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必要経費Q&A
個人事業者用(事業所得者用)
内容:2015年7月27日現在
国税庁のサイトをご覧になりましたか?
国税庁のサイトでは必要経費についての具体的で詳細な例示はされていません。みなさんはネットショップのように無数に具体的な必要経費が紹介され、その中から自分に適した必要経費を検索して選べるような機能を期待されていたことでしょう。残念でした。それどころか国税庁のサイトは、必要経費の範囲について釘を刺しています。必要経費にできる時期、事業と私用(家事用)に共通する費用の区分、親族に支払う給料のことなどについて厳格な言葉を書き並べています。
しかし、難しく考える必要はありません!(ただし、油断も禁物です!)
要するに必要経費とは「事業に必要な費用」ということです。事業に必要な費用の種類は無数にあります。また、業種や業態によって異なってきます。ですから、必要経費の内容を具体的に定めることはできないのです。つまり、自分にとっての必要経費は自分で見つけ出さなければならないということです。黙っていても税務署は教えてくれませんよ!
このページでは、「事業に必要な費用は何であるか?」と「どの勘定科目に該当するか(青色申告決算書および収支内訳書)?」について説明しております。必要経費については、このこと以外にも重要な注意点はあります。たとえば、上記の「必要経費にできる時期」などです。しかし、とりあえずこのことは忘れて、まずは必要経費の把握と分類集計(勘定科目ごとの集計)をしてください。そして、その後に必要な修正をすることです(この修正はとても重要です!)。
租税公課
いきなり難しい言葉が出てきました!
「租税公課」あるいは「公租公課」についての一般的な意味は「税金や罰金」ですが、必要経費における租税公課ではこのすべてが必要経費になるわけではありませんので注意が必要です。
確定申告で納税しなければならない「所得税」(国税)は必要経費には「なりません」。確定申告から数か月遅れて納税しなければならない「住民税」(地方税=都道府県と市町村)も必要経費には「なりません」。しかし、「事業税」(都道府県)は必要経費に「なります」。このことを理論的に説明することは大変難しいですが、一般的には、所得税と住民税は所得の一部を国や地方の運営費用として国民や住民の義務として負担するものであるから必要経費にはならない(所得の一部は国と地方のもの?)、事業税は都道府県から事業を行う上でのサービス(公共設備など)の提供を受けることに対する対価であるから必要経費になると説明されています。
税金で最も身近なのは「自動車税」でしょう。事業用に使っている車両の自動車税は必要経費になります。事業所にしている土地建物を自身で保有している場合には、「固定資産税」も必要経費になります(自宅と兼用している場合には事業用部分のみが必要経費となります)。「印紙」も忘れてはなりません。領収書や契約書に貼っていることでしょう(当然、自身で購入して貼った分)。
●行政手数料は租税公課?
業種によっては開業に際して役所の許認可が必要で、それに関して役所に手数料を払わなければならないことがあります(登録免許税という税である場合もあります)。さらに、開業してからも定期的な手続が必要でその際も役所に手数料を払わなければならないことがあります。当然、これらは必要経費にできます。印鑑証明と住民票は融資などあらゆる契約に必要です。これも、事業に関する契約であるならば当然必要経費になります。
これらのいわゆる行政手数料を租税公課に含めるかについては意見が分かれますが、租税公課に含めても間違いではないと思います。つまり、租税公課は税金など公的な負担と考えるのです。ただし、上記のとおり必要経費にならない税金が多いことからすれば、租税公課の金額を多くしておくと税務署に不信感を抱かれるおそれがあります。かといって、これらの行政手数料については適当な勘定科目もありません(とりあえず雑費?)。
●公的団体の会費は租税公課?
商工会議所や各種同業者団体などのいわゆる公的団体の会費も租税公課と例示されていることがあります。これも、上記の行政手数料と同じく租税公課を幅広く捉えるという考えに基づきます。
●仕入れなどの際に支払った消費税は租税公課?
仕入代金や家賃などを支払う際には消費税も含めて支払っていると思います。結論からいえば、この消費税は租税公課という勘定科目ではありません。必要経費を税抜き処理している場合には仮払消費税という資産勘定、税込み処理をしている場合にはそれぞれの必要経費の勘定科目に含めることになります(本体+消費税で処理する)。
それならば、「税込み処理のほうが消費税の分だけ必要経費が増えるので有利では?」と思えるかもしれません。しかし、税込み処理の場合には収入(売上)も税込みで計算しなければなりません。(消費税の免税事業者は税込み処理しか選択できません。)
●税務署に納付した消費税は租税公課?
