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会社設立ワンポイントアドバイス

 

会社設立(法人成り)による節税メリットのインチキ!!

税理士(会計事務所)は、会社設立をすすめるけれど・・・

2011年9月16日現在

 

「会社」は節税のためにある制度ではありません!!

いままで会社が節税の手段となったのは、単なる歴史的偶然です。

 

大阪市北区与力町1−5

築山公認会計士事務所・築山哲税理士事務所

 

 

個人事業者のほうがいいのだろうか?

「会社から個人事業者に変更したい(個人成り)」

安易に会社を設立して後悔する人が後を絶たないのが実情です・・・

 

 

世間には、「会社設立の節税メリット」をうたい文句にした税理士(会計事務所)の宣伝が目立ちます。「節税メリットから税理士(会計事務所)報酬を差し引いてもおつりが来る?」という文句です。しかし、そのメリットを得るためには相当苦痛が伴うことを忘れてはいけません。会社設立後は記帳の労力だけでなく、税理士(会計事務所)報酬、社会保険料(厚生年金・健康保険)、登記費用など計り知れないコストがかかります。

 

★会社を設立すると、個人のころ課税の対象となっていた「事業所得」が役員給与(役員報酬)という「給与所得」になり、そこから「給与所得控除」を差し引けるので、その分節税になる

 

会社設立の節税メリットの典型です。税理士(会計事務所)のセールストークです。この説明で、多くの人が役員給与(役員報酬)は会社の利益状況に応じて臨機応変に変更でき、結果として法人税が課税される会社の利益をゼロにできると思い込んでしまいます。

 

しかし、これには大変な落し穴があります。この説明は、役員給与は、役員の職務内容に応じて、「一定の期間(少なくとも一年程度)」「一定の時期(通常は毎月)」「一定金額を定額」で支給するものでない限り損金算入(費用処理)を認めないという、「法人税法の鉄則」を隠したインチキの説明です。法人税法では、役員給与を頻繁に変更することで、法人税が課税される利益の操作をすることを防止しているのです。

 

依頼者・・・役員給与(役員報酬)が高いと所得税も社会保険料も高くなるので下げてもいいですか?

 

会社設立後、業績が悪化したときに、税理士(会計事務所)にそのような相談をすれば、税理士(会計事務所)は次のように答えるでしょう。

 

税理士・・・役員給与はそう簡単には変更できません。そのうち業績も上向くでしょうから変更してはいけません。

 

結局、「取れもしない役員給与」についての高額な「所得税」「住民税」「社会保険料」を支払う羽目になります。帳簿処理上は、いったん役員給与を支払い、直ちにその役員から借りたという扱いにするのです(役員にすれば会社に貸している)。これでは、会社設立後の役員給与は個人事業者時代の事業所得を上回り、せっかくの給与所得控除を活かすことができません。

 

さらに、その苦しみの最中、「役員変更登記費用(株式会社の場合には役員の顔ぶれに変動が無くても定期的な役員再選の登記が必要です)」「住民税の均等割(会社が赤字でも納める税金)」が襲いかかってきます。

 

依頼者・・それなら、役員給与以外の名目で(所得税が課税されない方法で)会社からお金を引き出す方法はないのですか?

 

と相談すれば、税理士(会計事務所)は血相を変えて(会社設立手続を依頼したときとは別人のように)、

 

税理士・・・私の顔に泥を塗るのですか!そんな方法はない。法人税法と所得税法は当然として、憲法、民法、会社法いずれにおいても許されない方法だ。もし、領収書を偽造しようものなら犯罪だ!!

 

と答えるでしょう。

 

税理士(会計事務所)と依頼者が喧嘩別れする、典型的パターンです。

そのほか、「税理士(会計事務所)が入金もないのに売上に含めることを強要(?)した」「税理士(会計事務所)が登記(?)を忘れていた(登記は司法書士の仕事です)」「税理士(会計事務所)が融資を受けやすい決算書を作ってくれない(そんなものはありません)」などが喧嘩別れの原因の上位にあげられます。しかし、これで契約解除される税理士(会計事務所)は大変気の毒といえます。

 

税理士(会計事務所)にとって都合のよい会社設立が目立ちます。なぜならば、会社にすると税務申告が複雑になり、素人では行うことができず、依頼者に逃げられなくなると同時に報酬も大幅に上がるからです。税理士(会計事務所)は高度成長期における「対税務署の用心棒(おまじない)」にしかすぎません。税理士(会計事務所)によっては、会社設立の理由として「事業拡大」「事業永続」「経営管理の強化」などもっともらしいことを語りますが、そのような税理士(会計事務所)に限って、いざとなったときに一切あてになりません(相談に乗ってくれるとしても追加で報酬の請求をしてくるでしょう)。

