試算表(その仕組み)3/8
築山公認会計士事務所
≪総勘定元帳≫
1 総勘定元帳の意味するもの
個々の仕訳が勘定科目ごとに行われ、その結果として各勘定科目の集計が行われることは前述のとおりです。総勘定元帳は各勘定科目を個々の仕訳から集計する手段であるとともに、複式簿記ひいては現行企業会計における重要な記録資料でもあります。後日、各勘定科目の内容を検討する必要が生じた場合、総勘定元帳で個々の増減内容(取引=仕訳)を確認していく必要があるからです。これは企業内部だけでなく、公認会計士監査や税務調査でも行われることです。
総勘定元帳の一般的な様式は次のとおりです。
日付 |
摘要 |
相手勘定 |
借方 |
貸方 |
残高 |
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【日付】
仕訳をした取引の年月日(通常は月日のみ)を記入します。
【摘要】
取引の内容を簡潔明瞭に記載します。
【相手勘定】
仕訳した際の相手勘定を記入します。「現金から交通費を支払った場合」、仕訳としては「(借方)交通費○○(貸方)現金○○」となりますが、現金勘定の総勘定元帳の相手勘定欄は「交通費」となります。
【借方】【貸方】
作成する総勘定元帳の勘定科目により記入方法は異なります。たとえば、資産勘定科目が増加する仕訳をした場合は資産勘定科目の総勘定元帳の「借方」に、収益勘定科目が発生する仕訳をした場合は収益勘定科目の「貸方」にその金額を記入します。つまり、勘定科目の属性によって借方と貸方の意味が異なってくるのです。
【残高】
資産勘定科目 借方(増加)−貸方(減少)=残高
負債勘定科目 貸方(増加)−借方(減少)=残高
資本勘定科目 貸方(増加)−借方(減少)=残高
収益勘定科目 貸方(増加)−借方(減少)=残高
費用勘定科目 借方(増加)−貸方(減少)=残高
(注)収益と費用勘定科目については、「残高」というよりも「累計」といったほうが正しいかもしれませんが、総勘定元帳では残高という言葉を使います。なお、収益と費用の減少とは、返品や値引きにより当初の金額が修正される場合です。
《T字型総勘定元帳》
複式簿記の教科書では総勘定元帳を次のように表現していることが通常です。
(借方)○○勘定(貸方)
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いわゆる「T字型総勘定元帳」と呼ばれるもので、左右(借方と貸方)に行われる仕訳の発想とマッチし転記も容易に行えます。そんなことから学習上はこの様式が用いられます。また、実務においても思考したり説明したりするときには用いられますが、記録形式として用いることはありません。
《繰越残高》
上記で残高を次のとおりに表現しました。
資産勘定科目 借方(増加)−貸方(減少)=残高
負債勘定科目 貸方(増加)−借方(減少)=残高
資本勘定科目 貸方(増加)−借方(減少)=残高
しかし、事業年度で考えれば前年度からの繰越残高があるはずです。現金、預金、売掛金、買掛金などは常時残高があり、年度末の残高が翌年度に繰り越されます。
資産勘定科目 年度初め残高+借方(増加)−貸方(減少)=年度末残高
負債勘定科目 年度初め残高+貸方(増加)−借方(減少)=年度末残高
資本勘定科目 年度初め残高+貸方(増加)−借方(減少)=年度末残高
残高は一定期間の増加減少だけではなく、前年度の繰越残高も考慮しなければなりません。そこで、総勘定元帳の残高欄の最上段には前年度からの繰越残高を記入することになります。
なお、収益と費用には繰越残高はありません。なぜならば、資産、負債、資本が一定時点で把握されるストックであるのに対して、収益と費用はストック(資産と負債)の増減原因である一定期間のフローであるからです。フローは一定期間で測定したならば、次の期間はゼロからのスタートとなります。
2 試算表への転記
総勘定元帳の残高を試算表に転記します。その際の試算表の記入位置(左右すなわち借方と貸方)は次のとおりです。
(1)資産勘定科目 借方
(2)負債勘定科目 貸方
(3)資本勘定科目 貸方
(4)収益勘定科目 貸方
(5)費用勘定科目 借方
《合計試算表》
合計試算表の場合には、総勘定元帳の借方と貸方の合計を転記します。そして、残高(損益計算書勘定の場合は累計)は、合計試算表の貸借を差し引きすることにより計算します。