勘定科目とは?
2020/1/8
勘定科目とは?(分類集計の単位)
勘定科目、「かんじょうかもく」と読みます。勘定科目は簿記(ぼき)の分類集計の単位です。簿記(正式には複式簿記)とは、企業の現金や預金などの動きを帳簿に記録して決算書を作成する方法のことです。簿記では個々の取引(主に入出金)を勘定科目に分類して集計し、各勘定科目を決算書に配列します。
試算表や決算書に触れたことのある人であれば、「現金」「預金」「売掛金」「受取手形」「備品」「買掛金」「支払手形」「借入金」「預り金」「売上」「受取利息」「仕入」「給料」「交通費」「通信費」「支払利息」と聞けばおわかりでしょう。試算表や決算書を読むには、損益計算書と貸借対照表のそれぞれの仕組みと両者の関係だけでなく各勘定科目の意味を知らなければなりません。
経理(試算表や決算書作成)の作業というのは、日々の入出金を中心とした取引を、この勘定科目に分類し集計するという非常に単調な作業の積み重ねです。しかし、昨今では分類(勘定科目)ごとの集計は会計ソフトがしてくれますので、勘定科目に分類する作業である仕訳が経理作業の大部分を占めるようになりました。
貸借対照表(資産=負債+純資産)と損益計算書(収益−費用=利益)
決算書は貸借対照表と損益計算書からなり、勘定科目も「資産」「負債」「純資産(資本)」にという貸借対照表に関する勘定科目、「収益」「費用」という損益計算書に関する勘定科目に分かれます。貸借対照表は「資産=負債+純資産(資本)」として会社の財政状態を、損益計算書は「収益−費用=利益」として会社の経営成績を表します。
資産とは?(一般的な意味での資産よりも広い概念)
勘定科目の資産は、「あの人は資産家だ」とか「これ(土地や株など)は資産としての価値がある」など、世間一般での資産の意味よりも広い概念です。
現金(硬貨と紙幣)、預金(銀行預金通帳の残高)、土地、建物、有価証券(株や債券)が資産であることは誰も疑いません。しかし、次のようなものが資産として扱われることに違和感を持つ人が多いです。
○売掛金(うりかけきん)
販売したけれども代金が未入金となっている部分の金額をいいます。いわば、現金や預金になる前の段階です。そう考えれば、資産であることに抵抗はありません。「本当に入金があるのかな?」、ごもっともです(笑)。しかし、このような場合についての処理もありますがここでは触れません。
○商品
仕入れた商品で未販売の部分は商品という資産として扱います。金額は仕入値です。いずれは、仕入値に一定の利益を上乗せして販売され現金や預金になります。そう考えれば資産です。「売れるかな?」、そのとおりです(笑)。しかし、このような場合についての処理もありますがここでは触れません。
○前払費用(まえばらいひよう)
すでに支払ったサービスの費用で、いまだにサービス提供を受けていない部分です。例えば家賃の支払期日が「翌月分を当月末まで」という契約になっている場合、家賃を支払った時点では前払費用となります。この前払費用が資産として扱われるのは簿記独特の理屈です。しかし、簿記の大原則である「発生主義」という考えを理解すれば、前払費用という資産として「処理しておくしかない」という結論にたどり着きます。
負債とは?
「○○社倒産、負債総額1000億円」といった具合に、負債という言葉は日常生活においてもよく聞きます。平たくいえば「借金」です。返さなければならないものです。しかし、勘定科目の負債の種類はもっと多種多様で、一般的な意味での負債よりも広い概念です。
○借入金(かりいれきん)
借金のことで負債の典型です。借りる先は金融機関のほか、会社の代表者や取引先があります。
○買掛金(かいかけきん)
仕入代金で支払いが済んでいないものをいいます。たとえ約束している支払期日がまだであっても、すでに仕入れているのであれば負債として認識します。一般的に負債として認識する時点よりも早く負債として認識するのです。
○未払金(みはらいきん)
仕入代金以外の給料、家賃、経費などで支払いが済んでいないものをいいます。上記の買掛金同様に負債として認識します。
純資産(資本)とは?
