税金の裏技!?

 

税務署と徹底的に戦う!!

「裁判で争う」

 

 

1 修正申告をするということの意味?

 

税務署と徹底的に戦うという姿勢の場合には、まずは税法の条文をよく読んで解釈し、ご自身が「これが正しい」と確信した方法で申告してください。そして、後日の税務調査で税務署に問題点として指摘されたとしても修正申告に応じないことです。

 

修正申告に関して注意しなければならないのは、修正申告はあくまでも「納税者の意思」に基づき「自主的に」行うということです。税務署の指摘事項に納得できない場合(税務署の税法解釈や事実認定に納得できない場合)は、安易に修正申告する必要はありません。

まれにあることなのですが、本来は納税者が作成すべき修正申告書を税務署が作成し「これに判を押してください」といわれ、納税者がそれに判を押し調査が終了してしまうということです。これは、税務署の指摘事項が税法解釈と事実認定において明らかに正しい場合には、「悪あがきする納税者」に対してのやむを得ない手段かもしれません。しかし、修正申告をしてしまうと税務調査は終了してしまいます。(もはや、指摘事項について争うことができません。)

 

「これ(修正申告書)に判を押してください」に対して、絶対に「盲従」してはいけません。

 

2 税務署が行う更正(あるいは決定)

 

納税者が一向に修正申告をしない場合には、やがて税務署は「更正(強制的に不足税額を確定すること)」をしてきます。ただし、その前に税務署は相当執拗に修正申告を促してきます。この「更正」に対して不服がある場合には次のような手順で争うことができます。

 

(1)税務署長への異議申立て

更正を受けた日の翌日から2ヵ月以内に手続をしなければなりません。

 

(2)国税不服審判所長への審査請求

異議申立ての結果(決定)に不服がある場合には1ヶ月以内に手続をしなければなりません。

 

(3)裁判

審査請求の結果(裁決)に不服がある場合には、6ヶ月以内に手続をすることにより裁判に持ち込むことができます。(裁判になる前の段階で納税者の主張が認められることもあります。)

 

納税者が、税務署の違法な課税処分について法廷で争えるのは当然です。しかし、法廷で争われること、法廷で納税者の主張が認められることが、極めて少ないのが実情です。これは、税務調査が明らかな(もはや争う余地のない)修正事項がありそうな納税者に対して重点的に行われる傾向にあることによります。歪(いびつ)な申告はすぐに見破られます。また、税法は大変精密にできており、特定の納税者にとって都合のよい解釈が入り込む余地は極めて少なく課税の公平性が確保されています。そんなことから、真に争うに値する出来事が少ないのが実情です。

 

しかし、歴史に残る租税訴訟も多数あり、納税者の勝敗にかかわらず、後の税制や税務行政に重大な影響を与えていることもあります。ご自身のためだけではなく、よりよき税制と税務行政を実現するためにも、まずは、一石を投じてみてください!!

 

【更正と決定】

上記のとおり「更正」は納税者が行った申告を税務署が正しい金額に計算し直すという処分です(納税者は不足する税額を納付しなければなりません)。納税者が申告そのものをしていない場合には「決定」という処分によって税務署が税額を計算することになります。この決定の場合にも、不服があれば上記と同様の手続によって税務署と争うことができます。

 

【税務署を無視する】

最も損な方法です。なぜならば、税務署と争うには上記のとおりの手続を一定期間内にしておく必要があるからです。税務署を無視し続けていると、税務署の処分が正しいということが確定してしまいます。そして、更正の結果確定した税額を納付しない場合には滞納処分(差押えなど)となってしまいます。

 

 

【ご注意】

裁判に関する手続や裁判での弁護ができるのは「弁護士」のみです。

 

税理士は裁判に関する手続はできません(裁判になる前の異議申立てと審査請求の手続はできます)。裁判に関する手続ができるのは「弁護士のみ」です。税理士にも「補佐人」としての出廷陳述権は認められていますが、その裁判における役割は補助的であるのが実情です。弁護士は税理士となる資格を有しますので、ご自身の主張を裁判において徹底的に争うというお考えの場合には、当初の申告から弁護士に依頼しておくのがよいかもしれません(すべての弁護士が税理士業務を行っているわけではありません)。

 

もっとも、租税(税務)訴訟を手がけている弁護士は少数であるのが実情です。訴訟件数が少ないからでしょうか?勝訴の確率が低いからでしょうか?(当然、訴訟についての弁護士報酬は納税者の負担となります。)裁判により争えるのは、更正について(税額を増額する理由)だけでなく、税務調査の方法(日時、場所、質問方法など)についても争えます。ごくまれに、違法な税務調査が行われることがあります。その際は争ってみることです。