経理処理が税込み処理の場合には租税公課として必要経費となります。なお、受け取った消費税は売上高として収入に含めなければなりません。要するに、税込み処理の場合には、「受け取った消費税(収入)=仕入れなどの際に支払った消費税(必要経費)+税務署に納付した消費税(必要経費)」となり、結果として事業所得の計算には影響しないということです。税抜き処理の場合には、受け取った消費税は仮受消費税という負債勘定、支払った消費税は仮払消費税という資産勘定に計上されることから、損益計算(事業所得の計算)には一切影響しません(仮受消費税−仮払消費税を未払消費税とし納付の際に消滅させます)。(消費税の免税事業者は税込み処理しか選択できません。)
荷造運賃
文字通り運賃のことです。宅配便の業者などに運送を依頼したときの代金です。交通機関の運賃は「旅費交通費」です。商品や材料を仕入れた際も運賃は必要となりますが、それらは仕入に要した費用であることから仕入高(売上原価)に含めることが通常です【注】(請求書で区分されていても仕入高に含めます)。要するに荷造運賃となるのは、こちらから顧客などに運送した場合の運賃です。ネットショップをしている場合には、この荷造運賃の金額は相当多額になると思います。この金額を正確に把握しておき価格決定に役立てなければなりません。
【注】この件は在庫(棚卸高)の計算に影響してきます。仕入に要した運賃を支払った際に必要経費にすれば、年度末に在庫として残っている分(翌年の必要経費になるべき分)の運賃が在庫として考慮されなくなるからです。在庫の計算は「個々の商品の仕入単価(運賃含む)×数量」を全商品について合計して計算しなければなりません。ただし、運賃の金額が少額で在庫の計算に与える影響が軽微である場合には、運賃を考慮せずに在庫の計算をすることも認められています(運賃を仕入勘定に含めないという方法も認められます)。
●「荷造」に関する費用はどうなるのか?
おっしゃるとおりです。梱包材料の代金も無視できませんので、これも荷造運賃に含めてもよいでしょう。ただし、「消耗品費」でも間違いではありません。
●郵便は?
郵便は「通信費」で処理していることが一般的ですが、物を運ぶという点では同じですので荷造運賃でも間違いではないかもしれません(葉書や封筒は物というには軽すぎますが・・・)。
●運賃(送料)が顧客負担となっている場合?
顧客が実費を負担する場合には必要経費とはなりません。こちらが負担していないからです。この場合、顧客から入金された運賃相当額は売上高に含めるのではなく、運賃を立替払いした際に計上した勘定科目(立替金、仮払金など)を取り消します。しかし、多くの場合は、顧客に運賃を請求する場合であっても実費相当額ということはまれですので(運賃の実費請求は面倒)、運賃相当額についての売上高も計上すると同時に運賃の実費額を必要経費に計上します。
●「代金着払」の場合?
こちらが荷受側であれば必要経費となりますが、荷主の場合には必要経費とはなりません。
●引越し費用(運送業者から請求される額)
これも荷造運賃に含めます。なお、引っ越しに伴い通信機器などの再設定を行った場合の諸費用は荷造運賃ではなく、修繕費あるいは資産に関する勘定科目で処理することになります。
水道光熱費
電気、水道、ガスの料金です。賃貸ビルなどの場合には家主から請求された金額を計上します。
自宅兼事務所で事業をしている場合には、事業部分と私用部分に区分しなければなりません。この区分は面積比で行うことが一般的です。
●飲料水は?
タンクやペットボトルで飲料水を購入することがありますが、これらは水道光熱費で処理しません。接待交際費(接客用)や福利厚生費(従業員用)として処理します。
旅費交通費(事業主の出張手当=日当は?)