純資産とは資産と負債の差額で、資本や正味財産ともいわれます。純資産は次の勘定科目で構成されます(もっとも単純なケースです)。
○資本金
○繰越利益剰余金(期首繰越利益剰余金+当期利益)
「資本金」は設立当初の出資金額および設立後の追加出資金額のことで登記事項とされています。登記事項ですので、資本金は法務局で所定の届けをしなければ資本金とは認められません。
「繰越利益剰余金」は資本金の増殖部分で創業来の利益合計に一致します。さらに、繰越利益剰余金は期首繰越利益剰余金と当期利益に分かれます。期首繰越利益剰余金は前期から繰り越されてきた繰越利益剰余金です。当期利益は損益計算書の利益と一致します。この貸借対照表と損益計算書の利益の一致は「株主資本等変動計算書」という決算書を構成する書類をとおして確認することができます。
収益とは?
収益とは利益のプラス要素です。利益は「収益−費用」として計算しますので、収益が生じれば利益は増えます。収益に属する勘定科目は、商品の販売代金である「売上」、預金利息である「受取利息」、株の配当金である「受取配当金」などがあります。
収益に関して大切なことは、「収益=入金」ではないということです。収益と入金は異なる時点に生じることがあります。多くの場合、収益は入金に先行します。例えば、売上の場合、出荷や引渡しをした時点で収益として計上し、売上代金の入金は後からになります。入金がない収益が利益を増加させ、利益に課税される法人税も増加させるのです。いわゆる「発生主義」という考え方です。
費用とは?
費用とは収益(大部分が売上)を得るための支出(出金)ですが、商品の仕入代金である「仕入(売上原価)」のように売上という収益に直結するものと、事務所の家賃や光熱費のように直結しない(収益との関係が間接的な)ものがあります。
費用は必ずしも「費用=出金」とはなりません。費用と出金は異なる時点に生じることがあります。費用は出金に先行する場合も出金に遅れる場合もあります。先行する場合の典型は、「信用取引」により費用に関する支払いをしている場合です。ここでの信用取引とは、費用となる物品やサービスを購入して直ちに代金を支払うのではなく、約束をした一定期間経過後の支払日に代金を支払う取引のことです。出金に遅れる費用の典型は設備投資(工場の建物や機械の購入)です。設備投資に関する支出は減価償却という手続を経て複数の事業年度にわたって費用処理します。
資産と負債の貸借関係は会社を基準に考える
貸付金、借入金、立替金、預り金など、資産と負債には様々な貸借関係(貸した、あるいは借りたという関係)が背後に存在します。その際、あくまでも会社を基準に考える必要があります。なぜならば、会社の決算書(貸借対照表)だからです。「会社から○○に貸した(貸付金)」「会社が△△から借りた(借入金)」「会社が▽▽の分を立て替えた(立替金)」「会社が◇◇から預った(預り金)」と考えなければなりません。特に中小零細企業の場合、代表者(社長)と会社の貸借関係が多いですので注意が必要です。
仕訳(分類集計の最初の作業)
取引を認識して、勘定科目に分類集計する最初の作業が仕訳という分類作業です。仕訳は、次のような資産・負債・純資産(資本)・収益・費用の組み合わせで行われます。
収益が生じて資産が増えた
費用が生じて資産が減った
費用が生じて負債が増えた
負債が減って資産も減った
(これ以外のパターンもあります。)
いずれのパターンでも勘定科目が2つ生じます(厳密には2つ以上)。このような同時に生じる2つの勘定科目の変動を借方と貸方に分けて分類し、その勘定科目ごとに集計するのが複式簿記の特徴です。また、仕訳は借方と貸方が必ず一致します。
累計(損益計算書)と残高(貸借対照表)
