デジタルデバイドの克服
1. デジタルデバイドの発生
デジタルデバイドは、情報通信技術が発展する背後で生じた新たな問題です。情報通信技術、すなわちパソコンやインターネット、それに必要不可欠な通信回線を活用できる人や企業は限られており、その能力や環境の違いが、新たな貧富の差を発生させるという問題です。
2. デジタルデバイドの類型
デジタルデバイドは、発生する原因から次の通りに分類できるかと思います。
@経済的デジタルデバイド |
パソコンなど情報通信機器の購入・運用、通信回線使用コストを負担することができないことから生じるデジタルデバイド。 |
A能力的デジタルデバイド |
情報通信機器を使いこなすための能力不足、あるいは情報機器の有用性に無知であることから生じるデジタルデバイド。 |
B地域的デジタルデバイド |
今後、情報通信機器に必要不可欠となるであろうブロードバンド(高速通信回線)を利用できない地域で生じるデジタルデバイド。 |
C否定的デジタルデバイド |
情報通信技術の用途や効用を、否定的に考えることから生じるデジタルデバイド。 |
@は、低価格化によりかなり克服されてきています。しかし、情報通信機器を有効活用するにいたるまでにはかなりのコストが必要な場合があり、そのコスト負担に耐えることができないことが多くあります。
Aが問題となることが多々あります。情報通信機器を有効活用するには次のプロセスを経なければなりません。
A.自社業務の現状分析 |
現状の業務を分析し、情報化がもたらす効率性と新たな付加価値を明瞭にしなければなりません。 |
B.従来業務の見直し |
大半の場合、情報通信機器の導入は従来業務(多くの場合手作業)の見直しが必要となります。 |
C.導入機種・台数の検討 |
過不足のない性能の機種を、必要数量購入しなければなりません。 |
D.情報通信機器の設置 |
素材である情報通信機器は、適切な設置によりはじめて活用可能となります。 |
E.社員教育 |
情報通信機器の活用形態に応じた社員教育が必要不可欠です。 |
F.メンテナンス |
情報通信機器に限らず、機械にメンテナンスが必要であることは言うまでもありません。 |
G.AからFの結果を受けての再検討 |
当初の考えが誤っていた、状況が変化した場合は、再びAから再検討しなければなりません。 |
以上のAからGの全てが、自社で、それも既存の人材でできるのが理想です。しかし、そうでない場合はアウトソーシングするしかありません。そのコストは、決して安いものではなく、場合によっては経済的デジタルデバイドを招くこともあります。
Bブロードバンドの主な用途は、画像、動画、音声ですが、一般的なサイトの閲覧やメールの送受信もブロードバンドに越したことはありません。処理速度が大幅に向上しているからです。また、ブロードバンドは毎月定額料金ですので大変恩恵を受けます。
C多くの場合、能力的デジタルデバイドに起因しますが、「情報化による値引、合理化」など、環境の変化を拒絶することに起因する場合もあります。
3. 自社の位置付けとデジタルデバイドの克服
自社は、情報通信機器の「エンジニア」か「ユーザー」の区分けが大変重要な判断となります。
「エンジニア」である限り、能力的デジタルデバイドなどあってはならず、上記2AAからGすべてが自社で行えなければなりません。場合によっては、地域的デジタルデバイドを克服するために移転も検討しなければなりません。さらには、経済的デジタルデバイドを克服するために、従来のコスト構造見直しや新たな資金調達も検討しなければなりません。なお、ここでの「エンジニア」とは情報通信機器の開発・設計者やプログラマーのことではなく、情報通信機器を能動的に使いこなす必要がある人や会社のことです。例えば、ある小売店がネットショップを開設する場合、購買者にとって操作性の良いサイトの構築を立案し、サイト構築後は購買者にその操作についてのサポートができる能力が必要となります。
「ユーザー」であるならば、能力的デジタルデバイドのハードルは比較的低いと考えられます。なぜならば、情報通信機器の「操作方法」自体はさほど困難ではなく、経済的デジタルデバイドさえ克服できれば、デジタルデバイドは発生しないからです。ここでの「ユーザー」とは、情報通信機器を受動的に使えれば済む立場の人や会社のことです。例えば、仕入先がネットによる受注をしており、その仕入先が情報通信機器の構築をしてくれる場合が該当します。
なお、「エンジニア」、「ユーザー」以外に、「ホビー」という区分けも考えられます。手書でも十分な文書、電話でよい連絡などにしか情報通信機器を活用していない場合です。このような場合は、情報通信機器もリストラの対象としてよいかと思います。
多くの企業が、リストラの名のもと経費削減に取り組んでいます。また、ITバブル崩壊と叫ばれて久しいですが、決して、ITバブル崩壊に気を緩めてはいけないと思います。受発注の電子化(いわゆる電子商取引)、データの電子化による受け渡し、メールでの連絡、これらが取引条件となっている業種や業務が益々増えてくることが予想されます。
デジタルデバイド、決して無関心ではいられません。
築山公認会計士事務所