 

 

裁判の例

 

【納税者勝訴】

 

■亡夫が保険料を支払った生命保険の死亡保険金を残された妻が年金として受け取った場合に相続税と所得税を二重に課税することはできない。

所得税法第9条(非課税所得)で、「次に掲げる所得については、所得税を課さない」として、その中のひとつに「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」を掲げています。相続により財産を得ること(例えば、父親の死亡により父親の不動産が自分のものになる)は、労働により給与をもらうこと同様に「所得」であると考えられますので相続税だけでなく「所得税」も課税されることになります。しかし、これでは税負担が重くなり過ぎるという「国民感情」に配慮して、相続税と所得税は二重には課税されないようになっているのです。しかし、長年の税実務において、「死亡保険金を年金として受け取る権利」には相続税が、「受け取った年金」には所得税が課税されていました。両者は別物であると考えていたからです。しかし、受け取った年金の一部には相続税が課税済みであるので、その部分に所得税を課税するのは二重課税に該当し違法であるとの判決が下されました。

 

■違法な税務調査(質問検査権の行使)

税務調査の方法は社会通念上相当であるならば調査官(税務署職員)の判断に委ねられていますが、次のような調査の方法は違法であるとされました。

「納税者宅に無断で立ち入る」

「カバンを強引に奪って調べる」

 

【納税者敗訴】

 

■弁護士である夫が税理士である妻に支払った税理士報酬は必要経費にはならない。

現行の所得税法は家族間で所得を分割すること(累進税率に着目して家族それぞれの税率を下げて家族トータルでの税額を少なくする)を防止するため、事業所得者(弁護士も事業所得者)が家族に支払った対価(この裁判の場合には妻への税理士報酬)は特定の場合(青色専従者給与、専従者控除)を除いて必要経費に算入できないとしていることを尊重しました。

弁護士でも租税訴訟には敗れるのです(下記でも敗れています)。

 

■弁護士の顧問料は給与所得ではなく事業所得である。

何が事業に該当するかは、様々な要素を考慮して最終的には社会通念で判断するしかありませんが、弁護士は依頼者との間に雇用関係はなく独立して業務を行っていることから事業所得とされました。

事業所得者によっては必要経費がほとんどない場合もあり、給与所得となれば給与所得控除が認められ有利になるので、このような主張をする納税者も現れます。

 

■会社の役員報酬は同種・同規模の役員報酬の支給状況を参照して決めなければならない。

同種・同規模の役員報酬の支給状況などそう簡単に知ることはできませんが、裁判では知ることができるという前提で判断されました。(役員報酬のうち不相当に高額な部分は会社の損金とは認められません。)

 

■消費税の仕入税額控除は帳簿や請求書などに相手方の氏名や住所などが記載されていない場合には認められない。

仕入税額控除とは、消費税の課税事業者が納付する消費税額を計算するにあたって控除できる(受け取った消費税から差し引ける)額のことをいいます。裁判では、消費税の条文どおりに厳格に判断をしています。

なお、帳簿や請求書などがあっても税務調査でそれらを提示しない場合も仕入税額控除は認められません。

 

判決では税法の条文の文言を尊重しています。

税法の条文は膨大でしかも緻密に作られています。そんなことから、裁判官は条文の文言にできる限り忠実な判決を下すのです。

わが国が法治国家であり、税に関しては租税法律主義(憲法84条で租税を課すには法律の定めによるとしている)であることからすれば当然かもしれません。しかし、実情にそぐわない条文までも杓子定規に適用するのは納税者にとって酷だと思います。

 

《不確定概念》

不確定概念とは条文中の抽象的・多義的な概念をいい、例えば「不当に減少させる」「不相当に高額」「相当の理由」などがこれに該当します。

税法の目的が課税の要件を明確に定めることからすれば、可能な限りこのような概念は用いるべきではありません。法の趣旨からしてその意義が特定される場合はまだしも、主観的判断が介入する場合には納税者としては戸惑います。

 

《通達》

通達とは、国税庁長官が国税庁内部で発する「法令の解釈」や「税務行政上の指針」です。税金の計算要素は多種多様で日進月歩の事象を対象としているために、税法の解釈について見解が分かれることもめずらしくはありません。そこで、税務行政の統一性を図るために通達が発せられています。あくまでも通達は、国税庁内部(国税局、税務署含む)の指針に過ぎませんが、納税者側が争わない限り事実上納税者を拘束します。なお、通達は納税者に国税庁の正式な統一的見解を示すことにより、公正な税務行政を実現する役割も果たしています(通達の多くが公表されています)。

 

 

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