●使用者から空間的および時間的な拘束を受ける
●職務上の費用が使用者の負担となる
両者の区分が容易でない場合もあります。
事業所得者も顧客(給与所得者の場合の使用者)からの指揮命令や拘束は受け、サラリーマン(給与所得者)であっても過酷なまでの自己責任が求められることも多く上記の一般的な判断基準だけでは十分ではありません。ですから、事業所得と給与所得の区分についてはその区分を税務署に「変更させられた事例」を知ることにより判断の参考とするしかありません。
■事業所得を給与所得に変更される場合
実際にはこのケースが多いと思います。その理由は次のとおりです。
●源泉徴収をしたくない(されたくない)
支払者側としては計算や手続が面倒なので源泉徴収をしたがりません。また、受け取る側も手取が減るので源泉徴収を嫌います。このような安易な理由から給与所得を事業所得として処理することがあります。
●支払者が消費税の計算における仕入税額控除を受けたい
消費税の課税事業者が税務署に納付する消費税は、販売の際に受け取った消費税から、仕入や諸経費の支払いの際に支払った消費税を差し引いて計算します。給料や賞与(給与所得)は消費税の対象でないことから、消費税の対象である外注費など(事業所得)の名目で支払ったほうが納付する消費税は少なくなります。
●支払いを受けた者が申告をしていない
このような場合には、いまだに支払いを受けた者に課税がされておらず所得の区分もされていないので、税務署は給与所得として扱い源泉徴収をするよう促します。
■給与所得を事業所得に変更される場合
このケースは少ないと思いますが、次のようなことが実際にあり裁判にまでなりました。
●弁護士の顧問料は給与所得ではなく事業所得とされた
何が事業に該当するかは、様々な要素を考慮して最終的には社会通念で判断するしかありませんが、弁護士は依頼者との間に雇用関係はなく独立して業務を行っているので事業所得とされます。事業所得者によっては必要経費がほとんどない場合もあり、給与所得者となれば給与所得控除が認められ有利になることから、このような主張をする納税者も現れるのです。
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大阪市北区与力町1−5