仕訳で勘定科目別に分類された金額の集計結果には、累計(フロー)と残高(ストック)があります。累計とは一定期間における特定の勘定科目の増加の合計額です(積上げ計算)。残高とは一定期間の増加累計から減少累計を差し引いた金額です(差引き計算)。だだし、累計も残高も計算結果であることから、帳簿などで勘定科目を表示するにあたっては「残高」という言葉を用いています。
損益計算書勘定科目の残高は増加=発生という累計に一致します(減少=取り消しという累計がある場合はこれを差し引きします)。貸借対照表勘定科目の残高は、一定期間が始まる時点の残高を加味して、「期間初めの残高+期間中の増加累計−期間中の減少累計=期間終わりの残高」として計算します。このことは、一定期間(一事業年度)の売上や仕入(損益計算書)、一定時点(事業年度末)の売掛金や買掛金(貸借対照表)の計算を考えていただくと理解できます。
補助科目(勘定科目を細分化したもの)
特定の勘定科目を細分化する場合があります。普通預金という勘定科目を銀行別に、売掛金を得意先別にといった具合です。この細分化された単位を補助科目といいます。会計ソフトにおいても補助科目が設定できるようになっていることが通常です。
試算表や決算書は勘定科目単位で表示しますので補助科目の名称や金額は表示されません。補助科目の名称や金額は「勘定科目内訳明細書」などと呼ばれる独立した帳票の中に記載します。普通預金ならば銀行ごとの金額を記載しその合計が普通預金という勘定科目の金額に一致するように記載します。
会計ソフトと勘定科目
会計ソフトの入力画面は仕訳形式になっています。ですから、「借方勘定科目」と「借方金額」、「貸方勘定科目」と「貸方金額」を入力しなければなりません。ただし、借方・貸方のいずれかを入力すればよい場合もあります(現金や預金取引のように片方はあらかじめ固定されている場合)。
会計ソフトによっては、勘定科目は取引内容である摘要の文字情報から決定するというものもあります。また、入力画面が仕訳を意識させない形式となっているものもあります。しかし、この場合も入力データはソフトが「仕訳に変換」しています。
仕訳における勘定科目の金額
取引の仕訳では、勘定科目と共に金額を決めなければなりません。現金取引であれば実際の入出金額どおりの金額にします。売上(売掛金)であれば請求した金額、仕入(買掛金)であれば請求のあった金額になります。難しいのは、自身で金額を計算しなければならない場合です。例えば、出金取引で領収書の金額が複数の勘定科目に分かれ、領収書からは直ちに分かれる金額が判明しない場合です(請求書や見積書で検討しなければなりません)。
勘定科目の残高を確認(検算)する
勘定科目の残高は確認(検算)することができます。現金ならば手元に有る硬貨と紙幣の合計金額、預金であれば預金通帳の残高、売掛金であれば未入金の請求書の金額に一致します。損益計算書に関する勘定科目(収益と費用)の場合は少し面倒です。売上であれば、その残高を集計した期間の請求書や店売りの金額を全て集計しなければなりません。交通費であれば、すべての交通機関の利用状況を集計しなければなりません。残高の確認(検算)が面倒な勘定科目もありますので、仕訳の段階で勘定科目と金額を正確に決めるということが大切なのです。
総勘定元帳(勘定科目ごとに作成する)
勘定科目ごとの増加減少、残高(損益計算書科目の場合は累計)を明らかにするために作成されるのが総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)です。総勘定元帳は、その勘定科目の仕訳が生じる都度、その仕訳の金額と内容が記載されます。総勘定元帳を見れば、その勘定科目の個々の増加減少と結果としての残高を知ることができます。
総勘定元帳は試算表(全ての勘定科目の集約表)に転記され、この試算表が決算書へとつながります。総勘定元帳は仕訳で勘定科目に分類された取引を試算表、最終的には決算書につなぐという重要な帳簿なのです。会計ソフトの主要な機能は、この総勘定元帳、試算表、決算書を作成することです。