 

「いざというとき、個人成り(会社から個人事業者する)の方法はあるのか」

「個人成りの手続をしてくれるのか」

「その費用はいくらか」

「会社にすることにより(税理士との)半永久的な顧問契約を強要しないか」

 

必ず、税理士(会計事務所)に確認してから法人成りしてください。

 

 

会社の利益に対する法人税率と役員給与に対する所得税率

 

わが国の法人税率は30%です(このほかに住民税と事業税が課税されますが、ここでは度外視します)。一方、給与所得として所得税の課税対象となる役員給与の所得税率は5〜40%です(このほかに住民税が課税されますが、ここでは度外視します)。

わが国の中小零細企業の多くは大企業の下請け的存在であり、その収益は大企業の場当たり的な経営方針に大きく左右され、そう簡単には儲けさせてはもらえません。そんなことから、中小零細企業経営者の役員給与の所得税率も10%か、せいぜい20%(注1)に甘んじていることが大半です。つまり、突発的に利益が出て30%(注2)の法人税が課税されるのは、中小零細企業にとっては大変負担感があるのです。このような事態を避けるために、業績不振時も役員給与を減額せず(当然受け取れません)に赤字を累積させているのが実情です。ある年度に計上された赤字は翌年度以降7年間繰り越して、利益の出た年度の利益から差し引くことができます。

しかし、これでは(赤字では)金融機関の評価が下がりますので、業績不振時もわずかな利益を計上しておきます。利益を計上するにあたっては、役員給与を減額すると役員の保証人としての能力が低下するので(中小零細企業の場合には役員が個人保証するのが通常です)、大幅な経費削減によらなければなりませんが、それにも限度があります。そこで、交際費などは役員のポケットマネーから支払い、会社の帳簿には表れないようにしているのが実情です。

当然、このままでは、突発的に利益が出た年度に大慌てすることになります。

 

(注1)給与総額に対する所得税の比率となれば、さらに低くなります。給与総額からは給与所得控除が差し引かれ、さらにそこから各種の所得控除(基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除など)を差し引いた金額に対して所得税は課税されるからです。

(注2)資本金が1億円以下の会社の場合は、利益が800万円以下の部分については22%です。

 

《税理士(会計事務所)による業績予測!?》

税理士(会計事務所)によっては、適正な役員給与の決定と法人税対策のために「業績予測」をしていることもあります。しかし、その業界のプロである経営者でも予測できないことを、その業界については「ど素人」である税理士(会計事務所)に予測などできるはずがありません。

これは、よくあることなのですが、税理士(会計事務所)によっては「節税商品(生命保険など)」を扱っており、その「販売促進」のために業績予測をするということです(利益が出ることを誇張して節税商品を薦める)。また、会計ソフトに業績予測(予算作成)機能があり、作成書類増加による報酬アップために業績予測をすることもあります。

税理士(会計事務所)の「社長、業績予測をしてみましょう!!」には注意が必要です。

 

 

役員のボーナス

 

これが、会社設立の節税メリットを吹き飛ばしてしまう諸悪の根源(?)です。法人税の計算上、定期・定額で役員に支給する役員給与は役員の労働の対価として費用処理できますが、不定期(利益が出たときなど)に役員に支給するボーナスは利益の分配(利益調整)であるために費用処理が認められません。つまり、役員給与は会社が収益を上げる、会社を維持するための費用とされますが、役員のボーナスは結果としての利益を役員に分配するものであるため、費用とはならないのです。

 

《高額な役員給与》

役員の職務内容からして高額な役員給与(非常に抽象的な概念です)は費用とはなりません。これも、「法人税法の鉄則」です。中小零細企業の収益状況は、そう簡単に予測できません。また、偶然に儲かることもあります。場当たり的な役員給与の変更は、税務署から物言いがつく可能性が大いにあります。

 

《事前に税務署に届けた役員のボーナスは費用とできる》

事業年度開始から3ヶ月以内に、支給時期や支給額を税務署に届けておけば、役員のボーナスを費用とすることができます。ただし、事前の届けに反するような方法(時期と金額)でのボーナスの支給は費用とは認められません。

 

 

税理士(会計事務所)が役員給与を減額しないもう一つの理由

 

多くの税理士(会計事務所)は、会社設立に際して「夢」を語ります。「事業拡大(金儲け)のお手伝いをさせていただきます」などといって、経営者の意識を高揚させます。そうでないと報酬をもらえないからです。このようにして会社を設立した以上は、経営者を意気消沈させるわけにはいきません。「役員給与削減=事業縮小」などは御法度です。また、「役員給与削減=税理士(会計事務所)報酬削減」となることを恐れます。そんなことから、税理士(会計事務所)は、会社がどんな窮地にあろうとも「精神論」を貫き通します。