交通機関の運賃や有料道路の通行料です。事業主や従業員の通勤手当(通勤定期代)もこれに含まれます。出張旅費(交通機関の運賃、宿泊費)や出張手当(日当)もこれに含まれますが、事業主の出張手当は必要経費とはなりません【注】(なりません!なりません!なりません!)。
ガソリン代もこの科目に含めることがありますが、ガソリン代は消耗品費で処理していることもあります。
【注】会社では代表者(代表取締役、社長)の出張手当を経費にすることができます。会社の場合には、会社と代表者は法的に別個の存在であることから会社から代表者に給料(役員報酬)や出張手当を支払うということになりますが、個人事業者の場合にはこのような考え方は成り立ちません。要するに、個人事業者が本人に給料や出張手当を支払うこと自体がありえないということです。経理上は「事業主貸勘定」といって、事業主が事業用の資金から私生活用の資金に移動させた場合の勘定科目がありますが、これは公私の区分のための勘定科目であって必要経費としての勘定科目ではありません。
通信費
電話代と郵送代(切手など)が典型ですが、インターネット関連費用(プロバイダーやレンタルサーバーなどに関する費用)も通信費で処理することがあります。
広告宣伝費
自身の商品やサービスの宣伝に関する費用です。従業員の採用広告費用もこれになります。
広告宣伝の手段といえば、以前はチラシ、DM、新聞や雑誌の広告、テレビやラジオのCM、看板、貼り紙が主流でしたが、最近ではインターネットを利用した広告、つまりホームページやメールマガジンなども一般化してきました。当然、広告宣伝に関する費用でしたら広告宣伝費として必要経費にできます。
●試供品(サンプル)
商品を試供品として提供する場合があります。この試供品を試供品用に特別に仕入れた場合には広告宣伝費とします。通常の商品と同じ場合には仕入勘定に含まれていますので特別に処理は不要です。
●展示会
会場の賃料、案内状の作成や発送に関する費用を広告宣伝費とします。
●高額なホームページ制作費用(外部に制作を依頼した場合)
ホームページ制作費用の中にソフトウェア(システム)、例えば、注文機能などが含まれている場合にはその部分の費用は広告宣伝費ではなくソフトウェアとして扱います(ソフトウェアは減価償却の対象です)。また、ホームページを公表するためのレンタルサーバー料金は広告宣伝費あるいは通信費で処理します。
●ホームページ制作費用(自分で制作した場合)
制作するためのソフトウェアの購入代金が必要経費となります(広告宣伝費、消耗品費、減価償却費など)。
接待交際費
平たくいえば、顧客のご機嫌を取るための費用です。飲食代は当然として、手土産や贈答、慶弔金も接待交際費になります。ゴルフコンペなど接客のためにするイベントに関する費用もこれです。
損害保険料
商品、事務所の備品、車両、機械などが対象となっている損害保険(火災、天災、盗難などを保障)についての保険料です。
修繕費
建物、機械、車両、備品の修繕(修理)に関する費用です。
消耗品費
抽象的な言葉ですね!
要するに、一度使えば無くなってしまう物に関する費用です。文具(糊やセロテープなど)、封筒、梱包材料などが典型例です。パソコンやソフトウェアの購入代金も10万円未満であるならばこれで処理していることが多いです。
減価償却費
だんだんと難しくなってきました!
上記の消耗品費が一度使ってしまえば無くなってしまうのに対して、減価償却費は1年以上使える物に関する費用です。車両などがその典型で、数年間で費用としなければなりませんが、この計算を減価償却といいその方法は法律で定められています。
●消耗品費でも数年使える物がある?
そのとおりです。ですから、減価償却するのは数年使える物のうち一定金額以上の物(現在の税法では10万円以上)ということです。
福利厚生費
従業員のレクリエーション(旅行、忘年会、新年会など)、残業時の夜食代、慶弔金、社会・労働保険料(事業主負担部分)です。
●「親族だけ」の場合の福利厚生
認められません。会社組織にしている場合であっても認められません。事業とは無関係であるからです。
給料賃金
従業員(生計を一にする親族は除く)に支払った給料(毎月の給与)と賞与(ボーナス)です。手取りではなく総額です(源泉所得税や社会保険料などを差し引く前の金額)。ただし、通勤手当は旅費交通費とします。損益計算書では全従業員の合計額ですが、個人別の内訳も必要ですので内訳の合計と損益計算書を一致させておいてください。
●事業主に対する給料
認められません!
納得はいかないかもしれませんが(10人に1人程度は納得していただけません)、絶対に認められませんので間違っても必要経費とはしないでください。複式簿記で記帳している場合には「事業主貸」という勘定科目で処理してください。
外注工賃
業者に依頼する加工作業などに関する費用です。今風の言葉でいえばアウトソーシングに関する費用です。
利子割引料
特に説明は不要かもしれません。
ただし、元金と同時に利息を支払う場合には両者を区分し、利息部分のみを必要経費にしなければなりません。持ち家を自宅兼事務所にしており全体の購入代金について住宅ローンを組んでいる場合には私用部分との区分が必要であることはいうまでもありません。
地代家賃
事務所、倉庫、駐車場の賃料です。一時借りの駐車場は旅費交通費で処理することが一般的です。会議室や展示会場などを一時借りした場合の料金もこれには含めません(雑費?)。
貸倒金
これも難しいです!
簿記ならではの考え方です。簿記の世界では、入金されていない分も売上に含めなければなりませんが、その分が入金されなかった場合にはこの勘定科目で必要経費として処理することによって売上を取り消すのです。ただし、「貸倒れ」の要件は厳格に定められています。
雑費
上記のいずれにも該当しないものです。
この科目の多様は避けてください。なぜならば、意味不明であるからです。
さらに詳しく!
何が事業に必要な費用や支出であるかを理解できただけでは十分ではありません。なぜならば、これらの全額が必要経費にならないこともあるからです。国税庁のサイトでも釘を刺しています。
●必要経費にできる時期
債務の成立?
●事業と私用(家事用)に共通する費用の区分
家事関連費?
●親族に支払う給料
白色申告の場合には限度額があります。青色申告の場合には届けが必要です。
このあたりが難しいとことです。税務署や税理士に相談されることをおすすめいたします。
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