土地建物等の譲渡をした場合の所得税(2/4)

土地建物等の譲渡をした場合の課税上の特例と申告

 

目次

 

 

3 特例

 

土地建物等を、買換えたり、交換したり、収用された場合にも普通の売買と同じようにその譲渡所得に所得税が課税されます。しかし、これらのうち一定の条件を満たすものについてはその必要性や取引の実質に着目して、譲渡所得がなかったものとしたり、軽減したりして通常の譲渡よりも有利に扱う特例が設けられています。その特例の一部を紹介いたします。

 

(1)居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3000万円まで控除ができる特例があります。

 

(2)マイホームを売ったときの軽減税率の特例

自分が住んでいたマイホーム(居住用財産)を売って、一定の要件に当てはまるときは、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例を受けることができます。

 

(3)住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)

住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却して損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。

 

(4)特定のマイホームを買い換えたときの特例

特定のマイホーム(居住用財産)を売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません。)。

 

(5)保証債務を履行するために土地建物などを売ったとき

保証債務を履行するために土地建物などを売った場合には、所得がなかったものとする特例があります。保証債務の履行とは、本来の債務者が債務を弁済しないときに保証人などが肩代りをして、その債務を弁済することをいいます。

 

(6)相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続により取得した土地、建物、株式などを、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるというものです。

 

(7)事業用の資産を買い換えたときの特例

事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等を譲渡して、一定期間内に特定の地域内にある土地建物等の特定の資産を取得し、その取得の日から1年以内に買換資産を事業の用に供したときは、一定の要件のもと、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません。)。 

 

(8)土地建物の交換をしたときの特例

土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例があり、これを固定資産の交換の特例といいます。

 

 

4 譲渡損失などが生じた場合の計算

 

(1)譲渡損失とは

譲渡損失とは、収入金額から取得費や譲渡費用を差し引いた金額がマイナスとなる場合の金額のことをいいます。当然、所得税は課税されません。

 

(2)譲渡損失と他の所得との損益通算

土地建物等の譲渡所得の損失は、居住用財産の買換えに伴う譲渡損失(買換え後に住宅ローンがある)、特定居住用財産の譲渡損失(買換え前に住宅ローンがある)を除いて他の所得とは損益通算できません。また、他の所得が損失であっても土地建物等の譲渡所得からは控除することはできません。

 

(3)損失の繰越控除

上記(3)の居住用財産の買換えに伴う譲渡損失と特定居住用財産の譲渡損失を他の所得と損益通算してもなお損失が残る場合には、翌年以降に損失を繰り越して翌年以降の所得から控除することができます。

 

《資産が損害(地震、火災など)を受けた場合》

●事業用資産の場合

事業所得や不動産所得の計算において「必要経費」(保険金や損害賠償金で補填された部分は除く)とすることができます。なお、その年度の事業所得や不動産所得から差し引けない場合には、青色申告者でなくとも翌年以降3年間の繰越控除が認められます。

●非事業用資産の場合

損害額(保険金や損害賠償金で補填された部分は除く)が、その年度の各種所得の合計額の1割を超えている金額、あるいは5万円を超えている金額のいずれか多い金額を「雑損控除」として所得の合計額から控除します。なお、その年分の所得で控除しきれないときは、翌年以降3年間の繰越控除が認められます。

 

《譲渡代金の貸倒れ》

譲渡代金の全部もしくは一部が回収できなくなった場合には、その回収できなくなった金額に対応する所得は、譲渡所得の計算上なかったものとされます。なお、譲渡所得の申告後に回収できなくなったときには、その事実が生じた日の翌日から2か月以内に「更正の請求」をして譲渡があった年分の所得税の減額更正を受けることができます。

 

 

5 申告と納税

 

(1)提出先と申告期限

納税者の住所地を管轄する税務署に、2月16日から3月15日までの間に提出しなければなりません。

 

(2)特例の適用を受ける場合

上記3の特例を受ける場合には、特例の適用を受ける旨と所定の書類を提出しなければなりません。なお、特例の結果、税額がゼロとなる場合であっても申告書を提出する必要があります。