税理士(会計事務所)は、税の専門家であって経営コンサルタントではありません。税理士(会計事務所)の精神論には、くれぐれもご注意ください。最悪の場合には、傷を深くしてしまいます。

 

《税理士(会計事務所)報酬の保全?》

これは、実際にあったことなのですが、税理士(会計事務所)が自身の報酬を確保するために、税額が低くなるように違法な処理をするということです。特に、業績不振でも納税が必要な消費税や源泉所得税において目立ちます。当然、後に延滞税や加算税(高利貸し並の率です)をプラスして納税しなければなりません。

「先生(税理士)、苦しいので(消費税や源泉所得税を)なんとかしてくれ」の誘惑に負けてはいけません。このよう場合には、税理士(会計事務所)との契約を即刻解除し、「個人成り」か「廃業」を検討してください。それでも、税理士(会計事務所)が態度を変えない場合には、「そんなに会社を維持したいのでしたら、新規取引先を紹介してください、無利息でお金を貸してください、保証人になってください」と告げて突き放すしかありません。

 

《税理士(会計事務所)の大企業コンプレックス?》

わが国の大企業のほとんどは人材も豊富で、税理士(会計事務所)には依頼せず自社で経理業務を行っています。依頼しているとしても、大物(?)国税局OBをいやいや受け入れているに過ぎません。もっとも、最近ではOBの受け入れを拒む企業も増えているそうです。また、大企業の経営者はいわゆるサラリーマン社長であり、姑息な節税には興味はなく業績の維持拡大を志向します。さらに、大企業には企業統治や適正な決算内容の公開が必要であり、これについての外部の担い手は大手監査法人=公認会計士の集団となっています。

そんなことから、税理士(会計事務所)の依頼者のほとんどは中小零細企業となっているのが実情です。そこで、税理士(会計事務所)は、なんとか自身の依頼者企業の規模を拡大しようとします。当然、中小零細企業には不似合いで負担となる施策(注)を推奨してきます。税理士(会計事務所)に依頼するにあたっては、その大企業コンプレックス度(?)を確かめておく必要があるかもしれません。

(注)あえて必要のない議事録、諸規定、管理資料を一方的に作成し、報酬を請求するケースなどが目立ちます。

 

 

会社の借入金に対する役員の個人保証

 

現在主流の株式会社や有限会社は有限責任といっても、金融機関などからの借入金に対しては必ず役員(代表者)の個人保証が必要です。つまり、形式的・法的には会社と個人の懐(ふところ)は別でも、実質的には同じであるということです。当然、中小零細企業経営者は、会社と個人トータルしての財産が最大化するような策をとる必要があります。法人税法の規定がこの妨げとなっていることはいうまでもありません。

会社制度(会社税制を含む)は、大企業(公私を区別した真摯な経営)を前提としています。今後もこれに変わりはないでしょう。大企業を前提としていることから、会社運営に必要な固定コストは自ずと高くなっています。この厳しいルールが適用される世界に、吹けば飛ぶような中小零細企業が飛び込んでいくには相当の覚悟が必要です。また、相応のメリットがなければ意味がありません。

 

 

節税のみを目的とした会社設立は高度成長期の「遺物」

 

会社設立は、過去の高度成長期に、親族中心の中小零細企業が親族への所得分散により節税をする方法としては極めて有効でした(注)。しかし、現在は、会社形態であることが負担(赤字でも課税される住民税の均等割、社会保険料、登記費用、税理士(会計事務所)報酬など)となっている中小零細企業が多いのが実情です。これからは、会社設立の意義を節税以外のことに見出していく必要があります。(今後も、節税メリットが一切ないというわけではありません。)

 

(注)個人事業者の場合には、親族への給与支払について制約があります。また、個人事業者では社会保険への加入にも制約があります。

 

 

会社設立にあたっては、何よりも、貴方自身が、

 

「会社は、私の財産、私の人生そのもの」

「何が何でも守り抜く」

「この会社を通して社会に貢献する」

 

との強い意志を持ってください。

 

このような意志があれば、「法人税率は・・・」というような、下衆な考えは浮かんでこないと思います。

 

会社であるがゆえのコストは、趣味や自身が本当に価値ありと考えるものに対する出費と同じになるのではないでしょうか。

 

税理士(会計事務所)は、陰ながら貴方を支えてくれます。

 

 

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