土地建物等の譲渡をした場合の所得税(4/4)

 どこへ相談すればよいか?

 

目次

 

 

1 会計事務所(税理士)

 

事業を行っておりすでに依頼している会計事務所(税理士)がある場合は、そこに相談することです。ただし、土地建物等の譲渡所得の申告は大変複雑であることから、別途報酬を請求されることが普通です。

非事業者や会計事務所に依頼していない事業者にとっては、会計事務所は「敷居」が高いと思います。まずは、下記2〜4の費用のかからない方法により、「自分では手に負えない」場合にのみ会計事務所に依頼することが賢明かと思います。

 

2 無料税務相談所

 

確定申告の時期に各地区で開催され税理士が対応します。大変親切に教えてくれますので、是非ともご活用ください。ただし、税務相談の対象者を一定の所得金額以内に制限している場合もありますので注意が必要です。

なお、相談にあたっては譲渡の事実関係を把握できる次の資料を持参してください。

●譲渡資産の売却日、売却収入、売却先などがわかる資料(売買契約書など)

●譲渡資産の取得価格(買値)や取得時期がわかる資料(売買契約書、登記簿謄本など)

 

3 税務署

 

近寄り難いかもしれませんが、最終的には向き合うしかありません。なお、電話で、しかも匿名での相談にも応じてくれますので、まずは電話してみることです。

「正直に具体的なことをしゃべると、税金をむしり取られる」は偏見です。無申告でいるとやがて税務署から呼び出され、さらに多くの税金を払う羽目となります(本来の税額以外に無申告加算税、延滞税などが課税されます)。

 

4 不動産業者・金融機関など

 

一番相談しやすいかもしれません。しかし、「顧客サービス」「販促活動の一環」として相談を行っている場合も多く、最終的な結論を得ることはできないことが多いと考えなければなりません。後日行われる税務調査のトラブル処理に苦慮するので明言を避けたり、提携している税理士を紹介する傾向にあります。

 

《いつ買ったか?いくらで買ったか?どのような申告をしたか?》

 

土地建物等の譲渡による所得は、「いつ買った」「いくらで買った」「どのような申告をした(自身および相手先)」によって大きく異なってきます。しかし、これが不明瞭であることが多いのが実情です(特に取得から譲渡の期間が長い場合)。土地建物等を保有することになった場合には将来を考慮して、このことについての確かな記録や証拠を残しておく必要があります。そうでないと、誰に相談しても納得のいく結論が得られません。

 

《購入時の借金が残っている土地建物等を売却した場合の利益の計算》

 

土地建物等購入時の借金が残っている状態で売却した場合の利益の計算は次のとおりです。

 

【1】購入価額1400万円

【2】残っている借金1300万円

【3】売却時の簿価1000万円

【4】売却価額1200万円

 

売却による利益は、【4】売却価額1200万円−【3】売却時の簿価1000万円=200万円となります。

 

簿価とは購入価額から建物の減価償却分(時の経過による物理的・機能的な価値の減少)を差し引いた金額です。減価償却分は不動産を事業用としている場合には費用処理されています。利益の計算において減価償却分は、使用することで投資額を回収していると考えるのです(事業用でない場合もこう考えます)。

 

次のような計算をする人がいますが、いずれも間違いです。

 

【4】売却価額1200万円−【1】購入価額1400万円=マイナス200万円(損失)

 

これでは減価償却による目減り分が減額されていません。

 

【4】売却価額1200万円−【2】残っている借金1300万円=マイナス100万円(損失)

 

売却代金を借金の返済に充てる場合の「収支」はこうなるかもしれません。しかし、売却による利益はこうではありません。借金の額は購入価額の全部あるいは一部なのです。

 

《税務署で知り合いにばったり会った(納税者のプライバシー)》

 

「税務署で知り合いにばったり会ったらどうしよう・・・」、このような心配をする人も多いです。というのは、税務署の相談コーナーは個室ではありませんので、「他の納税者と隣り合わせになる」「税務署員との会話が他の納税者に聞こえてしまう」「申告書や添付書類が他の納税者に見えてしまう」こともあるからです。

 

このような状況下では確定申告はできないという方には次の方法をおすすめいたします。

 

■電話相談を利用する

各地区国税局が行っています。匿名でも相談に乗ってもらえます。納得いくまで、何時間でも相談に乗ってもらえます。

 

■遠方の相談会場を利用する

税務署以外の場所で臨時に開設されている相談会場の中には税務署の管轄は問わないところもありますので、できるだけ住所地から遠い(知り合いのいない地域の)相談会場を利用すれば知り合いに会う心配もありません。

 

■顔を隠す(帽子をかぶりマスクを着用する)

ヘルメットやサングラスは他の納税者に不快感や恐怖心を与えますので税務署員からも注意されるでしょう。しかし、帽子とマスクならばOKだと思います。

 

■申告書を郵送あるいは電子申告で提出する

この方法でしたら申告書を一切見られることはありません。

 

★税務署員が知り合いだった!

知らないふりをしましょう。日を改めるのもよいかもしれません。